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265話:(1879年1月/冬)冬の総括と世界的影響

明治十二年一月、冬の東京は一面の雪に包まれていた。

 銀白の静寂の中で、東京城の大広間には熱気が満ちていた。

 集められたのは三正面作戦の総括を行うための特別会議である。

 机上には各方面から届いた報告書が山と積まれ、地図には新たに日本の影響圏を示す朱線が広がっていた。



 藤村総理大臣が静かに口を開いた。

 「諸君。わずか五か月――この短き時の間に、我らは前代未聞の成果を手にした。

  満州は制圧され、朝鮮は統合され、東南アジア経済圏は確立された。

  かつて世界の誰もが夢想すらしなかった大事業を、我らは成し遂げたのだ」


 その言葉に広間は静まり返った。

 兵站と衛生で戦を勝ち抜き、行政と教育で国を統合し、協力と信用で経済圏を築いた――。

 すべてがわずか五か月で実現したのである。



 まず、大村益次郎が立ち上がった。

 「満州における主要都市の制圧は計画より二か月早く完了。

  疫病による損耗はほぼ皆無、馬賊の反乱も事前に鎮圧。

  義信君の実戦指揮は理論と実務を兼ね備え、兵の士気を保ち続けた。

  これは世界の軍事史においても類例を見ぬ成功だ」


 義信(十一歳)は父の隣で静かに頷いた。

 その幼さに似合わぬ冷静な眼差しに、重臣たちは未来の大将を見ていた。



 次に後藤新平が帳簿を掲げた。

 「朝鮮は完全に日本式の行政に統合された。

  租税の透明化、教育制度の普及、医療の整備――いずれも計画通り。

  西郷総督の統率と久信君の民政参加が民心を掴み、清国の影響を完全に断ち切った」


 久信(十歳)は机に座り、真剣に記録をとっていた。

 「僕はまだ学びの途上ですが、人々の笑顔を見るたびに、この道が正しいと確信しました」



 渋沢栄一が南洋からの報告書を開いた。

 「シンガポール、バタビア、マニラの三拠点は完全に機能。

  北海道の物流網と結ばれ、南洋の資源は高付加価値化されつつある。

  義親君の研究成果が導入され、現地住民の収入は倍増。

  欧州列強すら日本の進出を“協力のモデル”と認めている」


 義親(四歳)は小さな声で言った。

 「数字と理屈で考えれば、必ず良い方法が見つかります。

  僕はもっと研究して、皆が幸せになる仕組みを作ります」


 広間にいた誰もが、その幼い声に確かな未来を感じ取った。



 藤村は三方面の報告を受け、扇子を畳んだ。

 「満州、朝鮮、東南アジア――いずれも計画を上回る成果を収めた。

  諸君、これは奇跡ではない。

  科学と制度、そして人心を結びつけた必然の結果だ」


 広間に重苦しい沈黙が走り、やがてそれが大きな拍手と歓声に変わった。

 わずか五か月で、列強が一世紀かけても成し得なかった事業を日本が成し遂げた。

 その事実は国内に誇りを、国外に衝撃を与えていた。

東京城の大広間は静まり返っていた。

 外では雪が降りしきり、障子越しの光は白く濁っている。

 重臣たちの視線が一斉に、壇上に並んだ四人の師――福沢諭吉、大村益次郎、北里柴三郎、後藤新平に注がれていた。

 この五か月、三兄弟の教育を直接担ってきた彼らが、ついにその成果を語る時が来たのである。



 まず福沢諭吉が立ち上がった。

 扇子で軽く机を叩き、特有の鋭い眼差しを走らせる。

 「三兄弟の国際的指導力は、もはや疑う余地はない。

  義信は軍を率い、久信は民政を担い、義親は科学で世界を繋いだ。

  彼らはそれぞれの場で、ただ学んだ知識を披露するのではなく、人を動かし、制度を築き、未来を描いた。

  それこそ実学の完成形である」


 会議の空気が引き締まり、三兄弟は緊張の面持ちで福沢の言葉を聞き入っていた。



 次に大村益次郎が進み出た。

 「義信の軍事指導能力は、世界最高水準に達している。

  戦場での彼は理論を机上に留めず、実際に兵を動かし、彼らの心を掴んだ。

