36、天秤の伝承
聖なるものが世界を征服しようとした時、天秤がそれを止めた。
悪なるものが世界を征服しようとした時、天秤がそれを止めた。
聖なるものと悪なるものは、天秤と戦うために手を組んだが、それでも天秤が勝った。
聖なるものが滅びそうになった時、助けたのは天秤だった。
悪なるものが滅びそうになった時、助けたのは天秤だった。
あまりにも聖なるものが強くなりすぎた時、天秤がそれを倒した。
あまりにも悪なるものが強くなりすぎた時、天秤がそれを倒した。
あいつが天秤だ。天秤がこの戦争に来たぞ。これで勝つことも負けることも難しい。調和して終わるんだ。なぜ勝ちきらせてくれないのだ、天秤よ。
天秤は透き通るような眼をしていた。透き通るような顔も。
天秤よ。力強き天秤よ。調和を司る天秤よ。
聖なるものはいった。
「天秤に備えなければならない。悪なるものと戦った後、天秤が襲ってくる」
聖なるものは天秤に頼み、大地と同じ重さの剣、大地の剣を手に入れた。
聖なるものは大地の剣を使い、悪なるものを傷つけ、追い詰めた。
悪なるものが滅びそうになった時、天秤が現れた。
聖なるものは大地の剣で、克苦一心の一振りで天秤を倒した。
聖なるものは天秤が壊れてから、その後で悪なるものを倒した。
天秤が負けた。いざ、天秤が負けると、みなが心配になった。
天秤は商売を司り、戦争を司り、建築を司る。
天秤は羽根の重さを計り、心臓の重さを計り、大地の重さを計った。
天秤は米の重さを計り、小麦の重さを計り、金塊の重さを計った。
パンの重さを計り、絵画の重さを計り、水の重さを計った。
天秤が壊れて、調和のない世界になったため、聖なるものは不安になり、天秤を復活させた。
聖なるものは天秤を復活させて、己の対に幸せを置いた。
聖なるものが幸せを倒しそうになった時、天秤がそれを止めた。
幸せが聖なるものを倒しそうになった時、天秤がそれを止めた。
聖なるものと幸せが手を組んで天秤と戦った時、天秤が壊れて、聖なるものと幸せしかない世界ができた。
世界が完成したといわれた。
聖なるものが天秤を壊して幸せな世界を作った。
その意味がちゃんと伝わっていればよいのだが。
天秤の時代もよかったと今ではそう思うが、それでは天秤とは何だったのかと聞かれると、あまり確かなことはわからず、みんな忘れてしまったのだ。
これが天秤の伝承だ。




