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三十六話

名をラベンヌ=リッチマンと言い隣国からの留学生らしく、しばらく王宮で暮らすところなぜかローナがいいと駄々をこね、そうなってしまった。


「…本日よりラベンヌ=リッチマン様に仕えさせていただくローナでございます。以後お見知りおきを…」

深々と首を垂れるローナに持っていた水を頭からかけるラベンヌ。

「あ~あカーペットが台無し。まずは水を掃除して頂戴?貴方は(わらわ)のメイドだし言うことと聞くわよね?掃除の次は草むしりをして頂戴?その後は…まあ、終わったら声をかけて?」

ラベンヌはとても優雅に笑い、人をコケにするのが大好きな令嬢であった。

そのラベンヌについているメイドもまたいい性格をしており

「畏まりました」とだけいってカーペットを持っていこうとしたローナの足を引っ掛けて転ばせた。痛さと惨めさで涙ぐみながらもカーペットを持っていき、草むしりを開始した。が、冬に草などあるはずもなくラベンヌに尋ねると「雪の中にあるでしょ?」とニコやかに言われた。手の感覚が無くなりながらも雪の中を掘るローナ。サボろうにも部屋から優雅に茶を飲みながら監視しているラベンヌから逃れられない。これほどまでメイドの仕事が大変だと思ったことはなかった。

雪を泣きながら掘っていると目の前にムスクが現れた。


…どうしてこの人は来てほしい時に来てくれるのだろうか…


ローナが話しかけようとしたとき、ものすごい勢いで部屋から出てくるラベンヌ。

ラベンヌはローナを押しのけ、ムスクにキスをした。


その時、ローナの心はバラバラに砕け散った。


「!!!何をする!!」

ムスクはラベンヌを押しのけ口を雪で拭う。

「ムスクったら酷いわ。妾はムスクのフィアンセだっていうのにそんな扱い。」

身体を押し当て、聞くに堪えないような甘ったるい声で言うラベンヌの声がローナの心に刺さる。ローナは無音で立ち、走り去った。

「!?誰がフィアンセだ!!貴様なんぞ俺は知らない!!」

ラベンヌはわあっと泣き真似をして見せ、それに反応するように

メイド(しもべ)達は寄り添った。

「私とは遊びだったのね!!あんなに激しく愛してくださったのに!!」

ワザと大声で言いムスクは呆れた。こんな女初めて見たし、どうでもよかった。


今はそれよりもローナが気になるのだ。


もう、話も聞かずに立ち去ろうと考えていた時、後ろから肩を叩かれた。

「…クソ親父…」

後ろにいたのは自分とは似ないが血のつながったムスクの親父。

目の前で泣きマネをやめ、狡猾に微笑むのは誰だか分からないが上流階級の娘。おおよその見当がついた。

「アンタがこの娘と俺をくっつけようとしていることが分かった。」

クソ親父はカラカラと笑う。

「察しが良くて助かるよ。彼女は隣国の侯爵令嬢でね?美しいだろ?お前が彼女とくっつけば国交も深まり、我が家の名誉も高まる。どうだ?いいことしかないだろう。」


あいも変わらず胸糞の悪い考え方であった。


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ローナはボンヤリと部屋へ帰った。

最も、専属となったローナはマリシナとは違う一人部屋になったいた。

部屋で今日あったことを考えていた。

初めての専属、初めてのいびり、初めての失恋…

頭の中を整理した。思い返してみれば大したことなどないのだ。

いじめられて、失恋しただけ。私は春に居なくなると思えば何ともなかった。

そして、ある決心がついた。


もう二度とこの国には戻らない。


旅をして、いろんな人と出会い別れ、永住する場所を探そうと決めた。

ムスク様の居ない何処か遠い国へ…

お世話になったムスク様には申し訳ないが結婚して幸せになるムスク様を見たくはなかった。

自分はなんて恩知らずなのだろうと思ったが仕方ないだろう。

もし幸せな家庭を持つムスク様を見たら隣に居る奥さんを殺してしまいそうで怖いのだ。これでいい。これでいいんだ。早いうちにここをやめよう。黙って辞めよう。私は涙を流しながら眠りについた。


専属となってからひと月が経過した。

いじめは変わらず、ムスク様はこないし、マリシナにも会っていない。

これでいいのだ。未練なく行ける。思い出だけを胸に…

雪が解け始め、つぼみが膨らみ始めた。


--------------------------------------------------------------

マリシナはものすごく心配していた。

この分からずやと一人プリプリ怒って会いに行ってはいないが

メイド内でも評判である。ラベンヌのメイドいびりは。

ラベンヌのせいで大きなやけどを負い、仕事が出来なくなったものも聞く。

私は心の支えであるエリオットに何とか探りを入れてもらえないかと頼んでみた。

エリオット自身も仕事があるため王子に任せるらしい。


トントン

「エリオットか?入れ。」王子が部屋の向こうから返事をし

私とエリオットは王子の書斎へ入った。

「おお、お前はムスクの屋敷にいたマリシナとか言うメイド。元気か?」

「私は元気なのです。…が、ローナが…そのことで…相談が…」

流石に王族の前なので緊張しているとエリオットがフォローしてくれる。

「実はラベンヌ=リッチマンという留学生に私たちの友人であるローナがメイドとして不服な対応を受けているようなのです。あの対応のままではローナの心は…」

エリオットが熱弁しているところに王様がずかずかと現れる。

「!!父上!!」

ものすごい不機嫌である。

「何?そのメイドちゃんいじめられてんの?おい愚息。そのリッチなんとかってやつを今すぐに追い出せ。今すぐだ!!」

ものすごい剣幕で怒鳴り、踵を返し後付けをするように告げる。

「一応隣国からの留学生だし、褒美でも持たせろあ、あと適当な男。そうすりゃウハウハで帰るだろうよ。今すぐ追い出せ穏便に。」

そういうとどこかへいってしまった。


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