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僕たちの宝物  作者: 成瀬摘希
第一章:聴覚障害
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プロローグ

高校1年生


「はい、お大事にね〜」


「ありがとうございます。」


礼を言いながら病室の扉をガラガラっと開け、外へ出た。


大きな総合病院。


なぜ俺が今、こんな場所にいるかと言うと…


「はあ、明日からこれで学校かよ…」


そう言って、自分の左目にちょんと触れてみる。


そこには眼帯があった…。


なんとも恥ずかしい姿だった。


そう、ただのものもらい。


それだけ。


それだけなのに、なんだかものすごく気分が重い…。


つい、足を引きずるように歩いてしまった。


控室に戻るまでに、少し見えづらくなった視界に慣れておこう。


…周りを見ると、病院にはたくさんの人がいた。


腕や足を怪我している人や、明らかに熱がありそうな子供、入院服を着ている人など、たくさんの人がいる。


そうやって、周りを見て歩いていると、少し前に、見覚えのある背中を見つけた。


あれは確か…


「あ、葉山…?」


俺が声をかけると、前にいた人がくるりと振り返ってきた。


そして、俺と目がバッチリ合う。


彼は、同じクラスの葉山優羽(はやまゆう)。


クラスの中心にいるような人物で、みんなの人気者だ。


まあ、俺はあんまり話したことないんだけれどな…。


そして今、彼と病院で会った。


俺も驚いているし、向こうも多分びっくりしている。


「桐谷か。こんなところでびっくりした…」


ここで会ったのも何かの縁だ。


俺は、この葉山と前々から喋ってみたいと思っていたのだ。


「な、なあ、葉山。時間ある?少し話そうぜ!飲みもの奢るし!!」 


そんな俺の誘いに、葉山はこくっと首を縦に振った。


◇◇◇


 「って、飲み物だけじゃないの?なんで、誘っておいたそっちがでっかいアイス頼んでるんだよ…。」


「ん?葉山も欲しいのか?…どうしてもと言うのなら、半分やるぞ?」


「…俺は、いらない」


「まあ、デザートまで奢るのはな…」


俺がそう言うと、葉山はふいっとそっぽを向いてしまった。


あ、これ欲しいやつだろ。


なんだかおもしろい性格だな、と俺はくすっと笑ってしまう。


病院からすぐ近くの喫茶店。


平日だからか、すんなりと中に入れた。


俺はコーヒーとアイス。


葉山はオレンジジュースを頼む。


…なんと舌はおこちゃまみたいだ。


「てか、お前また振ったらしいじゃん?噂になってるぞ?モテてるのになんで毎回振るんだよ?」


「……今は関係ない…」


そう言って、葉山はむくっと顔を膨らませた。


まあ、さすがにここでこれ以上いじるのも、と思って俺は話題を変えた。


「そういや、なんで葉山は病院いたの?どっか悪いのか?」


葉山に優しく聞いてみると向こうは俺の方を見て、眼帯を指差してきた。


「桐谷は…」


「ああ、これ?ものもらいだってさ。邪魔だし、見えづらいし恥ずかしーっての。明日からこれで学校だぞ?クラスのみんなに笑われるに決まってる。」


想像がつく。


教室に入ると、そこらのちょけた男子が絡んできて、女子に笑われる。


厨二病?なんて言われて、馬鹿にされる。


なんとなく分かっていた。


そうだったけれど…


「なんで?別におかしくもなんともないだろ。」


その葉山の言葉に俺はびっくりした。


「そんな、眼帯している人なんていたらまず、心配するのが普通だろ?そして、少し見えずらいんだったら、きちんと声かけてあげて案内するのが普通なんじゃないのか?」


「あ、えーっと……」


葉山は当たり前かのように言ってきて、俺は自分が言ったマイナス発言を取り消したかった。


……葉山のこういうところが人気になるんだなと、俺はふと思ってしまった。


「…っお前、いいやつだな!ありがとう、元気出たわ!!」


「ああ…!」


俺が言うと、向こうもにこっと笑ってきた。


まじで、嫌だった明日がなんだか一気に楽になった気がする。


そんなこと思っていると注文してたものがやってきた。


「コーヒーとアイス、オレンジジュースになります。」


「ありがとうございます。」


一つずつ受け取り、ごゆっくりと言って店員が帰っていった。


「ほら、オレンジジュース。」


そう言って、俺が葉山の前にオレンジジュースを置く。


すると、葉山は、左手の甲の上に右手を垂直にポンっと叩いた。


それと、同時に、ありがとうと言う。


学校でも、さっき病院で会った時からの会話の中でも、葉山は話す途中に、たまにだけれど手が動く癖があった。


癖。


今まではそう思っていたけれど、その、「ありがとう」でピンっときてしまった。


「俺、いっつも思ってたけれどさ、葉山、それ、手話?」


俺が言うと、葉山は手を引っ込めた。


そして、俺の方を向きいて尋ねてきた。


「もしかして、やってた…?」


「ああ、結構見るぞ?学校とかでも…」


答えると、葉山はなんだか下を向いてしまった。


俺、なんかまずいこと言っちゃったかな?


もしかしたら、耳が少し悪くてそれをみんなに隠しているとか。


聞いてしまったからには気になってしまい、恐る恐る聞いてみる。


「…耳が悪いのか?」


すると、葉山は首を横に振った。


「…家族の誰かが悪いとか?」


その質問にも首を横に振った。


「じゃ、じゃあ、病院にいた理由ってなんだ…?」


そう聞くと、葉山はゆっくり顔を上げ、悲しげな声で言った。


「お見舞い。…大事な、友達の。」


そこから、葉山はどうしてこうなってしまったのか、ゆっくりと話してくれた。

新小説です。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


次回更新10月28日水曜日予定


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