177話:(1871年1月/厳冬)道州制の芽
厳冬の江戸城・評定所。白く曇った空から細かな雪片が落ち、庭石の上で音もなく消えていく。炭火を入れた火鉢の赤が薄く揺れ、障子越しの光は冷たい。広間の中央には大判の地図が広げられ、常陸の地に朱の円が描かれていた。その脇に置かれた札には、太い筆で「常陸州」とある。
藤村晴人は卓に進み、深く礼をして口を開いた。
「諸卿。常陸はすでに統一され、一つの仕組みで動いております。今日ここで申し述べるのは、その“仕組み”に名を与え、法を与え、全国へと広げるための第一歩――名を“州”といたす件にございます」
広間に微かなざわめきが走った。年配の老中が膝を正し、静かに問う。
「常陸は羽鳥も水戸も既にまとまっておる。名を改める意味は、どこにある」
藤村は朱筆で地図に短い線を引き、境目に置かれた小札を、次々と外していった。
「名は力でございます。藩の争いを納めるため“藩”と呼んだ時代がありました。いまは国を一つの仕組みで動かすため、“州”と呼ぶべき時代です。名を与えることで、仕組みを整え、責と権を明らかにいたす」
別の老中が眉を寄せる。
「藩の伝統を捨てよ、と聞こえるが」
藤村は首を横に振り、言葉を選んだ。
「捨てませぬ。重ねるのでございます。伝統は旗と祭に残し、仕組みは“州”に集める。いま常陸で行われておること――道路の維持、学校の運営、港の手続き、財政の帳簿――これらが一つの帳面で回っている事実こそ、名にふさわしい中身でございます」
渋沢栄一が控えの机から帳簿を持ち上げ、頁を指した。
「こちらが常陸の“統一簿”にございます。歳入・歳出・港湾収入・学校経費・検疫費を一冊に束ねましたところ、重複経費が三割減。停滞していた道路修繕が一季早まり、港の停泊時間も一割短縮。数字は嘘を申しません」
榎本武揚が地図の海へ視線を移し、頷く。
「港の現場から見ましても、仕組みが一つであることは力になります。常陸のやり方を海沿い一帯へ広げれば、沿岸の呼吸はさらに整う」
勝海舟は扇を畳み、にやりと笑った。
「藩の誇りは残し、仕組みは州に束ねる。……悪くはない。古い船に新しい帆を重ねる、というやつだ」
保守の列にいた老臣が、しばし黙考してから口を開いた。
「して、その“州”とやらは、何をもって立つ」
藤村は用意しておいた薄冊を差し出した。
「“常陸州規”――試案にございます。第一に、州の名と印信。第二に、州長と評議。第三に、州財の簿と公示。第四に、港・道路・学校・警の所管を州に置き、江戸は指標と監督のみ。……これを常陸にて先行し、成果を以て他州へ勧めます」
「評議……とは、議会か」
「はい。羽鳥城に“州議会堂”を置き、年二回の定期評議を開く。民の声を拾う場を置けば、上意下達の押し付けとの誤解は薄れます」
思案の沈黙が広がる。炭火の爆ぜる音が一つ、二つ。雪の白が障子の端で揺れた。
老中首座が低く問うた。
「州は何を以て責を負う」
藤村は即座に答えた。
「“数”にて負います。収めたる税、受けたる役、使いたる費――すべてを州ごとに帳面一枚で示す。どの州がどれほど稼ぎ、どれほど用い、次に何を成すか。見える化こそ、責任の第一です」
勝が頷き、渋沢は筆を走らせて見本の「歳入歳出一覧」を机に広げた。簡素な枠に、歳入・歳出・港・学校・衛生・道路と欄が並ぶ。
「州の会計はこの形で公示します。字の読めぬ者には図を添える。隠さぬことで、不平も風説も痩せて参ります」
榎本が笑みを浮かべる。
「海も同じです。海図を隠すと座礁しますが、開けば避けられる。陸もまた、地図がいる」
