僥倖
僥倖
思いがけない幸せ。また、その出来事。
幸せはいつも突然やってくる。
「あぁ・・・、美味しかった」
絵茉は市場の屋外型レストランで少し高めのコース料理を、きっちりとしたマナーで食べていた。
口元を拭く動作さえも一流の風格がある。
それもそのはず。この元ヤンの精霊、本当は妖精族の王女である。
作法なぞお手の物なのか、余裕の表情(ドヤ顔)をしていた。
「久々にいいモン買ったな・・・。」
璃瑠は金物屋の通りを、歩きながら呟いた。
その両手の紙袋には、ニッパーのような汎用の工具から、電動の丸ノコ型グラインダーみたいな専門的な工具まで色々入っていた。
「帰ったら性能試すかな」
なんて言いつつ、ウキウキした心に正直に、彼女の脚はステップを軽やかに刻んだ。
桜海の案内で、ハルトは水門家にお邪魔していた。
「・・・凄ェ」
それしか声が出ない。
ここまで広い家は、彼の感覚ではもはやショッピングモール並のものだった。
財閥の会長の家ともなると、そういうものなのだろうか?
「フフッ」
と桜海は微笑むのみである。
「桜海お嬢様、ご帰宅をお待ちしておりました」
と、メイドさんが桜海に深々と一礼した。
メイドさんって、本当にいるもんなんだな。
と俺は珍しく思ったりしたが、その後の声がその思考を吹き飛ばした。
「桜海・・・?桜海なのか・・・?」
広い応接間によく響く、しわがれた老人の声。
「会長!」とメイドさん。
「お祖父様!!」と桜海。
「あの人が・・・」
あの人が、水門 飛鳥・・・!
「君が路木ハルト君だね?」
「はい」
その声は、俺の背筋を自然と真っ直ぐにさせた。
「早速ですまないが、君に頼みがあるのだ」
いきなりですね、と思ったが、ついつい俺は、
「はい、何なりと!」
と言ってしまった。
「いい返事だ。」
と、飛鳥会長の口元がニヤつく。
「頼みというのはね、ハルト君」
「はい」
「ぜひ、桜海を貰ってはくれないだろうか?」
「はい」
・・・・・・え?
えええええええエエエエエエエエっ?!
いつも読了ありがとうございます。
そうでない方もありがとうございます。
あーもんどツリーです。
次回、とうとう《アイツら》が動く・・・のか?
お楽しみに&よろしくお願いします!!
それでは。




