第九話 爆☆誕
「じゃあ、もう一回【瞬間移動】だな。えーと、今度はどこにしよう?」
「もう一度あの森で良いのではないですか?」
そうアリスは提案するんだけど。
「いや、マズいだろ。霊族の調査とかが始まっている可能性大だぞ」
そう言って否定すると、アリスは納得げな表情をして、再び考え込んだ。
「では……人がいない所なら良いんですよね? それなら良い所を知っています」
「そう? じゃ、頼むわ」
そう俺が言うと、彼女は戸惑ったような顔になる。
どうしたんだろう。
「フェイト様が【瞬間移動】を使われるのではないのですか?」
「いや、俺は場所知らないから。え、【瞬間移動】使えるよな?」
「あ……そうでしたね。【瞬間移動】発動します」
◆◆◆◆
アリスの【瞬間移動】で来た場所は砂浜だった。
目の前には大海が広がっていて、後ろを見ると崖がそびえ立っている。一言で言えば絶景で、それ以外に形容する言葉が出てこない。
「ここは?」
「魔大陸です。昔、気分転換に良く来ていました」
王女時代の隠れ家? 隠れ場所?……まあ、思い出の場所なのだろう。
「じゃあ、早速やるか」
そう言って、俺はアイテムボックスからドラゴンの卵を出した。
えーと、注いだ魔力量によって強さが変わるんだよな?
《はい。やりすぎ、ということはありませんので∞のMPをつぎ込んじゃってください》
なんか怖いんだけど、お前の言葉は信じていいのか?
まあ、何も言われなくても限界までやるつもりではあったけどさ。
「アリス、危ないかもしれないから下がってくれ」
「はい」
にしても、ドラゴンが眷属か。ファンタジーの憧れだ。
もしかして、ドラゴンライダーになれたりするんだろうか? スキルに『ジャンプ』とかは王道だよな。いや、これはゲームの話だけど。
卵に手を当てて、MPを注ぎ込む。使えそうだからついでに【魔導神】発動。
「綺麗……ですね」
MPを注ぎ込むと同時に卵は虹色の光に包まれた。虹色ということはさっきのかませ犬、レインボードラゴンかな?
卵に罅が入り、光がより強くなった。
《おや……?》
某ポケットに入るモンスター育成ゲーム風やめろ。
テレテレッテッテッテッテッテッテッテッテーって、頭の中で永遠とBGMがリピートされるじゃねえか。
数瞬の後、輝きが最高潮に達し、卵の殻が吹き飛んで何かが現れる。
光の中から出てきたのは、虹色の髪に虹色の瞳、外見年齢五歳くらいの美幼女だった。ちなみに衣服は着用しておらず、裸。保護欲を誘うような、あざとすぎない可愛さをもっている。
小さなお尻には爬虫類系の尻尾が生えているため、どうやら竜族のようだ。
って、オイ。
オイ。
どう考えてもおかしいだろ。え、何? 何が起きたの?
とりあえず、現状を確認しよう。
卵にMPを注ぐ→卵が割れた→目の前に幼女
いや、最後が意味分かんねえ。
え? 何で幼女? ドラゴンじゃないの?こんなこと聞いてな……待てよ。
幼女が出現するという異常事態が起きたというのに、提案者であるスティは何のコメントもない。
驚愕している様子もない。まあ、スキルが驚愕するかはともかく、無反応はおかしいだろう。
つまりは、てめえの仕業か! スティ!!
《誤解ですね。ええ、誤解です。誤解も甚だしいですよ。そこまで愚かなのですか、フェイト様?》
白々しい。マジでとんでもなく白々しい。
コイツマジでどうにか出来ねえかな? 調子乗りすぎだろ。
若干身の危険すら感じてきたぞ。
にしても、どうするよコレ。裸の幼女が人気のないところって、犯罪性抜群だろ。あ、幼女と目が合った。
「パパ~!!」
ぱあっと笑顔を咲かせて俺に飛びついてきたんですけど!?
パパ!? パパって何!?