保守派の列から、別の声が上がった。
「だが、名を改めるだけで民は動くか。州と呼んだ途端、反発が出はしまいか」
藤村は静かに息を吸い、広間を見渡した。
「名は旗にすぎません。肝は“暮らしが軽くなること”。常陸では既にそれが起きております。米の流れは淀まず、学校は季節ごとに開き、港では手続きの紙が一枚で済む。民は名より軽さを見ます。……名は、その軽さを国じゅうに広げるための標にございます」
老中首座が小さく目を細め、やがてうなずいた。
「よかろう。常陸はすでにまとまっておる。ならばそれを“常陸州”と呼び、州規を試す。成果が出れば、他の地もこれに倣う。――異存は」
広間に、ためらいがちではあるが、確かな相槌がいくつも重なった。
勝海舟が扇で炭火をあおぎ、笑う。
「よし、初手は決まった。藩の顔を立て、州で腹を据える。……このやり方なら、江戸の中央も重くならぬ」
榎本が卓の端に視線を落とし、付け加えた。
「北の新領でも使えます。樺太の港と村々を“樺太州”の下に束ねれば、孤立は防げる。海の道と陸の帳面を、同じ言葉で話せるようになる」
藤村は深く礼をし、朱で「常陸州」の印影を書面に押した。墨の匂いが立ちのぼる。
「ここに“常陸州”を立て、州規を試す。……これが道州制の芽でございます」
―――
評定が散じると、広間の空気がようやく緩んだ。障子の向こうに目をやると、雪はなお細く降り続いている。藤村は地図を巻きながら、勝と榎本、渋沢の三人と膝を寄せた。
勝が肩を揺すり、冗談めかして言う。
「“県”でも“郡”でもなく“州”とは、でっけぇ器を持ち出したな。……だが嫌いではない。大きな帆でなければ大きな風は受けられん」
榎本が微笑し、湖水のような声で続けた。
「“州”は港の言葉でもあります。海図に“沿岸州”と記すでしょう。海と陸の言葉が通い合えば、船も人も迷いません」
渋沢は帳面を閉じ、真顔に戻った。
「“州”は数字の器でもあります。藩の外郭を重ねて見えなかった数字が、器を変えるだけで立ち上がる。……見える数字は、嘘をつかない」
藤村は三人に深々と礼をした。
「道はまだ芽のかたちですが、芽は必ず林に、林は森に。――そのための根を、常陸に張らせます」
―――
その夜、藤村邸。囲炉裏の火が小さく爆ぜ、窓の外には白い吐息のような雪が舞っていた。義信は州規の草案を膝に、難しい字を追っている。
「父上、この“州評議”は、江戸の評定とどう違うのですか」
「民が声を上げるところから始まる、という一点が違う」
「では、数字を示すのは?」
「その場で示す。見える数字は、議を真直ぐにする」
久信は傍らで「州」の一字を指でなぞり、ゆっくりと書き板に写した。
「……しゅう。むずかしいね」
「難しいからこそ、ひとつずつ覚えるのだ」藤村が笑い、頭を撫でると、久信は照れたように笑った。
火の粉が霧のように舞い、障子の向こうで雪はなお細く降りていた。厳しい季節の只中にありながら、家の中にも、国の制度にも、確かに新しい芽が息づいている。藤村は火鉢に炭を足し、その小さな赤を見つめながら思った。
――藩の縁を守り、州の器で包む。名は旗、数は根、議は幹。
――常陸から始めよう。この小さな芽を、やがて国を支える大樹に。
寒気は深い。しかし、芽は凍らない。雪の下で、春へ向けて静かに伸びていく。藤村の胸にも、その温い脈打ちが、確かに伝わっていた。