  満州作戦では二か月前倒しで主要都市を制圧し、病による損耗はほぼゼロ。

  これは単なる幸運ではない。科学的兵站と防疫、そして少年指揮官の統率力がもたらした成果だ」


 義信は静かに立ち上がり、深く一礼した。

 「私は父と師から学んだことをただ実行しただけです。

  しかし、兵が私を信じてくれた。それがすべての力となりました」



 続いて北里柴三郎が口を開いた。

 「医学技術の国際展開は、確かに成功を収めた。

  朝鮮では乳児死亡率を半減させ、南洋では疫病の流行を抑え込んだ。

  これは制度の支えと、義親君の数理的発想があって初めて実現した。

  彼は四歳にして、病と数式の両方を結びつける視点を持っている。

  この才は、今後の人類の医療に計り知れぬ影響を与えるだろう」


 義親は照れたように頷き、小さな声で答えた。

 「僕はまだ分からないことばかりです。

  でも、数字を使えば世界の仕組みは必ず整理できる。

  それを人のために使いたいのです」



 最後に後藤新平が立ち、分厚い資料を広げた。

 「行政システムはすでに輸出産業となった。

  朝鮮の統治は計画通りに進み、台湾・フィリピンへの展開も始まっている。

  制度は商品であり、安定を輸出することが国家の利益となる。

  久信君は十歳にして、現地官吏や庶民と膝を突き合わせ、言葉で心を動かした。

  彼の民心掌握の力こそ、制度を根付かせる最大の基盤だ」


 久信は立ち上がり、はっきりと言った。

 「人々の生活を守りたい。ただその思いで机に向かいました。

  笑顔を見れば、制度が正しいと分かります」



 四師匠の言葉が一通り終わると、会議室には重い沈黙が訪れた。

 やがて陸奥宗光が口を開いた。

 「これで明らかになった。三兄弟はただの“天才児”ではない。

  彼らは世界を導く新しい指導者として成長したのだ」


 その言葉に、誰もが深く頷いた。

 雪はしんしんと降り続き、白銀の光が障子を透かして広間を淡く照らしていた。

 三兄弟の未来は、その雪原のように果てなく広がっていた。

外は深い雪に覆われ、東京城の大広間は白銀の静けさに包まれていた。

 その中で藤村総理大臣はゆっくりと立ち上がり、世界地図を広げて全員の前に示した。



 「諸君。わずか五か月で我らが歩んだ道は、もはや一国の枠を超えている。

  満州の制圧、朝鮮の統合、東南アジア経済圏の確立。

  この三正面の成果は、単なる軍事的勝利や経済的発展にとどまらぬ。

  世界秩序そのものを揺るがすものだ」


 その言葉に、重臣たちは深く息をのんだ。



 報告はすでに各国から届いていた。

 イギリスは「日本は真の世界強国」と称え、

 フランスは「東洋に革命の理想を体現する国家が現れた」と驚きをもって報じた。

 ドイツの参謀本部は、日本の兵站と防疫を「未来の軍制」と評価し、学ぶべき対象とした。


 ただ一国、アメリカは違った。

 議会では警戒の声が強まり、太平洋における日本の影響力拡大を阻止せねばならぬと訴える議員が増えていた。

 「日本はハワイを狙っている。太平洋の覇権を奪われてはならぬ」

 その声は確実に広がりつつあった。



 藤村は続けた。

 「列強が我らを認めるのは必然だ。

  だが同時に、恐れと嫉妬が必ず芽生える。

  アメリカの謀略、清国残党の煽動、ロシアの南下――そのいずれも想定内である」


 彼は指先で満州の地図を叩いた。

 「馬賊や軍閥を取り込み、反乱の火種を事前に摘み取れ。

  住民の信頼を失わず、列強の干渉に隙を与えるな」



 さらに視線を南へ移し、台湾とフィリピンを指差した。

 「台湾総督には後藤を任じる。制度を整え、移民を推進せよ。

  フィリピンにも農民を送り込み、土地を耕し、共に暮らす社会を築け。

  搾取ではなく協力を貫くのだ」


 そして太平洋を指し示した。

 「ハワイ王室と皇族との縁組を進め、王国を日本の友邦とせよ。

  移民を送り込み、太平洋の要を我がものとする」



 藤村の声はさらに高まった。

