第47話『冒険者登録』
冒険者協会で騒動を起こしたロアたちは、協会の代表に呼び出されることとなった。
思いがけずロアの実力を目の当たりにした三姉妹も、彼の正体や力に興味を抱き始める。
果たして、ロアたちは無事に身分証を手に入れることができるのか。
そして、森の外で始まる新たな生活は、いったいどのようなものになるのだろうか。
*
筋骨隆々の大男が集会所を出て行くと、一人の受付嬢が三姉妹に近づいた。
「三姉妹の皆様。代表の執務室まで、ご案内します……」
「あ……ありがとう。——もう場所は知ってるけどね」
リアは、どこか不機嫌そうな様子で答えた。
「久しぶりに代表の部屋に入れるね」
「何であんたはワクワクしてんの……」
リアとは対照的に、シエラは代表の執務室に入れることを喜んでいるようだった。
そんな能天気な彼女に、ミレイユは呆れた様子でため息をついた。
「ロアくん、行くよっ」
シエラは、ぼんやりと立ち尽くしているロアの手を引き、受付嬢の案内する方向へと歩き始めた。
こうして一行は、集会所の左右に設けられた階段を上り、二階中央の扉から従業員専用区画へと入っていった。
書類保管庫や会議室を通り過ぎると、やがて代表の執務室へとたどり着いた。
「こちらで、お待ちください」
「はーい」
「分かりました」
リアは気だるげに返事をし、ミレイユは丁寧に受付嬢に答えた。
代表の執務室は、奥行きのある縦長の部屋だった。
最奥には執務机が置かれ、その手前には、六人ほどが向かい合って座れる長机と長椅子が設けられている。
また、壁の上部には、歴代の集会所代表と思しき人物たちの肖像画が飾られていた。
一行は部屋に入ると、右側の長椅子に腰を下ろした。
奥からミレイユ、シエラ、ロア、リアの順に座り、フルムはミレイユの膝の上にちょこんと座らされている。
五人が執務室に入ってから五分ほど経った頃、筋骨隆々の大男がドンッ、ドンッ、と重い足音を響かせながら扉を開けた。
「三姉妹ィ! ——お前らには聞きたいことがいくつかあるが、まずはバルガスの件だッ!」
「何があったッ!」
大男は部屋に入るなり、語気を強めてそう言い放つと、ドカッ、と三姉妹の向かい側にある長椅子へ腰を下ろした。
その問いに、リアが勢いよく答える。
「アイツが先に絡んできたんだって! うちらはただその場に立ってただけっ!」
「もういい、バカは黙ってろ」
大男はリアを一蹴すると、落ち着いた様子で再び口を開いた。
「シエラ、何があって、ああなったんだぁ?」
リアは、今にも食ってかかりそうな勢いで大男を睨みつけた。
しかし、そんなことは気にも留めず、シエラは淡々と説明を始めた。
「私たちは、ヴェリスタンの外で出会ったこの二人の身分証を発行してもらうために、集会所へやって来た。私たち自身の依頼完了の報告も兼ねている。集会所に入ると、獣人の子どもがいると知った冒険者たちが、ぞろぞろと集まってきた。そこで、ロアくんが魔力で殺気を周囲に放ち、その気配に気圧された冒険者たちは足を止めた。けれど、その殺気を不快に思ったバルガスが、飲酒の邪魔をされたとイチャモンをつけて、リアの胸ぐらを掴もうとした。その瞬間、ロアくんがバルガスを蹴り飛ばした。その後は……」
「いや、もういい。大体分かった」
「はぁ〜……」
大男は額に手を当て、深いため息を吐いた。
「……じゃあ、お前らは自分からバルガスに喧嘩を売ったりしてねえんだな?」
「だから、そうやってさっきから言ってんじゃんッ! このハゲッ!」
「「——あ」」
「コイツ……」
シエラとミレイユは、リアが言ってはいけないことを口にしたのだと悟った。
そして、その直後に起こるであろう展開まで、まるで未来を予知したかのようにはっきりと予測できた。
大男は、リアの生意気な態度についに堪忍袋の緒を切らし、立ち上がった。
そのままリアのそばまで歩み寄ると、彼女の頭を鷲掴みにして、そのまま上へと持ち上げた。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!!!」
大男は丸太のような腕に血管を浮き立たせ、リアの頭をギリギリと締めつけた。
リアが降参の合図として、その太い腕をパンパンッと叩くと、大男はようやく手を離した。
解放されたリアは、そのまま床にうずくまり、頭を押さえて悶絶した。
「……ぁ……ぁあ……。頭が……あた……まが……」
大男は、床の上でゴロゴロと転がって痛がるリアを放っておき、シエラとミレイユに向き直った。