江戸城西の丸・勘定所別館。冬の朝はまだ暗く、格子窓の外には粉雪が舞っていた。広間に並ぶ机の上には、州ごとの歳入歳出表が並んでいる。白い紙に黒々と墨で記された数字の列は、火鉢の赤に照らされてじんわり温かみを帯びていた。
「常陸州、歳入三十六万両、歳出三十二万両。余剰四万両」
報告する渋沢栄一の声は落ち着いていた。その隣で若い書役が、州ごとに色分けされた帳簿を並べ替えている。赤は港収入、青は農業収入、黒は雑収入。これまで藩ごとに閉ざされていた帳面が、一つの様式にまとめられていた。
藤村晴人は机に肘をつき、目を細めた。
「州ごとの数字を示せば、誰の目にも責が明らかになる。……これが藩政から州政への違いだ」
広間に居並ぶ各州代表はざわめきを見せた。ある者は顔を明るくし、ある者は険しい表情を隠さなかった。
「殿、このように晒せば、我らの不手際も民の目に晒されましょう」
年配の代官が声を荒らげた。
「これまでは江戸にのみ報告すればよかった。それを、州ごとに余剰や不足を公にするなど……民が動揺いたします」
藤村は静かに頷いた。
「その“動揺”こそが力になるのだ。民が知れば、無駄を問う。問われれば、我らは正す。……数字は恐れるものではない。数字を隠すことこそ、恐れの元になる」
代官は口をつぐみ、肩を落とした。隣の若い書役が勇気を振り絞って口を開く。
「殿。常陸州での試みは既に効果が出ております。港税と検疫費を一元化しただけで、重複経費が二割減りました。道路修繕も早まりました。……数字を隠さずに示したことで、民からの納税も滞りなくなりました」
「そうだ」
勝海舟が扇で膝を叩き、笑い声を上げた。
「金がどこから来て、どこへ消えるか。これを見せるだけで民は安心する。財布の底を見せれば、無理も納得するってもんだ」
榎本武揚も手元の表を指差した。
「常陸州の港で停泊料を集め、学校と道路に振り分けた結果、港町の子らが冬でも学べている。港に寄る外国船も“整備が早い”と評している。これは数字が人を生かしている証拠だ」
藤村は筆を執り、帳簿の端に「公開」と二文字を記した。
「州ごとの歳入歳出は、半年ごとに広場に掲げる。寺子屋でも読み聞かせる。読み書きできぬ者には図を添える。隠さぬことで風説を鎮め、納得を広げる」
この言葉に、慎重派の一人が眉をひそめた。
「だが、殿……赤字の州はどうなるのです。余剰の州と並べば、無能と罵られましょう」
藤村は迷わず答えた。
「罵りを受けよ。その声が正せぬなら、州の役を退け。……だが同時に、余剰の州は不足を補う役も担う。赤と黒を分けて見せるからこそ、互いに助け合う仕組みが成り立つ」
沈黙の中、渋沢が一歩進み出て、声を強めた。
「殿の申す通りにございます。数字の共有は、責任の押し付けではなく、連帯の証です。州ごとに余剰と不足を明かし合えば、国全体の力は均されて参ります」
勝がにやりと笑った。
「“借り”と“貸し”をはっきりさせる。商人にとっちゃ当たり前だ。それを国でもやるってだけのことさ」
榎本も頷き、補足した。
「数字を隠せば、兵糧も港の修繕も遅れる。隠さねば、海の風は早く流れる。海も陸も同じことだ」
重臣たちの間に、次第に頷きが広がっていった。
羽鳥城の一角に、新しく木造の議事堂が建てられていた。白漆喰の壁はまだ新しく、畳を敷いた広間には長机が円を描くように並べられている。これが「州議会堂」と呼ばれる場であった。
この日、常陸州の代表者たちが集まり、初めての会議が開かれた。商人、農村の庄屋、学識者、そして官吏。これまで藩政の場に座ることのなかった顔ぶれが、真剣な表情で机に向かい合っていた。