 「国民皆兵を徹底し、訓練は精神論ではなく科学で行う。

  数学で編成を最適化し、統計で兵站を管理し、医学で兵を守る。

  我らは精神と科学を兼ね備えた、未来の軍隊を築くのだ」


 その言葉に、大広間の重臣たちは一斉に頷いた。

 雪明かりが障子を透かし、冷たい光が広間を照らしていた。

 しかしその場にいた全員の胸は熱く、未来への確信に満ちていた。



 藤村は最後に静かに結んだ。

 「これで日本主導の新しいアジア秩序が確立された。

  次は世界全体の平和と発展をリードする段階に入る。

  我らが歩む道は、人類史を変える道である」


 外では雪がしんしんと降り積もっていた。

 その白銀の大地は、新しい帝国の夜明けを静かに告げていた。

会議の空気は張り詰めていたが、やがて藤村総理大臣の言葉が途切れると、重臣たちは次々に立ち上がった。

 まず口を開いたのは、西郷隆盛であった。


 「わしは朝鮮総督の任を受けた身じゃ。

  これからも、民を守り、秩序を築き、力でなく心で国を導く。

  たとえ清国の残党やロシアの陰謀が迫ろうと、恐れることはない。

  薩摩の血にかけて、必ずやこの任を果たす」


 その声は大広間の梁を震わせた。



 次に後藤新平が立ち、眼鏡を直して冷静に語った。

 「台湾総督の任を拝命すれば、制度と行政を直ちに整えます。

  農業改良と港湾建設、移民政策を推進し、台湾を南洋への扉といたします。

  制度の輸出こそが国の富を築く柱です。私はそれを証明してみせます」


 渋沢栄一は帳簿を広げながら口を添えた。

 「経済の安定なくして国家の発展はない。

  信用と金融を輸出し、日本の旗の下で誰もが取引できる世界を築きましょう」



 黒田清隆と清水昭武も口を開いた。

 「北海道から南洋までを繋ぐ物流の動脈を、さらに強化します。

  資源と食糧を絶え間なく供給し、日本の勢力を支える血流といたします」


 彼らの言葉に、会議の熱は一層高まった。



 そして三兄弟の番が来た。

 義信(十一歳)はまっすぐ立ち、父を見据えた。

 「満州で学んだのは、戦とは環境を整え、人を守ることだということです。

  私はこれからも軍を率い、科学で支えられた未来の軍隊を築きます。

  いかなる列強を前にしても、日本を護り抜くと誓います」



 久信(十歳)は机に両手を置き、柔らかながら力強い声を響かせた。

 「朝鮮の人々の笑顔を見て、民こそが国家の基礎だと知りました。

  これからは台湾、フィリピン、ハワイでも、人々が安心して暮らせる制度を広めます。

  民の幸せが国の強さであると、世界に示してみせます」



 最後に義親(四歳)が一歩前へ進み、小さな声でしかしはっきりと告げた。

 「僕はもっと研究します。

  数式と科学で、戦も農業も商売も良くできます。

  遠い国の人々にも役立つように、工夫して工夫して……。

  世界の人が笑顔になれる仕組みを作ります」


 その幼い言葉に、広間の誰もが胸を打たれた。

 四歳の少年の誓いが、この大国の未来を映していた。



 藤村は全員の決意を受け、ゆっくりと立ち上がった。

 「よく聞いた。諸君の言葉はこの国の羅針盤だ。

  日本はすでに世界五大強国の座を手にした。

  だが、それは覇権のためではない。

  平和と発展を導く責務を担うためだ。


  我らは人を搾取せず、共に栄える秩序を築く。

  満州でも、朝鮮でも、南洋でも、太平洋の果てでも。

  それが日本の使命である」


 その言葉に、重臣たちも三兄弟も深く頭を垂れた。



 外では雪が降り続いていた。

 だがその白銀の光景は冷たさではなく、新しい帝国の夜明けを告げる輝きであった。

 藤村は窓越しに雪を見つめ、胸の内で静かに誓った。


 「この歩みを止めはせぬ。

  日本は世界を導く光となる」


 その誓いは、夜の闇に溶け込み、未来を照らす炎となって燃え続けていた。

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