《MPを注いだ人物、つまりフェイト様が親と認識されるのです》
へえ、俺がパパか。うん、可愛い娘ができてよかったなぁ……じゃねえよ!?
俺のMPってことは、やっぱりあの卵から生まれたのか? ドラゴンって幼女のことだったの?
っていうか、今俺って全裸で無垢な笑みを浮かべている幼女を抱きとめてるんだが。抱きしめてるんだが。
これ、軽く犯罪者じゃね? 親だからいいのか? いや、何もよくない気がする。
……はっ! アリスが引いてるかもしれない。
ヤバいどうしよう。『最低ですね。そんな人だったんですか、貴方様。いや、変態』とか言われたら俺もう立ち直れな……いや、それはそれで……。
いや、ないな。っていうか、引いてるアリスのキャラがスティと大体一緒だったんだけど。
何、もしかして俺スティの毒舌で快感感じちゃってんの? 何それこわっ!
落ち着け俺。現実逃避はそろそろ終わりにしろ。
俺に張り付いている幼女の頭を優しく撫でながら、ゆっくりと深呼吸する。
よし、落ち着いた。
アリスの方を見てみると、何か微笑ましい物をみたような穏やかな笑みを浮かべていた。
「可愛いですね。私にも抱かせてくれませんか?」
え、何? もう適応しちゃってんの? カオスとしか呼べないようなこの状況に適応しちゃってんの?
ドラゴンを孵すはずが、なぜか幼女が生まれた件について何か不思議に思わないのか?
俺が無言でいると、アリスは慌ててこう言った。
「も、申し訳ございません。眷属ごときの存在が貴方様の御息女に触れたいなどと、傲慢にも程があることを……」
「いや、別にいいけど。ほら、ママの方にも行ってあげたら」
冗談でアリスのことをママと言い、手を放してみる。いや、ほら、その、未来の予行演習というか、ね? もしかしたら将来アリスがママになるかもしれないし。
「うんっ。ママ~」
そう言って幼女はアリスに抱き着いた。え、本当にアリス=ママなの?
《眷属化の影響により、フェイト様の魔力にアリスのものが混じっていたため、二人からMPを注がれたものと判断したのだと推測します》
あ、そうなの? ってことは、マジでアリスとも血が繋がってんの?
つか、絶対こうなるとわかっててやらせたよね、お前。
《ノーコメントで》
その回答で全てを物語っちゃってんじゃねえか。
「わ、わわわわわわ私がママ!? よ、よろしいのですか!?」
アリスは顔を真っ赤にして、戸惑いながらも聖女の包容力で幼女を抱きとめた。
「んふぅ。ママ、だいすき〜」
「は、はぅ。とても可愛いです」
二人はキャッキャウフフしはじめたんだけど。まあ、アリスがいまの状況を受け止めてくれているようで何よりだが、実際アリス視点ではどうなってんだ?
一番わかりやすくすると。
信仰してる神の娘の母親が自分だった。
何もわかりやすくねえな。意味がわからん。
宗教とかよく知らんし、ここはもっと身近な例えで考えよう。上司と部下の関係とかどうだろうか。
上司の娘の母親が自分だった。
うん。余計カオスになったな。なんか微妙に犯罪臭がするし。
まあ、いいや。適応できてるなら悪いことはないからな。
そんなことより、なんでドラゴンが生まれるはずだったのに幼女が生まれたのか説明してくれ。
《はいはい、それではフェイト様でもわかるように易しく説明しますね》
おい、完全に俺のことを馬鹿にしてんじゃねえか。一応お前俺のスキルだろうが。
まったく、【叡智神】時代にはこんなことはなかったのに。やっぱり酷使が良くなかったのかなぁ。頼むから戻ってきてくれー。
《その【叡智神】が意思を得て私になったのですがね。まあ良いです。質問に答えましょう》
頼む……てか、当然の義務だよなそれ。
《まず、卵からはドラゴンが孵るはずだったということはわかっていますよね?》
おい、俺のツッコミを無視すんな。悲しくなっちゃうだろうが。
ドラゴンが生まれるはずだったってのは理解してるに決まってるだろ。そうじゃなかったから、ずっと質問してるわけで。
《では、そのことを踏まえて、彼女のステータスをご覧ください》
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未設定 龍族 0歳
状態:通常
称号:甘えっ子
レベル:1/∞
HP:100%
MP:100%
能力値
攻撃力:神級
防御力:王級
敏捷力:神級
魔法力:将級
抵抗力:王級
魔法適性
火:王級
水:王級
土:王級
雷:王級
風:王級
光:王級
闇:王級
無:王級
スキル
神級
【神龍化】【龍神闘気】【魔法闘気:神】【神纏闘気】
帝級
【虹龍化】【拳武帝】【森羅万象】
クレスト
【運命の寵愛】
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龍族って、あの伝説の?
