第4節
アーサーはその日のうちに、斥候部隊を出してエイヤード砦の様子を探らせていた。
野営地で部隊の再編成と、怪我人や捕虜の処置をしていると、斥候隊の一人が戻ってきた。帰ってくるのがあまりにも早く、アーサーは眉間に皺を寄せた、しかし報告を聞くにつれて、その皺は段々なくなっていた。
報告によると、相手の部隊はすでに砦を放棄して王都への撤退をしていて、敵1人いなかった、そのため今後の指示を仰ぎたい。
アーサーはすぐに、近くにいた兵士に対して激を飛ばした。
「シェフィールドの兵達に砦に入って、守備と警戒に当たらせろ。斥候隊は1部引継ぎの兵を残して、敵部隊の追跡、周辺の調査に出せ。」
命令を出しながら、歩き出すと別の兵士に対して、ベディヴィアと主だったものを集めるように指示を出した。
兵士たちは一礼をすると、すぐさま走り出した。
その兵の緊張がうつったのか、他の兵士たちの顔も強張り、野営地全体が騒がしくなった。
すると、次々と人がアーサーのテントにやってきた、中は奥にアーサーが座り、
中央にテーブルがあるかのように、椅子が置いてあった。
テントにはアーサー達と同世代の人達が増えていくが、中は静まり返っていて口を開く者はいなかった。
中ではアーサーが眉間に皺を寄せて、目を細めて一点を確りと見詰めて、静かに座っている姿があり、その前では誰もが口を閉じたままで、緊張が伝わってきた。
10席全ての椅子が埋まると、アーサーは視線を兵達に向けた、その氷で刺されるような視線に、誰もが動けず釘付けになった。
アーサーは重い口を開いたが、その声は氷ではなく暖かいが重みのある声だった。
「すでに知っている者もいると思うが、クレータム卿は残存兵力を率いて、王都へ撤退した。」
知っていた者も、知らなかった者も、改めてアーサーの口からその話を聞くと、つい隣の者と小声で話をしてしまい、辺りが少しうるさくなってきた。
アーサーは一旦話を切って、周りが落ち着くのを待った、皆次第に司令官の前だと思いだし、姿勢を戻し背筋を伸ばすと、アーサーの方を見つめた。
「そのため砦はすでに占領済みで、これによって後方の心配はまずなくなった。しかし、敵部隊はいまだ健在で、戦力比は2対8で我らに分が悪い。だが、今回の事で我らに味方する者は確実に増える。そして何より、勝ち続ければ仲間は増え続ける。そのため我らは討伐軍が通ってきた道を、そのまま逆に王都へ進行する。このまま戦えば勝率は低いが、将軍達は王都周辺や大都市は占領していたが。国境付近や、その周辺は将軍達の勢力圏外だ。そこで、各地で突発的な戦闘を行ってもらって。敵部隊の分散し、手薄になった所で我らが王都に進行して開放する。」
兵達はあまりの内容に、最初は驚きと困惑を隠せなかったが、話が進むたびに表情が変わり、額には汗が浮き掌を強く握りながら、真剣な面持ちでアーサーを見つめていた。
その視線は驚きから、希望、そして信仰的な眼差しに変わっていた。
彼らは圧倒的で不利な状態を、何度も覆してきたアーサーに対して忠誠ではなく、まるで信仰の様に崇拝しているようだった。
その視線を受けている、アーサーを目の端で捉えながら、ベディヴィアが勢いよく椅子から立ち上がると。
「皆すぐに、出陣の準備とこの事を兵達に伝えろ。」
「了解。」
兵達は走り出す様にして、テントを出ると兵達の下へ急いだ。
足音が遠のく中、テントにはアーサーと彼とベディヴィアの3人だけが残っていた。
ベディヴィアと彼は直ぐにアーサーの前に出ると、跪いて頭を低くした。
アーサーは兵達の熱い視線を思い出すと、天井をを見上げると静かに目を瞑った。
「滑稽だな。」
先ほどの光景を思い出す様に、静かに呟いていた。その言葉に驚き、思わず顔を上げたベディヴィアが間をあけずに。
「そんな事はありません。今回の事は誰かがやらなければいけない事です。」
「主よ。自身をお責めにならないで下さいませ。」
「ここで討伐軍を撃退して、王都の解放を行わなければ。この国は将軍と武官たちの者になってしまいます。そうすれば、今まで過剰の戦闘を抑えていた文官もいなく、問題を武力で解決しようとして。民の軍役や生活が崩壊しかねません、今まで均衡が崩れるということは、この国の理すらなくなってしまいます。」
「しかしな、あまりにも滑稽だと思わないか。自分で兵達を煽り、戦わせて自分の地位を築いていく。」
アーサーのあまりにも悲観な事に、2人はなんとか主をたしなめようと、言葉を並べていった。
アーサーは閉じていた目を開くと、顔を2人の方に向けた。
2人の背中は汗で濡れていて、表情は強張っていたが、それを何とかアーサーに悟られないように、隠そうとしていた。
アーサーは2人の間を静かに歩いていくと、そのまま外に出た。
2人は急いで顔を上げて、立ち上がるとアーサーの後を追った。
外は日が沈み、辺りは暗くなり風は肌寒かった、その風を受けながら、振り向かずに後ろの2人に向けて。
「弱気は終わりだ、行くぞ付いてこい。」
静かに言うと、そのまま歩き出した。
2人は顔を見合すと、軽く笑うと、そのまま遠ざかっていく背中を追いかけた。