「分かった。バルガスの件はこっちで処理しとく」
「バルガスには、どんな処分が下されるんですか?」
「ん〜、降級処分かな。もし次、同じことやったら除名だけど——」
「でも、まあ……アイツにも色々あったんだよ……。お前らは知らねえだろうけどさ……」
「……それッ……でもッ……、アイツがッ……オカシイでしょッ……!!」
リアは床に倒れたまま頭を抱え、途切れ途切れの声で反論した。
「ああ、そうだ。だから降級処分にする。——悪いが、それで今回の件は許してやってくれ」
「私は問題ない。いいもの見れたし……」
「何だ——いいものって?」
「秘密」
「——そうかい」
シエラは、直接バルガスの件に巻き込まれたわけではないからか、あっさりと降級処分での手打ちを了承した。
それに、今回の騒動でシエラは何か得るものがあったらしく、むしろバルガスに感謝している節さえあった。
バルガスの件は片付いたものの、大男にはまだまだ聞きたいことがあるようだった。
「バルガスの件は片付いた。次は、三姉妹——お前らが拾ってきたガキ二人についてだ」
「まず、何者だ? 何で身分証がねえんだ?」
「——んあ? つーか、さっき壁の外で拾ってきたって言ったな。……じゃあ、何で門をくぐれたんだ? お前ら……まさか……」
シエラとミレイユは、もはや言い逃れできないと悟ったのか、静かに目を閉じた。
そして、リアはというと、先ほどまであれほど騒いでいたにもかかわらず、今は一言も喋らなかった。
「お前ら……普通に犯罪者じゃん……。逆にどうやって、ガキ二人を門衛にバレずに運び込んだんだ?」
「それはねぇーッ! ……むぐッ——」
リアが、ロアとフルムをどうやって街の中まで運び込んだのか、その手口を嬉々として説明しようとした。
しかし、シエラが慌ててその口を手で塞ぎ、発言を阻止した。
「はっ……(笑)。まあ、別にどうでもいいけど」
大男は鼻で笑うと、話を続けた。
「まず、お前ら、このガキ二人を冒険者登録させようって腹なんだろうが、保護者の同意がなけりゃ冒険者登録なんざできねえぞ?」
「つうか——お前ら、いくつだよ?」
「それは、私たちにも分からない」
シエラが答えた。
「何だ——こいつら、口が利けねえのか?」
「いや、フルムちゃんは言葉が分かるよ? ねっ、フルムちゃん——」
「なにー?」
「おお、こっちは喋れるんだな」
フルムはミレイユの膝の上でくつろぎながら、のんびりと答えた。
そこで、シエラがフルムに質問した。
「フルムちゃん、今、何歳?」
「はちッ!」
「フルムちゃんは八歳なんだ。じゃあ、ロアくんが何歳かは分かる?」
「う〜ん……じゅういち!」
「十一歳ね。……だそうです」
「ああ、歳は分かった。じゃあ、次は親だ」
大男の問いを受け、シエラは通訳するようにフルムへ尋ねた。
「フルムちゃん、お父さんとお母さんはいる?」
「いるよ!」
「どこにいるの?」
「わかんない……はなればなれになっちゃった……」
「そっか、そっか……」
フルムはしょんぼりとした様子で答えた。
その姿を見て、シエラは優しく頭を撫でて慰めた。
「こっちの獣人の娘については分かったが、こっちはどうなんだ? 今のところ、名前と年齢しか分かってねえけど——」
そう言って、大男はロアへ視線を向けた。
そこで、シエラがロアに話しかけた。
「ロアくん、お父さんとお母さんはいる?」
ロアは自分に話しかけられたのだと理解し、即座に星典を召喚した。
——シュンッ。
突然現れた魔導書に、大男は動揺を隠せなかった。
「——!? お前、魔導書なんか持ってんのか!?」
「消える魔導書なんか、生まれて初めて見たぞ……」
ロアは魔導書に向かって、何かを呟いた。
翻訳が済んだのか、ロアは魔導書をシエラに見せた。
「不明……分からないってさ」
「記憶喪失か何かか? 何でそんなに分からねえことばかりなんだよ! ——くそッ、イライラしてきた……」
「代表……落ち着いて……」
シエラは、まさか自分の言葉が火に油を注ぐことになるとは思いもしなかった。
「もういい、話になんねえ。受付の娘を呼んでくる」
そう言い放つと、代表は執務室を出て行ってしまった。
しかし、すぐに受付嬢を二人連れて戻ってきた。
そして、代表は開口一番に言った。
「冒険者登録はさせてやる。だが、そいつら二人の保護者は、三姉妹——お前らがなれ。お前ら、もう成人してんだろ」
三姉妹は現在十六歳。
このラグナヴェルト王政領では、十六歳から男女ともに法的な成人として扱われる。
