ようこそ!秋田支部へ!!!
ちょい長です。
車を止めに行った真角先生を見送りながら私たちは歩を進める。
いや、普段生活してて怪しいところなんてないんだけど?
「どこに向かうんですか?」
「まぁついてきなって!」
難しい顔してる朱音と対照的に明るい笑顔のフブキ先輩。そっちは確か―――旧校舎?確かにあまり普段使わないけど。
はぐれないようにと一言言ってからフブキ先輩は旧校舎の横開きの扉を開く。
―――前に広がるのは普段見慣れた校舎ではなく、まるで迷路だ。
いや、普通に聞いたところによると普通の校舎って聞いてたんだけど?
なんか第二図書室や貴重薬品とかの保管庫があるというのは聞いているけれど。あ、あと三階は立ち入り禁止になっている程度…
道は複雑で行き止まりも多く、フブキ先輩がはぐれないようにといっていたのも納得した。フブキ先輩はいらいらしてたけど。その後二階への階段を上ってもまだ迷路だったため、フブキ先輩がキレて電話を掛けた。
「今回長いんですけど!?早く着かせてくれませんか?日曜だから早く着きたいし、ヒビキ足怪我してるから早くいかせてあげたいし!」
『あーだってさ、見知らぬ人がいるからさー』
「だってじゃないです!!!!」
『しょうがないなあ、案内するから…ね?』
そう怒るフブキ先輩を見ながら耳をすまし会話を軽く盗み聞く。男。声的にも成人済みで3~40代…かな。
そんなこんなで三階へと階段を上り(立ち入り禁止の張り紙を無視し)、フブキ先輩はすぐ近くの扉を開けた。中から声が響く。
「こんにちは、君たちが新しく来た―――新人だね?・・・え?新人だよね?」
そう聞いてくる男性を見ながらこくんと頷く。
「よかった~。でね、僕の名前は波津明佳。僕はここ、秋田支部の支部長を任されている。君たちの上司に当たる人だぜ。」
そういいながらゲーム用の高性能椅子を滑らしながら白衣を着た男性――明佳はじろじろとヒビキ先輩の体を見る。声的にもさっき電話した相手ということか。
「ふむふむ、切り傷擦り傷と打撲痕か。どんな相手だったの?」
「触手を使う”異能”でした。ですが能力的には少し違うかなと思います。何というか…ねちょねちょしていたので。しかし流暢ではないにしろ片言の言葉を発していた分それなりの強さがあると思います。」
「うん、そこまでの情報を集めているのならいいんじゃない?報告書ある程度書いてるからあとはまた書いといてね。とりあえず医務室行ってきな。」
そう言って椅子をスライドして戻っていく。奥にはなんか見慣れたゲームの画面が映っていた気がするんだが・・・そんなことを考えていたら彼が振り返って
「君たちも怪我してるようだったら、一緒に医務室に行ってきな。」
「連れていきますよ、じゃあ浜と朱音行こうか」
フブキ先輩がそう言って私たちを連れていく。後ろからお願いするよ~という腑抜けた声が聞こえてきた。ヒビキ先輩は先に向かっているらしい。
廊下を出て階段を降りるとそこは迷路ではなく普通の校舎になっていた。意味が分からないという顔で朱音と目を合わせる。
突き当りの部屋、エレベーターホールの隣に医務室があった。張り紙ででかでかと「医務室」と書いてあったためすぐにわかった。扉を開けると中は保健室と同じようなものがそろえてあり、奥には治療中と掲げられた(ランプは点灯していない)よくドラマやアニメで見る集中治療室的な部屋を見つけた。
「いらっしゃい、今日も怪我したの?」
そう背後から声がしたほうを振り向くと、茶髪にウェーブがかかっている優しそうなお姉さんと段ボール・・・ではなく段ボールを運ぶ黒髪ボブショート身長150㎝程度丸眼鏡のかわいらしい女性が立っていた。
「あーはい、新しい子のお迎えと戦闘で―――先にヒビキが行っていると思います。足を怪我しているので見てやってください。」
「あ…あのそろそろ段ボールを置かせてください…もう…げ…限界……」
「あぁごめんごめん、あそこの棚の前に置いといて。それで怪我の内容は?」
そんなこんなで怪我の報告会と検診が始まった。話していくうちに二人からいろいろな情報をもらう。
茶髪ウェーブの女性は橋本治花。もともとはOLさんだったらしいが、発現した”異能力”――”活性化”に目を付けた明佳に頼まれ非常勤という形でここで働いているようだ。”活性化”は触れたものの能力を活性化させる能力で傷口に触れると人間が持つ再生能力が活性化され傷が治るという仕組み。貴重な回復能力持ちだそうだ。”異能力”発動時、背中に小さな黒い翼が生える。なんか小悪魔みたい。
黒髪の女性が柳原祥子。医大生としてアルバイトで働いている。その可愛らしい見た目に反し合気道を習っているため護身はできるみたい。”異能力”は”診察眼”。診た者の少女王や状態を瞬時に判断することができる・・・が説明が下手らしくもう少し頑張ってほしいと愚痴を言われていた。”異能力”使用時、目にスコープの模様ができる。丸眼鏡も相まって狙われている感じがして少し怖い。攻撃力は皆無らしいけど。身長をコンプレックスに思うところがあるらしい。
「話は少し変わるんですけど、明佳さんの”異能力”って何ですか?後者が迷路のようになっていたのって明佳さんの”異能力”なのかな~と思って。」
ふとしたように朱音がみんなに尋ねる。私も気になってはいたのだ。そこで橋本さんが教えてくれた。
「ううん、違うの波津さんの”異能力”はね”発明”だよ。何かものを作り出すことに長けた能力でね、かなりいろいろなところから引っ張りだこらしいよ。迷路みたいになっていたのはまた別の人―――確か馬場誠路という人だったはずよ。」
「聞いたことない人です…」
朱音が難しそうな顔で悩むと橋本さんはクスリと笑って
「でも知っていると思うわ。よく学校周りを清掃している人を見かけない?あの白髪の初老って感じの人。」
あー見たような見たことがないような…と思っていると、ガラガラと扉が開く。
「確か”迷宮進化”だと覚えている。」
真角先生だ。
「先生も怪我したの?」
「いや、まったくしていないが、波津に一応見てもらったら?といわれてな。まぁ断ったんだがその後に来たあいつに凄まれてな…さすがにあの幼い見た目で凄まれたら断れん。」
そういって扉を閉めて中に入ってくる真角先生を見ながら、あいつ?と思っていると大きく扉があけ放れた。
そこには一人の私たちの制服を着た一人の少女が立っていた。
「今なんて言いましたぁ?もー年かなー?ボクのことを幼児扱いしたような気がしたんだけどなぁ?」
え・・・誰!?
