十一話
「っふ…それで貴様は二回も大事な親友を…なぁ~んてね☆」
「だよね。今日は普通に帰ってきたし。」
「でも、良かったねぇ~君たちのラヴも進んでるじゃないかー」
「ラヴ?」
「いや、なんでもないこっちの話…それよりムッスンって優しいねぇ~」
「うん。優しい。」
「エリオット様は?」
「論外。」
二人で顔を見合わせて笑った。
ローナは気が付いたように服を選び始めた。
「あれぇ~?明日だったっけ?買い物。」
「うん。明日じゃないと都合がつかなくなったんだってさ。」
「楽しみなんだ?」
「うん。すごく。」
ローナはニッコリと笑って見せた。
「ニルバーニャさんには言った?」
「うん。」
「エリオット様(変態)」
「言ってない。」
「あららぁ~言っといてあげようか?」
「ありがとー」
「ムッスンには?」
「…あ」
「言ってないのね…これも言っといてあげるわ」
「ははーありがたき幸せー」
ワザとらしく跪くローナ。
「ふむ。苦しゅうない苦しゅうない」
ノリに乗るマリシナ。
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「あらぁ!イケメンさんがこんなところにぃ!珍しいわねぇ~」
「あらぁ!貴方さん!ちょっとこっちで遊んでいきなよぉ~」
「旦那!!いい子揃ってるよー!!」
ウザいウザいウザいウザい!!黙ってろ!!俺は適当なところでいいんだ。それなのに…
「ねぇ~こっちに来てよイケメンさん」
右腕にくっつく女。
「えぇ~こっちよぉ~」
左腕にくっつく女。
気持ち悪すぎる…前来た時はこんな嫌悪感を覚えただろうか…
…止めようもう帰ろう…
スッと腕を抜くムスク。
「えぇ~もう帰っちゃうのぉ~」
「じゃあねぇ~また来てねぇ~」
スタスタと立ち去り、近くに止めてあった馬に着いてようやく溜息をついた。
時計は深夜1時を指していた。
戻ったとしても、この時間だし寝れないな…
ふと、ローナの顔が浮かんだ。
彼女に…会いたいな…
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コンコンッ
控えめにノックをすると人が出てきた。
「はぁ~ぃ…む、むむむむムッスンんんんんん!!!??」
「…ぅん…うるさぃ~」
出てきた女は知らないがわずかに聞こえた小さな声はローナのものだった。
「ちょ、ちょ!ちょっとお待ちくださいねムッスンさん!!」
…ムッスン?
「ちょっとぉ…何すんのぉ~?眠いぃ~…」
「起きて起きて!!ムッスン…じゃねぇや…公爵様が来てるよ!!」
「ぇえ?夢に出てきたの?…良かったね…」
「違うよ!!」
「うるせぇ!!静かに寝ろ!!」
真夜中にも関わらず大声で言っていたので怒られてしまった…
「あ、すいませぇ~ん…いいから起きて。」
「ぅうん…」
ずっと話を聞いていたムスクは申し訳ない気持ちになった。
やはり迷惑だったな…失敗した…
「んでぇ?何のよおですか?」
眠い目を擦り、髪はボサボサ、服装はパジャマ。
前言撤回。失敗ではない。こんなパジャマ姿……パジャマ…?
…ッハ!!!
ムスクは今日(昨日)見た夢を思い出した。
「?どしました?めぇ見開いて…」
「な、なんでもない…」
「で?用事はなんですか?こちとらぁ、朝早いんですよ。春の夜は肌寒いんですよ」
あきらかに不機嫌なローナ。
「す、すまない…」
よ、用事なんて考えてもいなかった…あ、そうだ!!
