家族って何だろ◇シュウの解釈
「――…それでね? 僕は毎晩毎晩父上のヤケ酒に付き合わされているんだよ? 酒が入ると話が止まらないからねー、父上は。まるでさっきのお前みたい。こっちの話をちゃんと聞かないで、そうしてそのうちに僕にもぶち当たってくるんだ。
…もう慣れたけどね。さすがに最初の頃は傷ついたな。
父上の話はそれこそ内容盛りだくさん。仕事の愚痴とか日頃の鬱憤をガーガー言って、そして最後は必ずお前を思い出して、一気に沈んで、泣いちゃうの。
ま…。僕に話をすることで少しでも楽になれるのなら、僕はいくらでも聞く耳を持つけどね。
はぁ…、やれやれ。素直じゃないし、マトモに考え始めれば暗く悪い所ばっかりを追いかける。まったく、お前と父上は本当によく似ているよ。
って――…僕も今日はよくしゃべったなぁ…! いやぁ、かーなりすっきりしたよ。お前は実に聞き上手だね、ユウ。ありがとう。
ねぇ、ユウ――…あれ?」
隣でカウンターに突っ伏したままの弟を改めて見ると、その肩は規則的に静かに上下している。
その前に転がっているのは、大小合わせて10本以上の酒の瓶。その全てがもちろん空だ。
しまった…、と。シュウは一気に青ざめた。
「うわ、ごめんユウ…! 父上と同じピッチで呑ませちゃったッ。
大丈夫? 生きてる? 起きてユウ、起きろーっ。…ダメだこりゃ。
オヤジさん、この店って何時まで? …夜明け?
それまで寝かせておこうかなぁ…。う〜ん…」
寝息を立てるその寝顔に、記憶の片隅に微かに残る母の面影。髪と瞳、そして顔立ちそのものは父の面影。
あの遠い日々、一生懸命にぱたぱたと後ろを追いかけてきた小さな弟。そのユウガも…今年で23歳。
心は傷ついたまま――否、抉られたまま、ここまできてしまった…。
自分も父と同様に、後悔しない日などない。もっと自分は弟と父を救うための働きができたはずだ、と。
でも――。
「…ユウ、覚えてる? 僕はお前と家出しようと…、お前を塔から――蒼から連れ出そうとしたことがあるんだよ。
お前に外の世界の素晴らしさを教えたかった。父上にユウが外に出ることの素晴らしさをわからせたかった。
だから僕は、お前を連れ出そうとした。…けど、結局は叶わなかった。
――…それがお前の望みではなかったから」
『俺は絶対に塔から動かないッ! 意地でも動かないッ! 俺はもう寝るんだッ!
いッ――…いやだいやだッ、放せよアニキッ! 俺は嫌だッ!
俺は絶対に塔から出たくないッ! 無理矢理出すって言うなら、今ここで死んでやるッ!!』
…半幽閉状態という異常環境と父の過激なしつけがあの言動に結びつけた――ということは、このユウガに限ってはあり得ない。
「あのときは本当にびっくりしたよ…。だって、父上と喧嘩する度に『いつか俺はこんな蒼から出てってやるんだッ!』って吠えていたお前が、僕がいざ家出をしようと塔に忍び込んだら、そこら辺の物をぶっ壊して抵抗するんだもん…。
はぁ…。ホント、お前と父上は似ているよ…。頑固で、意地っ張りで、素直じゃなくて――…究極の天の邪鬼。実に面倒くさい父子だ。
さすが父上の息子だよね、ユウ…」
愛する弟の寝顔に目を細め、自分の外套をその体に優しく掛けたシュウ。そして店の主人に酒の追加を注文した。




