第十一話 登録完了
「仰せのままに!」
やたらと格好いい返事とともに、溜められていた魔力が爆発する。
「悠久の時を白き世界の中で過ごせ。【フリージング・コフィン】」
そして放たれた圧倒的な魔力は、しかし彼女の持つ【魔力操作:神】によって完全に制御され、正確に敵に向かう。
スキンヘッダーズ三人の足元に水色の魔法陣が現れた。そして、急激に周囲の温度が下がっていき、三人を中心として、空気中の水蒸気までもが凍り付く。
…………それ、王級魔法じゃね? 完全にオーバーキルじゃね?
いや、魔法の分類は封印系に含まれるから、オーバーキルって言っても死にはしてないだろうけど。……死んでないよな?
《魔法の性質として、死なないようになってはいますが、あまりにもレベル差があるので死んでいるかもしれませんね》
おい、マジかよ。アリスさん思ってたよりも結構キレてるじゃねえか。
いや、でも、むしろ帝級とか神級の魔法を使わなかったわけだし、手加減はしたのかな。もしかして、悪目立ちしないっていうのを考えてくれたのかもしれない。
「な、何だあれ!?」
「伝説の氷魔法?」
あ、冒険者の中に氷魔法を知ってる奴がいた。伝説っていう扱いなのか。まあ、アリスって素で魔王の娘っていう才能の塊だからな。
「おい、あれって王級じゃなかったか?」
「おいおい、護衛に宮廷魔法士レベルって、あいつ大貴族なんじゃ」
まあ、大貴族なのは否定しないが、アリスは護衛とは少し違うし宮廷魔法士よりは遙かに強い。
あ、ちなみに、宮廷魔法士っていうのは頑張れば何とか王級魔法を使えるレベルの人だ。クリスタルスライムをギリギリ倒せるってところだな。
《本当にもうすぐスキンヘッダーズが死にそうですが、よろしいのですか?》
何もよろしくねえ。っていうか、やっぱり非殺傷系で殺害できるくらいのMP使ってたのか。【魔力強化:帝】とか持ってるもんなぁ。
「アリス、氷の拘束を解いてやってくれ」
「良いのですか?」
「いや、殺してもそこまでは問題ないとは思うけど、一応な」
大貴族に刃を向けたのだから死んでも文句は言えないが、アリスに人殺しをさせるのは少し嫌だ。
若干不満げな顔をしながらも、アリスは魔法を解いてくれた。
「さてと、お前ら。もう絡むなよ? 流石に次は許してやれないからな」
「「「すみませんでした!!」」」
土下座して謝るスキンヘッダーズ。
「パパ。そんなのどうでもいいから、はやくとーろくしよーよー」
「ああ、ごめん。それじゃあカウンターに行こうか」
さり気にそんなの扱い。レイちゃん天然Sっ気半端ねえ。頼むから悪魔みたいにはならないでくれ。
《悪魔、という種族は存在していますので、そのあだ名は適切ではないかと思いますが》
細かいな。じゃあ、お前は何が良いと思う?
《何故自分の悪口を自分で考えないといけないのですか?》
いや、お前が何故かダメ出ししたんだろ。人の意見を否定するなら自分の意見を言えよ。
《……まあ、いいでしょう。考えてあげます》
お、実はスティがツンドラじゃなくツンデレだった説浮上。
《………………》
すみませんでした。悪気はなかったんです。悪ふざけだったんです。
《まあ、いいでしょう。そうですね、『邪神の微笑み』というのはどうですか?》
意外とノリノリじゃねえか。ていうか、自分が邪神っていうのは自覚してるんだな。
《フェイト様のイメージから考えたましたから》
成程、確かに俺のイメージ的には、お前って薄く冷笑を浮かべながら毒吐いてるって感じだもんな。冷笑って微笑みじゃないけど。
いや、そのあだ名もいいんだけどさ、なんか微妙に違うんだよな。悪意が足りない。
《そうですか。申し訳ございません、フェイト様如きのレベルに合わせて考えるのは、私には少々難しかったようです》
お前俺のこと馬鹿にしすぎだろ。っていうか、様付けなのに如きって、どっちかにしろよ。
《では、これからは『フェイト如き』で統一しますが、よろしいのですか?》
よろしくねえよ。何もよろしくねえよ。フェイト様にしろよ。
お前絶対微笑みなんて可愛いモンじゃねえよ。『邪神ヲ嘲笑ウ者』とかそんな感じだろ。
っていうか、俺は一体何の話をしてるんだ。スティのことはどうでもいいんだよ。登録だ登録。
奥に向かって歩き出す。
とりあえず、適当に空いているところに行ってみた。
「冒険者に登録したいんだが」
「登録ですか?」
受付嬢が怪訝そうな不満そうな顔つきで言ってくる。
いや、そんな顔をされてもなぁ。
「別に規則で禁止されてるわけじゃないだろ。何でそんな嫌そうなんだ?」
「登録されるのは魔法使いの方でしょうか?」
無視られたんですけど。ねえ、何で?
