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【和風】悪役義妹がお姉様の溺愛結婚を壊すまで  作者: 稲井田そう
第十一章お姉様に惚れる人気キャラ
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 ネットでは何でも気にする人間のことを「繊細さん」と呼び、そこそこ話題にする風潮があったが、お姉様はド級の繊細さを持っており、それゆえに他者に優しくできる。レビューには「いい子ちゃんぶって」といった声があったがお姉様の優しさは病の発作に近く、「そうでなければいけない」という部分も滲んでいる中での暴言である。猫又など可愛いキャラはいる、といったことも記載されていたので、あいつ顔がいいだけの中身変態クソジジイじゃねえかと内心思っていたが、反論はしなかった。

 そもそもレビューにコメントもしなければ評価もしてない。ただただ読む一本のファンだったから。定期的に流れる他のネット作家の、初速が肝心とかファンレターで応援してくれると続刊に繋がりますとった投稿に後ろめたさを感じつつも、正直家のことでそれどころじゃなかったし、そういう話題になるとただただ「やめてくれ」が強かった。千年桜は恋と咲くの作家も漫画家も絵師もほぼそういう投稿をしなかったので、楽だった。その一方、売り上げの言及も一切なかった。他の原作者は記念の番外編を投稿したり、漫画家は更新ごとにイラストをアップしたりがあるが、そのたぐいのことも無だったので、思想というよりシンプルにSNSが駄目なタイプだったのかもしれない……とお姉様プロデュースの季節限定饅頭を眺めながら考えてると、「僕も枯賀にあるんよ」と真原さんが自らの紙袋から袋を取り出した。

 半月型の大きめのつやつやしたクッキーのようなものがたくさん入っている。

「味噌の甘い煎餅でな、枯賀あれやろ、味噌の柏餅平気やったからこれもいけるやないか思うて」

 おいしそう。私は感謝を込めて会釈した。

「盆の時は、まさかもってくる思わんくて、なんも返せへんかったし、お姉さんにもろたやんか。せやからこっちは、管理局みんなから言うて、手配しといてくれるか」

 そう言って真原さんはもう一つ紙袋をこちらに渡してきた。富山局長が「ああ、ありがとう、助かる、後でお金払う」と立ち上がった。

「ええですよ、局長はこっちの人やし、福野は屯所から出とらんで、土産も何もないでしょ。同じ帝都で」

「そういうのはキッチリしないとね」

 富山局長は財布を出そうとする。真原さんは「ええですええです」と謙遜した。福野さんはといえば、二人とも気付いてないが、無言で自分の財布からお金を取り、真原さんの机の上にのせ、ミヤシロ様の包装紙を撫でていた。

 私は真原さんに近づき、心を込めて頭を下げた。

 お姉様の味噌煎餅。大事に発送します。ありがとうございます。

「全然そんな深々頭下げんでもええから、局長もお金出さんで、なぁ福野……え」

 真原さんが福野さんの凶行に気付いた。私は無言で福野さんを指し、真原さんの机の上にある福野さんの支払いを示す。

「何、あ、福野が払った?」

 私は頷く。

「違いますよ。真原さんのお金ですそれ」

 福野さんはしれっと嘘をついた。言い方も何もかも平然としているので、初見だったら絶対分からないだろう。

「いらん嘘つくな。枯賀がお前さしてん」

「枯賀の見間違いの可能性があるかもしれない」

「ないわ。しかも多いわ。やめろ」

 真原さんはお金を福野さんに渡そうとするが、福野さんはおまんじゅうの包装紙を撫で続け、受け取ろうとしない。

「お前、全部やめろお前。金も、枯賀の撫でんのも」

「可愛がっている」

「枯賀も気分悪いやろ。自分のあげたもんそんな、何それ、撫で方」

「別に枯賀だからじゃないですよ。足が、短いじゃないですか、この子、ねえ、えへへ」

 福野さんは優しい目でミヤシロ様を見つめ、口角を上げた。

「神様やで相手」

「かわいい神様なんじゃないですか? 足も短いもんねぇ、うぅんてちてち」

 福野さんは饅頭の包装紙を眺めていた。話しかけてる。その間に富山局長がこっそりお金を真原さんの机の上に置こうとしていたので、私は指を指し続けた。

「局長もお金払うんやのうて福野なんとかしてくださいよ。これもう、なんらかの規定に反してますよ福野。この……薄気味悪い触り方」

「開いちゃお、開いたらもう大丈夫だから。もう真原くん来たしね。分けちゃおう。包装紙ね、福野くんにね、あげてね。うん」

 富山局長は福野さんから視線を逸らしつつお饅頭の箱を没収し、そのまま真原さんに渡した。

「え、なんです」

「綺麗に切らなきゃだから、枯賀さんから貰ったものを枯賀さんに切ってもらうのは違うから」

「自分で切ればええやないですか」

「僕がやると汚くなっちゃうし、破けたら福野くん……声出るでしょう……」

「僕も出しますけどォ? 僕も大きい声出るんですよォ」

 真原さんが大きく目を見開いた。

「そういう感じじゃないからねえ、福野くんねえ、ねえ」

「出しましょうか」

 福野さんが顔を上げた。

「絶対やめて」

 富山局長から表情が消える。

 何?

 富山局長がこの包装紙を汚く切ったら福野さんがどんな声を出す……?

 いつも何を断るでも、さりげなく精密機器に関する仕事をすり替えてくるでも、富山局長は柔らかく、ぬるっと打診するのに福野さんの発声を明確に拒否している。


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― 新着の感想 ―
「富山局長がこっそりお金を福野さんの机の上に置こうとしていたので、私は指を指し続けた。」 すみません、ここもしかして真原さんの机かなと。多く払いすぎた福野さんの分を戻そうとしてとかだったらすみません。…
「お姉様の優しさは病の発作に近く、「そうでなければいけない」という部分も滲んでいる」お姉様の優しさそういうのもあったんですね…。しんどいな…。 私も正直、自分も含めて大体の買う側はパトロンというわけで…
いつもの管理局の、いつもの光景に「こ、これこそが!この日常こそが幸せだーー!!」と、ガムよりも噛み締めて、牛よりも反芻しています。緩急の急流コースも大好きですが、日常パートも好き好き大好き超絶堪能が定…
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