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リミットオリジン ―凡人と言われた俺が最強にたどり着くまで―  作者: みみたん
第3章:自由の港・潜蝕編

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第47話:無垢な牙

今日は余裕があるので2話アップします!わーい!

もう1話は17時台を目標に頑張ります!


短いですが、区切りがいいので1話目投稿します。

 セーフハウスの一室、アッシュは深い眠りから意識を浮上させた。

 全身を包んでいた激痛は消え、治癒術の残光が心地よい気だるさを残している。だが、隣でいつも寝ているはずのニーナがいなかった。


 「……ニーナ?」


 枕元に置かれた金貨の袋はそのままだ。アッシュは這い出すようにベッドを抜け出し、重い扉を開けて地下の執務室へ向かう。そこで、壁に背を預けて爪を研いでいたサナと出くわした。


 「あら、お目覚め? もう体はなんともないの?」


 「サナ……体はもう何ともない。ニーナは? どこへ行ったんだ?」


 アッシュの問いに、サナは視線を上げず、ふっと口角を上げた。


 「商談よ。あんたの回復優先だから起こすなと……一人のほうが身軽だからって、私のアドバイスも聞かずに飛び出していったわよ」


 「そうか……どこに行くとか何時頃戻るとか聞いてるか?」


 「……そこまでは聞いてないわね」


 アッシュは拳を強く握りしめた。

 ニーナが自分を守ろうとしているのは痛いほど伝わる。だが、守られるだけの存在でいることは、今の彼には何よりも辛かった。


 西へ行きたいのは、自分だ。ゼノスに会いたいのも、自分なんだ。


 それなのに、なぜニーナが必死になって金を工面し、泥をかぶらなければならないのか。彼女にばかり重い荷物を背負わせ、自分は休息という名の庇護に甘んじている。その事実が、アッシュには耐え難かった。


 (俺にできることは、戦うことだけだ。……でも、今の俺には戦う場所すら与えられていない)


 ニーナの横に並ぶ資格がある男でありたい。その焦燥が、彼を突き動かした。

 アッシュは部屋に戻って身支度を整えると、サナの制止を待たずにセーフハウスを抜け出し、リヴォルノの冒険者ギルドへと足を向けた。



---



 ギルド内は、朝の依頼受注に群がる冒険者たちの熱気と怒号で溢れていた。

 アッシュは掲示板の前に立つが、そこに並んでいるのは下水掃除や倉庫整理といった、鉄ランクに許された低報酬の雑用ばかりだった。


 (これでは、いつまで経ってもニーナを助けられない。ランクを上げないと、まともな仕事すら受けられないんだ)


 焦燥感に駆られ、掲示板の隅々まで目を走らせていたアッシュの背後から、低く掠れた声が響いた。


 「おい、ボウズ。そんな紙切れを眺めていても、一生、鉄ランクのままだぜ」


 振り返ると、そこには全身を使い込まれた革鎧で固めた、老練な雰囲気の男が立っていた。昨日の「鉄錆の円形門」で、アッシュの戦いを観ていた観客の一人だ。


 「……何が言いたい」


 「金に困ってんだろ? ギルドにもまだ流してねえ、とっておきの『未確認アンノウン』を教えてやろうかと思ってな」



---



 男はアッシュを路地裏へと誘うと、声を潜めて語り始めた。北の岩礁に出没し始めたというネームドモンスター『砕岩の海竜タイダル・クローラー』の存在を。


 公式な依頼ではないが、そのコアを持ち帰れば二階級特進、さらに金貨五百枚――あまりにも甘すぎる誘いだった。その瞬間、アッシュの脳裏にゼノスの言葉が冷たく響いた。


 『実力に見合わない美味すぎる話が転がってきたら、まずは疑え。その餌の裏には、お前を釣るための鋭い針が隠れてるもんだ』


 教訓は、この話が「毒」であることを示していた。自分のような子供に、これほど好条件の情報を流す理由は、善意であるはずがない。

 だが、今の自分には、毒を喰らってでも前へ進まなければならない理由がある。


 「五百枚……」


 アッシュは男を真っ直ぐに見据えた。疑念を胸の奥に封じ込め、ニーナの負担を劇的に減らし、自らの足で西への道を切り拓くための「最短の道」を選び取る。


 「わかった。その場所を教えてくれ」



---



 アッシュが一人、街の外へと足早に向かうのを見届けた後、男は路地裏の奥で待機していた自分のパーティーメンバーたちの元へと戻った。


 「おい、リーダー! 正気かよ。あんなガキにネームドの情報を流してどうするんだ。ただの自殺行為だろ」


 仲間の剣士が詰め寄るが、男は下卑た笑みを浮かべながら、アッシュが去った方向を睨んだ。


 「馬鹿か、あんなガキが勝てるわけねえだろ。だが、地下闘技場の動きを見る限り、かなり粘るはずだ。あのガキをネームドにぶつけて、化け物の攻撃パターンと消耗具合を測るんだよ」


 男の部下たちは、ようやく理解したのか、一斉に卑下た笑みを浮かべた。

 男は腰の短剣に手をかけ、仲間に鋭い合図を送った。


 「死ねばそれまで、もし運良く生き残っても、満身創痍になったところを俺たちが掃除して、手柄と報酬を丸ごと横取りすればいい。……さあ、野郎ども。あいつの後をつけていくぞ」


 何も知らぬアッシュの背後で、狡猾な牙を持つ狩人たちが、静かに、そして着実に動き出した。

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