三十四話
「じゃあ、私(俺)は飴林檎を買ってきますね…」
「そうか。」
互いに物真似をしあったおかげですっかり元の二人の会話に戻っていた。
ローナ(ムスク)は飴林檎を買いに行き、その間ムスク(ローナ)は周辺でふらふらとしていた。ふらふらといってもムスクの身体自体がデカいので周囲をキョロキョロするだけではあるが…。
「ワッハハハハハ!!お前たち面白いなぁ!!よし!!お兄さんがおごっちゃう!!」
聞いたことのある声がムスク(ローナ)の耳を刺激した。
見ると、間違いない城のパーティーに居た父親かもしれない男だ。
しかし、男の歩みは早く人ごみの多い城下町ではすぐに見失ってしまった。
そして、またムスク(ローナ)は項垂れた。追いかけてどうするつもりだった。
何がしたいの。どうしたいの。という堂々巡りのの答えのない自問自答をはじめた。
ムスク(ローナ)がベンチに腰掛け、頭を下げていると突然目の前に飴林檎が入ってきた。
見ると少し凛々しい顔の私の顔が心配そうに見ていた。
「大丈夫か?」口調はムスクのモノに戻っていた。
彼はベンチの隣に腰掛けた。
不思議なことにローナ(ムスク)がムスク(ローナ)の隣に座ると、
ムスク(ローナ)の頭を占領していた出口のないモヤはなくなっていた。
「はい…ムスク様が隣に座ってくれただけでスッキリしました。」
と、すがすがしい笑顔でムスク(ローナ)は告げた。
「そうか…」ローナ(ムスク)はそれだけ言うと何も問いたださなかった。
そろそろ夕暮れに差し掛かったころ
ローナ達は近くの丘まで登っていた。
同じ時刻、城では王子が激怒していた。
「父上!!何してるんですか!!」
「えぇ?見りゃわかるだろ?愚息。酒を飲んでるんだよ!!」
だいぶ出来上がっているのか父上はがなり立てた。
「なんでまた真昼間から…」王子はやれやれと言った風に眉間を抑えた。
「お前が祭りに行くななんて言うからだろが!!馬鹿め!!誰もわかりゃしねぇんだから行ったって罰あたんねぇだろが!!」
これ以上関わると面倒だと判断した王子は早々に退去した。
「うわぁ…キレイですねぇ…」
丘の上からは赤みが勝ったオレンジの光が街全体を包む幻想的な世界を作っていた。
夕暮れ時の丘の上。ムードは最高。告白をするなら…今だ!!
ローナ(ムスク)は片膝をつきムスク(ローナ)の手を握った。
「…ローナ…」
「どうしたんですか?」
ローナ(ムスク)は深呼吸をしていっきに言おうと決意した。
「俺は、君がす…」
「キャッ!!」言おうとした瞬間夕日に負けないまばゆい光に包まれた。
光りから解放された時には空には星が上り、身体は元に戻っていた。
「わぁ!!戻りましたね!!」嬉しそうに自分の身体を確かめるローナ。
「え…あ…ああ…そうだな…」微妙な気分のムスク。
「そういえばさっき何を言おうとしていたのですか?」
キラキラとした綺麗な瞳で聞いてくるローナ。
「え?あ、ああ…あれは…こ、この辺に咲いているススキの名前はキミガススキという珍しい品種だということを言おうと思っただけだ…うん。」
それで納得したローナ。
二人は手をつなぎながらお城へ戻って行った。
「んで?告白しなかったんだぁ~ッハ!!流石はムッスンチキンだね。ま、帰り道手をつないだことはプラス三点くらいあげてもいいよ?」
そう上から目線で言うのはローナの友人マリシナであった。
「…何の用だ?」
部屋に帰るとすでにマリシナはソファーに寝そべり茶を啜っていた。
「ああ、本題はねぇ~…早く告白して彼女を引き留めて。」
ザックリバッサリ言い放ったマリシナ。
「…は?」
「言ってるわけないよネぇ~彼女ね、来年の温かくなったころにはコッソリメイドやめて出てくきだよ?でね?彼女はムッスンが好きなの。だから、ムッスンの言うことなら聞くかなぁ~って」
「ちょちょちょちょっと待ってくれ…コッソリやめてでてく?何故だ?俺を好き?嘘だ…」
マリシナはさすがに呆れたようだ。
「ムッスン馬鹿でしょ?ローナがムッスン好きなんてだ~いぶ前からだし、なんで出てくかっていうと世界中の音楽を知りたいんだってさ。世界中を旅したいんだってさ。だからムッスンが最後の砦なの!!ローナ居なくなったらやでしょ?私も嫌だもん!!」
矢継ぎ早に紡がれる言葉に全くついていけないムスク。
途中から目を回しそうになったのは言うまでもない。
「んで!!ムッスン主催のパーティーをしてほしいの。」
「…は?」本日二度目の「は?」である。
「何故だ?」
「時間がないのよ?ここのほうが楽しいって思わせる手っ取り早い方法ってパーティーでしょ?」
もう駄目だ。ついていけないとムスクは思った。
「会場はムッスンの家ね?お城だと色々と邪魔が入るし…本当は二人で過ごすのがベストなんだけど盛り上がりに欠けるから仕方がないから私とエリオットと…あとは自分の呼びたい人ね★それで成功間違いなしだから★」
分かったぞこの女。自分がパーティーしたいだけだろ…
しかし、ローナを引き留めたいのも事実だろう…一石二鳥ということか?
「いい?ムッスンは絶対に告白すること!あとは私たちが盛り上げるから!!」
マリシナはそそくさと立ち上がり部屋を出て、向こう側から少しだけ顔を出しながら「んじゃ、そゆことで一週間後よろしくね」とだけ言うと走って去ってしまった。
ムスクは深いため息をついた。
窓の外を見ると雪がちらほらと降っていた。