「お・・・?新入り?どうも申し遅れました、大阪支部所属―――」
そういってコツ…コツ…と部屋内に入ってきてスカートを持ちふんわりとお辞儀を行う。
「鮫綿莉愛と申します。ここにちょくちょく来るからお見知りおきを下さい。」
その幼女的体形――高校生というよりも中学生…150cm程度の身長で可愛らしいその少女を私は学校で見たことがない。先輩というわけでもなさそうだし。
お辞儀を終えてとことこと進み入りフブキ先輩の膝に乗る。
「いやお前は確かに幼児だろ。どっからどうみても…な?」
それでも鋭い突っ込みを入れた真角先生の方を疲れ切った目で見つめため息をつくと
「んなことわかってるよっ!?こんな姿になるとはね!?ほんとマスターには驚きだよ…元々はこんな約束じゃ(ゴニョゴニョ)」
がらりと雰囲気と口調、声質を変え治花さんからリンゴジュースのパックをもらう。
チューチューと飲みながら遠くを見つめるその姿には哀愁が漂う。
お礼言ったり座ってもいいか聞いたり滅茶苦茶礼儀正しいけど
「もともと私はもう少し大きかったんだけどねぇ、いろいろ約束をして”異能”に対抗をするために”異能”の目と交換してるときにいい体にしてあげようと提案されたらこうなったのだよ。」
えぇ…(困惑)
「とりあえずそういうことだから―――よろしくね?」
「「よろしくお願いします!」」
おっと朱音と声が被った。いや可愛らしい笑顔で言われたら答えたくなっちゃうじゃないか。
「この子達仲いいね。」
そういった莉愛は優しく微笑みながら紙パックをフブキに渡す。それを当然のことのようにしながらたたみだすフブキは、
「莉愛はこのFourtでもかなりの上位に位置するほどの強さなんだよ?
そういえばFourtについて説明してなかったな。世界防衛機構――WDOに加入したときに作られた、日本の対”異能”チームだ。んで、ここは秋田支部。支部長が明佳さんてこと。」
言い終わると紙パックをちょうどたたみ終わったらしく莉愛に渡す。受け取った莉愛はありがと。と一言いい、膝から降りてゴミ箱に向かう。
「さっきも言ったけど私はここ、秋田支部の人じゃないよ。大阪支部の放浪課ってとこだよ。放浪課はねぇ、大阪支部と東京本部の二つにしかないその場に縛られない自由な役職だね。でも入るには一定以上の強さと本部への推薦が必要なんだよ。」
「そう、それで莉愛は一定以上の強さを持っているってことだな。」
莉愛とフブキ先輩が説明してくれる。なるほど強いのね。
「そういえば、さっき聞き逃してたんですけど目を”異能”に変えたって言いませんでしたか?」
ふと思い出したように朱音が質問する。それは私も気になってはいたものだ。
「あー、今の目も”異能”の目だよ?普通の目に見えるでしょ?でもね、”異能力”を使うとね?」
「わ!?目の色が変わった!?」
「それだけじゃないんだよー?僕の目は”七眼”という異能力でね。七つの機能を持つんだよ。まぁ説明は割愛するけどね。」
どやぁと効果音が聞こえてくるような笑顔で教えてくれる。かわいい。
「お話し中のところ悪いけど今日はもう帰っていいのよ?傷は少なかったしひどくもなかったし。明日も学校なんでしょ?」
話し込んでいると、後ろから真角先生の検診をしていた治花さんがしゃべってくる。
そういえば明日は月曜日か。普通に学校があるんだな。帰らないとなぁ。
「では、帰ります。」
「うんまた明日!来てくれると嬉しいな?」
そういわれ私と朱音は顔を見合わせる。そして―――
「「もちろんです!!!」」
高らかにそう返事したのであった。
これが私たちの物語のスタートだ。
これにて序章終了です。
一応時間軸的に入学して2週間後とかの新しい時です。
そんな新しいワクワクの中で退屈に思う浜さん・・・
第一章はGW近辺ですので。




