9・6年生になりました
続きを投稿します。
宜しくお願い致します。
魔法の書との出会いから約半年が経ち、今日から小学6年生になりました。この半年間、魔法の鍛錬にのめり込み過ぎてしまったために友達との距離が少し開いてしまったけれど、今日からは半年前みたいに友達と遊ぶ事も忘れない様にしようと思う。
弟の修二と家を出て、登校班の集合場所の広場に向かおうとしていると、隣の家から智ちゃんが出て来る所だった。
「高木、秀君おはよう」
「おはようございまーす、智ちゃん」
「おはよう」
「私より早いって珍しいわね!」
「うん、今日は本当に珍しくお兄ちゃんの準備が早かったから!」
「ほっとけ!」
智ちゃんと秀二は気が合う様で、何かに付けて二人で僕の事をいじって来る。本当にほっとけって思うけどね。
智ちゃん1人にだけなら、どんなにいじられても大丈夫だけれど、秀二と二人って言うのは何か嫌だ!
智ちゃんがニヤニヤしながら僕と秀二を見ていて、何か恥ずかしいい気持ちでいっぱいです。
「へー珍しい事もあるもんだ!」
「朝起きるのも僕より早かったし、ご飯を食べるのも早かったし、どうしたの?」
「別に、いつもより早く目が覚めただけじゃん!」
「先に行くから!」そう言いながら、僕は1人で先に公園に向かって歩き出した。すぐそこに公園はあるけれど、とにかく今は二人からの口撃から逃げる事が重要だった。主に、僕の精神的な意味で。
僕の後を智ちゃんと、秀二が付いて歩いて来るが、公園が見えてくると他のメンバーが揃っているのが見えたので、智ちゃんが「出っ発―っ!」て、言ったので皆で学校に向かって歩き出した。
気が付くと智ちゃんが僕の隣に追いついていた。
「ねえ高木」
「何?」
やっと距離が取れたと思っていたのに、突然話しかけられたので、少し驚いた。
「6年生に転校生が来るって知ってる?」
「知らないけど。今初めて聞いた。何でそんな事知ってるの?」
「児童会情報!」
「じゃあ、確かな情報だね、男子?女子?」
「女子!東京から来るらしいよ!芸能人とかと会った事あるのかな?いいなー東京。行ってみたい!」
「そう?都会って人が多いし、歩くのが早いって言うし、何かいつも急かされてるイメージがあって僕は嫌だな!」
智ちゃんは某アイドルグループのファンで、県内でコンサートがあれば必ず行く程だ。コンサートに行った後なんかには、某アイドルグループについて熱く語っている。まあ、僕はいつも聞き役で、右から左で内容をほとんど覚えていないけどね。
朝の登校中に聞かされ、学校の休み時間に聞かされてが、コンサートの興奮の余熱が冷めるまで、1週間近く聞かされる。それが例え他の男の話であっても、好きな女の子が何かについて熱く語っているのは見ているだけでも、何かこう……いいよね。
それが僕に向かって語ってくれているから、その表情の変化を見ているだけで幸せな気持ちになり、会話の内容なんかはっきり言ってどうでもいい。その、熱く語る智ちゃんの顔を見られるだけで、幸せです。いつも誘われるけど、コンサートに行こうとは思わないけどね。
「そう?私は都会に憧れるな!カッコいいアイドルとか芸能人と見てみたいし、サインとか握手とかしてもらったりして…いいなー。都会って!」
「僕はここのほうが良いけど。街すぎず、田舎すぎず。人も多すぎず、少なすぎずで、いいと思うけど」
「高木は芸能人に興味が無いからよ!芸能人に興味があったら、好きな芸能人に1回は会ってみたいよ」
「ふーんそんな物なの?興味が無いからどうでもいいや!」
「高木もさ、何か趣味とか見つけた方が良いよ、そうしたら私の気持ちもわかる様になるって!」
「へい、へい」
僕はあまり人と話すのが得意ではないので、いつも素っ気無く返してしまう。そんな僕に、いつも智ちゃんは話しかけてきてくれるし、色々と教えてくれるし、お節介を焼いてくれる。ホンマにエエ娘やなー!
「そう言えば、高木、最近夜遅くまで起きてない?私が寝る時にはいつも電気が点いているけど何してるの?」
「…別に何もしてないけど」
「宿題?ゲーム?それとも面白い本を読んでいるの?」
「電気をつけたまま寝落ちしただけだよ!」
まさか、見られているとは思わなかった。魔法の修行って答えられる訳無いし。誤魔化そうにも何も思い浮かばない。
「えー、でも最近古本チェーン店に居るのをよく見るし、他の子も見たって言ってたよ!」
「暇つぶしに、塾の帰りに寄っているだけだよ。それと少し気になる本が有って」
まさか、そんな情報網が有るとは思ってもみなかった。確かに古本チェーン店まで歩いて行っても近いけど僕が最近よく行っている事を知っている人がいるなんて思ってもみなかった。
「何の本?マンガ?ラノベ?」
「¥100コーナーにあった外国の小説かな?」
「なんで疑問?って、それ、面白いの?どんな小説?」
「いや、買いそびれちゃって、でも気になってしょうがないから、また出ないかなって思って時間が有ると古本チェーン店に通っているんだ」
少し口を滑らせてしまった。こういう時に人と話すのが苦手だと、ボロが出やすいかな。言いたくなくても、いつの間にか言わされているって事が多々有る気がする。
「何か面白い本が有ったら、読み終わったら貸してね。私も読んでみたいし」
「うん、その本か面白い本が見つかったらね」
そう言ったけれど、智ちゃんの方がはるかに多く本を読んでいる筈だから、僕よりも沢山面白い本も知っていると思うんだけど。
「楽しみに待ってるからね!」
「うん、…」
新年度の初日から智ちゃんと沢山話が出来たので、良い新年度のスタートの朝になった。
のかな?
学校に着くと掲示板にクラス替えの名簿が貼り出されていた。事前に自分が何組になるのかはわかっていたので見る必要は無いが、智ちゃんや友達が同じクラスかどうかが気になるので、一応掲示板を見てみる。
他にも自分や友達のクラスを確認するために掲示板の前には、2~30人の同級生達が集まっている。
智ちゃんと並んで掲示板に近付いて行く。
「田坂おはよー」
「智おはよー」
「おはよう」
智ちゃんは人気が有るので気付かれると、すぐに声を掛けられる。
「ついでに高木もおはー」
「……おはよう」
「高木、朝から何か暗いー」
まあ、僕は智ちゃんのついでで、挨拶をされているのでそう言う対応になってしまっても仕方ないと思うんだけど……。
「高木は何組?」
「3組」
「今年も同じクラスだね、よろしくね!」
「うん、よろしく!」
今年も智ちゃんと同じクラスでよかった。ちなみに仲良しグループの何人かとも同じクラスでした。僕は密かにボッチにならなくて良かったと思い安心していた。
でも、自分のクラスの名簿をよく見てみると、見付けたくない名前を見付けてしまった。それも4人も。ワルテットとまた一年間同じクラスと思うと、登校中に上がったと思っていた僕の運は、早くも急降下を始めた。
しかしそれは、この後に起こる事態と比べてみても全く大した問題でも無いと思える程、この後に僕は今後の人生に色々と係わって来る出会いをするのだが、朝の時点ではそんな事は微塵も想像出来なかった。
勢いと思い付きで書いております。
読んで頂いている皆様、内容の齟齬等はご都合主義と言う事でご容赦下さいませ。
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