「少し遠いが、良く星の見える丘を知っていてな行かないかと…」
「…寝ます。」
ドアを開けようと手をかけたが開かない…
「……まりしなぁ…」
マリシナと呼ぶ声には憎しみがこもっていた。
「う、恨まれてもいいもん!!こ、公爵様!ソイツを3時くらいまでならお貸しします!!それまでに私は逃げますから!!」
「…了解」
「…ハァ…分かったよ…行きましょうムスク様…」
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「…着いたぞ」
「わぁ…」
ムスクの愛馬に二人で乗ってきた。
その丘と呼ばれていた場所は本当に丘であり、それ以外何もない。
丘に登ってしまえば何も阻むものなどなく、見渡す限り星、星、星であった。
「キレイです…」
馬に揺られている間に目が覚めたのか星に見入っていた。
「それなら良かった。」
「ここはなんの場所なのですか?」
「ああ、ここは…」
元戦地だ。…なんて言えるはずもなく
「秘密の丘だ…」
「秘密の丘…確かに。」
暗くて良く見えないが嬉しそうに微笑んでいるようだ。
「馬から降りてもいいd…」
「ダメだ。」
「なんでですか?」
下には死屍累々があるからだ。…なんて言えるはずもなく
「暗くて危ないからだ。」
「そうですねぇ…」
納得してくれたようだ。
「「・・・・・・・」」
二人はしばらくの間静かに星を見た。
ムスクはいろいろなことを考えていた。
夢の彼女はもっとこう…大胆だった…が、本物のほうが可愛い。小動物みたいで。
あ、でも。パジャマは本物のほうが可愛いな…うん。
…こんなにも近くにいるのに暗闇に紛れてしまいそうだ。
ローナの背中が密着していて、彼女の体温を感じる。
その代り自分の心臓の音は彼女に聞こえてしまっているだろう…
「…ムスク様。すごい心臓のおt…ブァックション!!」
大きな音のくしゃみに馬がビックリしてしまった。
「あ、ずいまぜん…くしゃみ大きいんです。花粉かな…」
「あ、いや。全然気にしていない。これでも着ていなさい。」
ムスクは自分の着ていた上着を上から被せてあげた。
「すみません…ありがとうございます。」
「大丈夫だ…俺は寒くない…」
むしろ熱い位なんだが・・・・
「そうですか。やっぱり冷えますね。春の夜は・・・・」
「ああ、そうだな。」
「あ、そうだ。明日、歌いません。」
「え?」
「あ、正確には歌えません。買い物に行くんです明日。」
「あのルームメイトとか?」
「いえ。」
「誰と?」
「知り合いの騎士さんとです。」
ガーンッと頭を鈍器で殴られたような心地がした。
「そ、そうか…」
「そろそろ戻りましょう?」
「そうだな…」
再び馬を走らせるムスク。
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前に乗せているローナの頭がぐわんぐわんと揺れて落ちそうになる。
いち早く気づいたムスクは馬を一瞬彼女を止めて受け止めた。
「…スースーッ」
「…寝たのか…」
聞き手ではない左手で彼女を抱きかかえながら馬を走らせ始めた。
寝てしまうくらい信用されているのか…?
そうだといいがな…
***********
「あらら~ローナ寝ちゃったのね~」
「ああ」
部屋に入って抱えていたローナをベッドに横たえた。
「それにしてもストイックねー」
「何がだ?」
「好きな女が襲い放題のムフフな時にあまつさえキス一つせずに返すんだもの」
「…好きな女?」
「あら!違ったの?ただ単にメイドとかに手を出すのが趣味の人だった!?…そうだったら二度とうちのローナに近づかないでね!!分かった?」
「違う。俺は…」
「あら!やっぱり好きなのね!明日、ローナはライアスと買い物らしいわよ!きっと城下町ねぇ~ついていくならついていけば?じゃあ、明日も早いからおやすみなさいませー」
早口で言いたいことだけ言うとドアを閉められた。
なんて女だ…
………好きな女…城下町…
明日。仕事休むか…
いや、違うぞ。もともとそろそろ取ろうと思っていたんだ。尾行目的などではない。断じてない!しかもたまたま行先までかぶってしまった!それだけだ!うん。




