数正の悩み2
三河 岡崎城
五人が集まっている所に、本多重次がやってきたのは、半刻ほど経ってのことだった。
重次「この様なところに呼ぶとは」
数正「御主はどう考えている。
殿が亡くなり、織田信長様が亡くなり、武田家が復活して、我が徳川家に迫ろうとしている。」
重次「戦うしかあるまい」
忠世「御主、正気か、今の武田家は北條を利根川で破り、滝川一益殿を美濃に退散させ、
甲斐、信濃を奪回、日の出の勢いがある。
我が徳川家は殿が奇貨に遭い、亡くなった。将兵の士気の面でも危ない。
とても、戦える状況ではない。
臆病風に吹かれている言ってる訳ではない。」
数正「それと織田家の援護もない」
忠次「緊急に於義丸殿に当主に立って欲しいと言っても、納得しない者達もいる。
殿が後継者を選定していなかったことが致命的になった。」
お万の方「私たちの考えは武田家に降ることに決め、明日にでも数正殿に信勝殿の元に使者として面会に行ってもらうつもりです。
おそらく、このことに反対するだろう重次殿を説得するためにこの場に呼びました。
重次「なっ、武田家に降るなど。
某は反対じゃ」
数正「ではどうする。家中が混乱している北條や織田家に頼るのか。
はっきり言って無理だ。
上杉は既に武田家と同盟している。」
徳川家の周りの援護は既にない状況を感情だけで反対する重次に数正は内心、苛立ちを感じざるを得なかった。
忠次が重次を説得に成功したのは、あの一件を持ち出した。