「米価安定のため、州の備蓄を増やすべきです」
「いや、道路整備を優先せねば港からの荷が滞る」
声が交わされ、時に熱を帯びた。従来なら江戸や藩庁にすべてを仰ぐしかなかった議題が、ここで直接論じられている。
藤村晴人は後方の座に静かに腰を下ろし、その様子を見守っていた。
「中央が決めることと、州が決めること。その線を引くのがこの場だ。……民の声を吸い上げ、国の力に変える」
議場の隅に控えていた若者が、緊張しながらも口を開いた。
「州税の一部を教育に充てるべきではないでしょうか。寺子屋だけでは学び足りぬ子が増えております」
意外な発言に場が静まった。やがて年配の庄屋がうなずき、手を挙げた。
「若い者の申す通りだ。学びを広げれば村の未来が変わる」
拍子抜けしたように笑いが起こり、議場は和らいだ。
勝海舟が傍らで扇をぱたりと畳み、藤村に囁いた。
「これは面白いな。民の口から自然と“教育”が出るとは。武器よりも学を選ぶ気風が芽吹いている」
藤村は頷き、机上の記録に「教育充当」の四字を静かに書きつけた。
夕刻、会議が終わると議事堂の外には村人たちが集まっていた。障子越しに声を聞いていた者も多い。ひとりの母親が幼子を抱きしめながら言った。
「我らの言葉が、殿に届いた……」
その表情には、これまでにない誇りが宿っていた。
羽鳥の夕空は茜色に染まり、議事堂の屋根を金色に輝かせていた。そこから始まった議論の芽は、小さくとも確かに「地方自治」という新しい根を張り始めていた。
翌日、江戸城の学問所。厳冬の冷気が障子を白く曇らせる中、慶篤は講壇に立っていた。机の上には分厚い原稿と欧州の書籍が積まれ、聴衆には若い書役や地方から派遣された役人たちの姿が並んでいた。
「州制とは単なる呼び名の変更ではない。税、教育、警備、道路――すべてを一つの仕組みに束ねる。これにより重複をなくし、効率を上げるのだ」
板書に筆を走らせると、黒々とした文字が浮かび上がった。
「責任の所在を明確にし、数字で示す。これが州制の根幹である」
講堂の隅で藤村晴人が静かに聞き入っていた。慶篤の声には揺らぎがなく、時折、筆を止めて聴衆の顔を真っ直ぐに見据える。その姿に、誰もが「新しい秩序」の輪郭を感じ取っていた。
―――
一方、別室では弟の昭武が地図を広げていた。色鮮やかに塗り分けられた欧州の版図を指でなぞり、声を張った。
「スイスは州ごとに自治を持ちながら、連邦としてまとまっている。ドイツもまた、多様な領邦を束ねることで力を増した。……日本もまた、独自の形で同じ道を歩めるはずだ」
役人の一人が問いかけた。
「しかし殿、我が国は島国。大陸の例をそのまま移せましょうか」
昭武は落ち着いて答えた。
「移すのではない。学ぶのだ。日本独自の州制を作る。そのために外国の例を知るのである」
地図の上で線が交わり、国境が溶けていくのを見た若い役人の胸には、「新しい日本」という像が鮮やかに刻まれていった。
―――
その夜、江戸城の一室。昼間の講義を終えた兄弟は、机を挟んで向かい合っていた。机の上には慶篤の板書の写しと、昭武が訳した欧州の制度資料が並んでいる。
「昭武よ、今日の講義で人々の目が変わったのを感じた」
慶篤が筆を置き、疲れた手を揉みながら言った。
弟は微笑んで答えた。
「兄上、理論は遠いようで近い。人の心を納得させるのは、言葉と数字です。武力では長く続きません」
藤村は二人の会話を黙って聞き、胸の奥で思った。
――学をもって理を示す。これこそが州制を支える力となる。
