↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【和風】悪役義妹がお姉様の溺愛結婚を壊すまで  作者: 稲井田そう
第十二章お姉様を欲する変質者
PR
236/245

皇都駅前にあるぽてんぽてんの鳳凰

 皇都の駅舎を抜けると、町屋造りの建物が並ぶ景色が広がる。時代劇のロケ地のような雰囲気だった。時代劇ヲタクが転生していれば、多分テンション上がったと思う。帝都では……どうなんだろう。おそらく40代以降の人間が転生すれば、景色に興奮していたかもしれない。歴史を軽んじているのではなく、生活するので精一杯の状態だったから、よく分からない。普通の人間だったら、もっと、教養があるだろうし……痛い。


 皇都の景色を眺めていれば水社一心に肘で肘を殴られた。肘相撲じゃん。なんじゃこいつ。


「ぶつけただけだろ」


 ぶつけるなよ。


「お前は列車に乗る前に肩をぶつけてこようとしてきただろ」


 復讐鬼じゃん。水社一心、なんか、前世の知識を吸収してるし前世の記憶を取り戻した復讐ものジャンルへの出張も視野に入れてんの?


「はぁ」


 水社一心に盛大にため息をはかれた。さて、どうしたものかと思えど、今は……謎の待機時間が発生している。仕事あるある、謎待機時間の発生。


 霧島先生が謎端末を操作しながら護衛を伴う蝦蟇貪と加寿、富山局長、真原さんと話をしていた。酒呑童子は集団から簡単に離れ、もう10メートルくらい先にいる。保育園、幼稚園、小学生の頃、大抵一人でとんでもないところで走り回り、ドッジボールの球投げがめちゃくちゃ速い子供がいるけど、それ。その距離。駅前をひとつひとつ見て回っていたかと思えば、駅舎前で荷物を抱えた老婆を、右手で俵持ちし左手で鞄を持ち、階段の上まで運んだかと思えば、「ババア転ぶなよ!」と失礼とギリギリドライブをしている。その次は階段を杖で降りようとする老爺を見つけ、「ジジイ死んじまうぞ‼」だ。しかもすごい大声。「ジジイとは失礼な若造が‼」と相手も応戦するが「どう考えてもジジイだろ‼ ジジイ‼」と酒呑童子は言い返す。正直、酒呑童子のが多分年上。精神年齢が幼稚園生と高校生をタップダンスし大学には確実に至ってないだけで。


 そして福野さんといえば皇都の駅舎のそば、お土産屋さんの並ぶ通りで皇都の鳳凰マスコットキャラを眺めていた。そしてゆっくりとこちらに振り返る。完全に犯行現場を目撃された犯人だった。福野さんをそこまで知らない人間に絶対やってはいけない振り返り方だった。絶対誤解される。


「枯賀さん」


 呼ばれたので福野さんのもとに向かう。


「お姉さん」


 はい。


「お土産売ってるなら、見ますか。まだ時間かかるっぽいので」


 どうやら福野さんはお姉様がお土産屋さん経営をしているなら、見たらどうかと提案しているらしい。そうだ。福野さんはこういう人だった。蓋を閉めない短足性癖のお人だけじゃない。言葉が少ないけど、気遣いの人でもある。蓋閉めないけど。もしかして他の人も使うと思って蓋閉めない……? 蓋閉めない新たな生活様式とかとんでもないこと言ってたけど。


 私は頷き、土産物屋の店先だけ眺める。


 鳳凰が描かれた扇子に茶碗、湯呑に屏風、手ぬぐいが並んでいる。マスコット風の絵柄もあるが、基本は水墨画だった。白っぽく描かれているが、本物は金。


「足が、短くない。どっちが本物なんですかね……どっちが本物だと思います?」


 どっちも本物じゃないんだよな。


 答えに悩んでいると、「俺はこっちが本物だったらいいなと思います」と福野さんはマスコットのほうを指した。知ってる。そして商品にふれない配慮。福野さん、普段人間関係とか心の機微については結構大胆だけど、こういうところは柔らか……繊細、なんて言えばいいんだろう。


「帝都には、なんでいないんでしょうね。帝都にいるのなら、皇都のはこっちでいいですけど」


 福野さんは水墨画っぽい、等身高めのほうを差しなおす。


 千年桜は恋と咲くで、帝都の象徴はなかった。皇都では動物の名前がついた貴族の家々が存在し、お家騒動に巻き込まれるし、「帝は鳳凰という聖なる生き物を使役しながらお前らを守ります」「鳳凰は神様です」「愚かな人間に知恵を与えたのが鳳凰です」「鳳凰は法の皇であり貴様らに知恵を与え法を貴様らが生み出し傷つけあわないよう法の支配を生み出しました」と、色々な逸話を残しているが、帝都にはそういうものがない。


 福野さんをじっと見つめれば、


「皇都がこの、足長いシュッとした鳥なら、帝都のほうはきっと、まんまるで、ぽてんぽてんのはずだから」


 無垢な願いだ。無垢な願いが、サイコパステストの回答構文で出力されている。


 そしてそんな無垢な願いを、手持無沙汰の皇龍清明様がじっと見ていた。その横には熾窪が佇む。心が読めずとも分かる。熾窪は皇龍清明様を一人にしないようにしている。役職柄、本来皇龍清明様の隣にいるはずの酒呑童子が駅舎の階段で高齢者荷物持ち上げシャトルランをしているから。


 っていうかさっきからなんで皇龍清明様は福野さんを見ているんだろう。熾窪の視線的にも、皇龍清明様が福野さんを観察していることは分かっているだろうが……当の福野さんは何も気づいてない。福野さんは多分、短足のほうの鳳凰もどきと……お姉様の配慮含め、こちらに気を遣っているようだし。


「皇龍様直々にお越しくださると楽しみにしておりましたけれど……帝都の方々は……なんとまぁ凡庸な」


 声だけで分かるくらい、「傲慢です!」「御嬢様です!」「上品です!」の三点が伝わる声に振り向く。


 猫屋敷様だ。



ここ数日更新文字数が短めでしたが、スランプややる気低下ではなく、健康であるかの確認があった関係です。今日からぼちぼち普通の文字数です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
猫屋敷様! なんだかいかにも、な縦ロールをイメージしてしまいますね笑
ワ…ァ…末理ちゃん…一心くん〜!!!元気づけようとしてくれてる。末理ちゃん今は一心くんもみんなもいるよ!!酒呑童子氏の説明wwめちゃくちゃわかる気づくとあっちこっちにいる子だww「先生にコラ〜!!戻っ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。