「俺もに決まってるだろ。後、この子もな」
「……どう見ても成人していませんが? 貴族といえども規則を破らせるわけにはいきませんよ」
ああ、それは確かにそう思うか。
「いや、その子も俺の護衛でな。色々あって懐かれてるけど、竜族の実力者なんだ」
アリスが護衛だと思われてるっぽいし、ついでにレイもそういうことにしておこう。種族が違うのに親子っていうのは通常あり得ないし。
「竜族ですか? まあ、それでしたら規則的には大丈夫ですけど」
成人までは基本的に地球人と同じくらいの力しかない人族と違って、他の五大種族は生まれた時からステータスが反映される。だから、戦力的には問題ないとされているのだ。
「とにかくそういうことだから、三人登録してくれ」
「……チッ。はい。身分証明書はお持ちですか?」
舌打ち!? 舌打ちナンデ!?
「俺のはこれだな。二人は持ってない」
「……はい。それではフェイト様が二人の保証人ということでよろしいですね?」
「ああ」
まあ、それこそ偽造したって良かったんだけど、別にそこまで必要じゃないからな。これからはギルドカードが身分証明書代わりになるし。
「それでは、ギルドカードを作りますので、このカードを持ってください」
そう言って、受付嬢は灰色で無地のカードを三つ、俺達に渡してきた。
受け取って持つと、カードが一瞬眩しく光り、何やらすごいスピードで勝手に文字が書かれ始めた。
数秒経つと、カードの変化は終わる。これは、持った人物のステータスを読み取っているのだ。
「一度お借りします。……はい、問題ありません」
カードにはこう書いてある。
◇◇◇◇
フェイト・ウィアートル 人族 Gランク
◇◇◇◇
アリス 魔族 Gランク
◇◇◇◇
レイ 竜族 Gランク
◇◇◇◇
ちなみに龍族が存在していることがわかると少し面倒なので、レイのステータスは少しいじってある。
「では、冒険者についての説明を始めます」
あ、そういうのはマニュアル通りやってくれるんだ。態度は悪いけど、一応職業意識はあるのか。
「冒険者は基本的にギルドで依頼を受けて、その報酬で生活します」
基本的にってことは、一応副業を認められてるのか。まあ、そもそも全く金に困ってないからどうでもいいんだけど。
「依頼には採取依頼、討伐依頼と、護衛依頼、特殊依頼の四種があります」
そこは大体ラノベと同じなんだよな。俺が護衛依頼を受けることってあるんだろうか。正直どっちかっつうと護衛される側な気がする。
「Bランク以上からは二つ名がつく冒険者がおり、二つ名持ちの冒険者のみに指名依頼を出すこともできます。緊急依頼という、資格保持者は全員参加しなければならない依頼もありますが、緊急時以外に使われることはありません」
例外的な依頼もあるということか。
「依頼にはランクがあり、冒険者は依頼と同じランク、もしくはその前後のランクを持っていなければ依頼を受けることは出来ません」
まあ、身の丈に合わない依頼を受けて死んだりしたら、ギルド側の損失にもなるんだろうし、そういうシステムにするには当然なのだろう。だけど、低ランクだけど強いっていう人には厳しいシステムだ。
「冒険者のランクはG~SSSまであり、SSSは現在一人も存在しません」
ロマンすぎるだろ。っていうか、全然いないなら何でそんなランクを作ったんだよ。
「ランクを上げるには依頼を受けて、ポイントを稼ぐことが必要です」
なるほど、依頼を受けてれば勝手に上がってくのか。ある意味では楽だな。
「二人以上の場合、パーティーを組むことができ、パーティーはメンバーの冒険者の平均ランクの冒険者として扱います。リーダーと三つ以上ランクが離れている場合、パーティーを組むことはできません」
寄生はできないことになってるのか。まあ、妥当だよな。依頼を受けてランクが上がるんだったら、弱い人がこうランクになってしまうこともあるんだろうし、それを防ぐのはいいことだ。
「依頼を途中で止めたり、失敗するとペナルティがあります」
まあ、常識的に考えて仕事放棄はダメだよな。ミスも同じく。
「冒険者同士の争いにはギルドは関与しません」
……いや、おい! テンプレだけど! テンプレだけども!
関与してやれよ。強い奴がルーキーに絡んだらどうするんだよ。
ああ、でも、ギルド側に戦いを止められる人がいなきゃ無理なのか。それはある意味しょうがないかもしれない。職員に身代わりになれとは言えないしな。
「そのほかに質問はありますか?」
「いや、大丈夫だ。二人は何か気になったことはあるか?」
別種族から見て疑問に思うところがあるかもしれない。
「貴方様が問題ないとなさるなら、私は従うまでです」
「しつもんっておいしいの〜?」
……うん、やっぱあるはずないか。
「それでは、登録料として一人三千ルル、合計九千ルルをお支払いください」
大銅貨を九枚渡す。
「はい。これで登録完了です。……チッ」
おい、何で最後舌打ちした? 最後まで気を抜いてんじゃねえ。
「それで、パーティーの登録もしたいんだが」
「はい。アリス様とレイ様の二人でよろしいででしょうか?」
「お前、絶対違うってわかってて言ってるだろ……。三人全員でだよ」
こいつマジでクビにできねえかな? 権力は使わないって決めたんだけど、耐えられる気がしない。
「分かりました。パーティー名はどうしますか?」
パーティ名。そう、パーティ名。ずっと考えてたものがあるんだよ。
「神々之裁判で頼む」
そう、俺の必殺技である神罰に絡めたのだ。中二心を刺激する良い名前だと思わないか?
《思いません》
お前には聞いてねえよ。
「それでは、カードをお貸しください。……はい、登録できました」
まあ、そんなこんなで、俺達は冒険者になった。




