二十五話
次の日、メモのとおり馬は返ってきていて、昨日のようにメモも置いてあった。
【昨晩は良い仲になれたかぃ?あ、馬返してくるねぇ~】なんてふざけたメモがあった。
あのルームメイト…
「結局誰だったんでしょうね?」
気づいてないのか…
馬車内で…
「昨晩はお見苦しい姿を見せてしまいました…申し訳ありません」
「いや、平気だ。君の心を少しでも知れたようで嬉しかった。」
「…ありがとうございます…ムスク様は本当にお優しいですね…まるで劇中の取り合いになった花婿様みたいです…」
「…なら君は双子の姉だな」
「私は妹の方ですよ…こんな過去に囚われたままの弱く、醜い私なんて‥」
「妹の方は自分のことが大好きだから醜いなんて微塵も思っていないだろう。第一君は美しい。その上他人に優しく、努力家だ。やはり姉の方だな…しかし、似てないとしたら、もう君に悲劇など起こらない…いや、起こさない。」
馬車の狭い空間。向かい合って真剣に見つめられると流石のローナでも困ってしまう。
「な、何を言って…るんですか?」
「俺が君のハッピーエンドを用意しよう。」
「……」
「ローナ…俺は…」
丁度良く馬車が止まり、御者がドアを開ける。
「すみませんねぇ、ちょっと馬を休ませますわ」
「………あぁ、そうか。」
死ね。死にさらせ。御者よ。
そのままムスクは告白をしないまま戻ったという。
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「で?劇どうだった?」
「あ、あれマリシナでしょ?ありがとうマリシナ。」
「ばれちってたか…」
「あ、あと…話そうと思ってたの。あのね、この前のパーティー(以下略)」
「そっか…そうだったんだね…ローナ。辛かったねぇ…」
「ううん。ムスク様が聞いてくれて…添い寝してくれたから寂しいのもなかったよ。」
「そっか…ムスク様が…えぇ!?添い寝!?」
「うん。馬車の馬が連れ去られちゃって…」
「へぇーたいへんだったねぇー(棒読み)」
「泊まるとこなかったらと思うと焦ったよぉ~こんなメイドと相部屋だったけどムスク様嫌な顔一つ見せなかったなぁ‥‥」
そりゃ内心ウハウハだったからよ…
ッチ…あんのへタレまた何もしなかったのか…
寝込みを襲うくらいやれや。
「ローナは平気だったの?男の人と一緒だったんだよ?」
「え?大丈夫だよ。あ、でも…馬車の中でムスク様ちょっと変だった…」
「え?どんなふうに?」
「う~ん…『俺が君のハッピーエンドを用意しよう』だって」
「(うわぁ~無いわ~)へぇ~それで?どう思った?てか、ローナに恋心は無いの?」
「…思ったっていうか…固まった。恋心って?何?」
「えぇ~と…考えるな。感じろ!!以上!!」
「えぇ~分かんないよ~」
「そのうち分かるよぉ~触られても平気だったり、頑張って良いことしゃべろうとしたり、逆に見栄を張っちゃったり…」
「…体験談?」
「それを言わないで…」
「まぁ…私にはあんまり関係ないよね…」
私には、ムスク様にはまだ言ってないことが一つある。
「……本当に行っちゃうの?」
「うん。私の小さい頃からの夢だし。お金が溜まり次第行くよ。」
私は他国の音楽を学んでは他国へと旅をしたいのだ。
これは、前々から決めていたこと…
「前から言ってるでしょ?」
「…で、でもさ!ムッスンだって悲しむよ…」
「?ムスク様は関係ないでしょ?」
「た、確かにそうだけど…ローナはムッスンや私と離れて悲しくないの?」
「……」
マリシナと離れるなんて悲し過ぎる…ムスク様も…私にとってムスク様がこんなにも重要人物になっていたとは自分でも驚きだ。…でも…
「行くよ。私。」
「ローナ…」
「と、いうか。まだ行かないし。しばらくはここにいるよ?」
「!!そ、そうだよね!!ハハ‥私らしくないな…でも、ムッスンにはちゃんと伝えなね?」
「…うん。」
窓の外では木々が風に揺られてサワサワと音を立てていた。