障子の外では雪がしんしんと降り、庭の灯籠を白く染めていた。静寂の中に芽吹いた理論は、やがて国を変える力に育っていくのだと、誰もが感じていた。
数日後、羽鳥城の議会堂。初めて「州議会」としての会合が準備される場に、まだ幼い義信と久信の姿もあった。
議場の中央には、木製の机と椅子が並び、壁には「州歳入歳出表」の大きな板が掛けられている。数列の数字が墨で書かれ、どの項目にいくら割り振られているのか一目で分かる仕組みだった。
「兄上、あれは……お金の表?」
久信が首をかしげて問うと、義信は迷いなく答えた。
「そうだ。収める税と使う費を比べるものだ。……見ればすぐに欠けているところが分かる」
義信はまだ六歳。しかし一度目にした表の数字と構成を瞬時に覚え、頭の中で仕分けを繰り返していた。そばにいた役人が思わず息を呑み、小声で「まるで大人の官僚のようだ」と囁いた。
その隣で久信は、兄の言葉を聞きながらゆっくりと頷いた。
「税を集めて道を直す。病を治す。みんながそれを分け合う。……兄上の言葉なら、皆も納得するだろう」
彼は兄ほどの才には恵まれていない。だが、集まった役人や町人が久信の素直な一言にほっと肩の力を抜き、自然と頷いてしまう。人を和ませ、場の空気を整える力は、すでに幼いながら芽を出していた。
―――
やがて議場の一角で、慶篤が二人に声をかけた。
「義信、久信。今日の場は見学にすぎぬが、やがてお前たちもこの机に並び、意見を述べる日が来る。覚えておけ」
義信は目を輝かせて頷き、久信は少し恥ずかしそうに笑った。二人の背後で藤村晴人が静かにその姿を見守る。
――才と和。この二つが並び立つとき、州制は真に人のものとなる。
外は厳冬の風が吹いていたが、議場の中には、確かに新しい時代の温もりが宿り始めていた。
同じ頃、江戸城の黒書院では、藤村と陸奥宗光が向かい合っていた。机の上には、朝鮮と台湾の地図が広げられている。
「常陸州の試みは、確かに成果を見せている。ならば、この制度を海を越えた地でも用いられぬか」
藤村が指先で朝鮮半島をなぞりながら言った。
陸奥はうなずき、眼鏡を外して答える。
「はい。州という枠は、ただの行政区画ではなく“信頼の形”でございます。台湾や朝鮮に同じ仕組みを敷けば、地方官も住民も役割を理解しやすくなるでしょう。『一つの国、多様な州』――それが国際社会に示すべき姿です」
勝海舟も横から扇を振りながら口を挟んだ。
「つまり、藩の殻を破った今度は、国境をも越えるというわけか。面白い。だが同時に難儀でもあるぞ。文化も言葉も違うからな」
藤村はしばし沈黙し、やがて低く言った。
「違いは消すものではない。州の仕組みによって“活かす”のだ。税と教育と法を一つに束ねれば、互いの文化を守りながらも効率を生み出せる」
その言葉に、陸奥は深く頷いた。
―――
やがて報告が台湾から届いた。台南の議場では、現地官僚と日本の役人が同じ机を囲み、試験的に「台湾州歳入歳出表」を作成していた。
「収めるものと使うものを並べる……これなら民も納得する」
地元の長老がそう言い、初めて数字に目を輝かせた。
朝鮮からも同様の声が届いた。仁川の会議所で、地方官が木札を指差しながらつぶやいた。
「数字は言葉を越える。これなら我らにも分かる」
―――
江戸に戻った藤村は、報告書を閉じ、障子越しの冬空を仰いだ。
「藩を越え、国を越えて……ひとつの制度で多様な人々を繋ぐ。それが州制の真の役割だ」
外では雪が静かに降り始めていた。その白さは国境も藩境も覆い隠し、新しい時代の地図を描こうとしていた。