《伝説かどうかはともかく、現在は絶滅したとされている種族ですね》
されているって、伏線みたいな言い方すんなよ。
で、まさかMP注ぎすぎたせいで、ドラゴンが強くなりすぎて龍族が生まれたなんてアホなことは——
《その通りですよ。ちなみにもう少し減らしていると竜族が生まれていました》
は? 何でモンスターが五大種族になるんだよ。いくら親和性が高いと言っても、あり得ないだろ。
まあ、どうせ本当のことを言う気はなさそうだし、はぐらかされておくか。
《……………………》
んで、えっと。まあ、異常なステは使ったMP量的に妥当だから良いとして、なんでこの子はこんな成長してるんだ? 生まれたばかりなら普通に赤ちゃんのはずだろ。
《そこは、元はモンスターだったせいですね。若干その性質を引き継いでいるのです》
ああ、確かにモンスターは出現時からある程度育ってるんだっけ。それならわからなくもない。
「あの、貴方様」
「どした、アリス?」
アリスが幼女をを抱きしめたまま俺に話しかけてきた。十五歳の身長で五歳を抱きかかえるって、見た目的には釣り合ってなくて不思議な感覚だ。
母娘というよりは、姉妹に見える。
「この子の名前、どうしましょうか」
あ、言われてみれば確かに必要だな。ステータスでも未設定になってたし。
ずっと幼女幼女呼んでたからな。モノローグの中でだけだけど。流石に娘を幼女呼びはないか。
「んー、どうしようか。なんか案はあるか?」
「いえ、ここは貴方様がつけてこそ意味があるかと。勿論、命令であれば考えますが」
「あー、いや、俺がつけるよ」
確かに、ここでアリスに考えろというのは酷だな。
名前か。どっかのスキルとは違って、可愛いからな。まともに考えなきゃ駄目だろう。そうだな。
虹色の髪&瞳→虹色→レインボー→レイ
「よし、この子の名前はレイだ」
《私の時と大して変わらないように思えるのですが》
まあ、長々と考えても別に意味ないし。むしろシンプル故に感じる愛情があるんだよ、きっと。
「パパありがとう!」
「良い名前ですね」
ほら、二人も納得してるし。
《…………》
黙るなよ。拗ねても可愛くねえぞ。
《レイの完全眷属化を確認。龍族を支配下に置いたので【龍族化】が【神龍化】に進化しました》
え?
《【代行神】を発動。リソース消費による改造——神級スキル【闘気神】【移動神】を獲得しました》
お、おう。マジか。
って、【神龍化】!? あと【神獣化】が手に入ったら五つ全部揃うじゃねえか。
案外簡単そうだな。
「さてと、無事レイも生まれたことだし、帰るとするか」
「貴方様、その前にレイ様の服を買わないといけないのではないでしょうか」
あ、レイ裸だった。確かに娘の裸を誰かに見せるわけにはいかないな。可愛すぎて見た瞬間全ての男がロリコンになりそうだし。
「うーん、とりあえず【瞬間移動】で宿に帰ろう。服は着いてから買えばいいだろ?」
「そうですね」
部屋に中なら人目にはつかないしな。
「それじゃあ、二人とも掴まってくれ。【瞬間移動】」