「——じゃあ、それで」
リアは、ぶっきらぼうに答えた。
代表は執務室に戻ってきたものの、長椅子には座らず、部屋の最奥にある執務机へ向かい、その椅子に腰を下ろした。
その態度は、面倒な仕事はすべて受付嬢に任せると言わんばかりだった。
すると、受付嬢の一人が手続きを説明し始めた。
「こちらが冒険者登録申請書になります。氏名、年齢、種族、出身地、現住所、職業・得意分野、使用可能な技能・魔法、戦闘経験、身元保証人について、分かる範囲で構いませんので、ご記入ください」
「ロアくんの分は私が代わりに書くから、フルムちゃんの分はミレイユが書いて」
「分かった!」
シエラとミレイユは、それぞれ受付嬢からペンを受け取り、申請書への記入を始めた。
「出身地と現住所と職業は、空欄でいいとして——」
「うんうん……」
「この……使用可能な技能・魔法って項目——ちゃんと書かないとダメですか?」
「そうですね……。冒険者の情報は、依頼を受注する際や昇級審査の際にも参考資料として使用しますので、なるべく正確にご記入いただけると助かります」
「ん〜、じゃあ——ロアくん、使える魔法を見せて?」
ロアはシエラに名前を呼ばれると、彼女の顔を見てから魔導書へと視線を移した。
そして、掌を上に向け、水球を生成した。
——ポコ……ポコポコ……。
水球が浮かび上がると、ロアが口を開いた。
「フルム、水」
その言葉を聞いたフルムも、ロアと同じように掌を上に向け、水球を生成した。
「すごいッ! 二人とも魔法が使えるんだねッ!」
ミレイユが驚きの声を上げる一方、シエラは淡々と言った。
「使える魔法——全部見せて」
シエラは、まるで驚く様子もなく、あくまで冷静にそう告げた。
ロアは再び魔導書に目を向けると、水球を消失させた。
そして、今度は火球を生成した。
フルムもロアを真似て、火球を生成する。
さらにロアは、続けざまに蒼い炎の火球を生み出した。
フルムも同じように蒼い火球を生成する。
「——!? これって……上位属性魔法……?」
「おお……久しぶりにソレ見たな」
シエラは蒼い火球に驚き、目を離せずにいた一方、代表は懐かしいものでも見るように、その炎を眺めていた。
ロアは蒼い炎を消すと、次に氷の球を生成した。
フルムもロアの真似をして、氷の球を作り出す。
「……え? 二つ目の上位属性魔法……。信じられない……」
「二人とも、本当に凄いのねッ!」
ミレイユは感心した様子で、フルムの頭を優しく撫でた。
ロアは生成した氷の球を自ら砕き、ダイヤモンドダストのように霧散させた。
一方、フルムは氷の球を手の上に乗せ、ペロペロと舐め始めた。
シエラとミレイユは、これまでに披露された魔法の属性を申請書に書き込んでいった。
そこで、代表が口を開いた。
「お前、それで全部か?」
その問いを受け、ロアは両手の掌を上に向けた。
「——え!? まだ使える魔法があるの!?」
再び魔法を発動させようとするロアに、シエラは驚きの声を上げた。
ロアは左手の掌に球状に固めた土を、右手の掌には中心へと引き込むように渦巻く風を、それぞれ生成した。
「土属性と……こっちは風属性?」
「土と風だな。——お前、四元素全部使えんのかよ。すげえな」
「……凄い。そんな魔法使い——見たことない……」
シエラは驚きながらも、ロアが使った魔法を申請書に書き加えていく。
ロアは土の球を両手の間に浮かせたまま、さらに魔力を込めた。
すると、土の球は岩で構成された球へと変化した。
「これも……上位属性魔法……?」
「礫岩属性魔法だ。まさか、俺と同じ魔法が使えるとはな……。こいつは驚いた」
「礫岩属性魔法……」
シエラは放心したような表情で、申請書にその名を書き込んだ。
すると、受付嬢が遠慮がちに口を開いた。
「あ……あの、その項目はそれで大丈夫です。次は戦闘経験についてなのですが、戦闘経験はおありですか?」
そこへ、代表が口を挟んだ。
「そりゃ、戦闘経験はあるんだろうけど、それを証明できるような物は何か持ってるのか?」
そう問われると、ロアはすぐに魔導書へ視線を移し、自分の所持品である袋に手を当てた。
そして、長机の上の空中に、森で戦った漆黒の巨獣の生首を召喚した。
「ヒィィィィッ!!!」
「キャアアアアアアッ!!!」
「「「——!?!!?」」」
二人の受付嬢は、目の前に現れた巨獣の生首を見て悲鳴を上げ、慌てて壁際へと逃げた。
三姉妹も、その後頭部しか見えていなかったものの、漂う威圧感に気圧され、言葉を失っていた。
その中で、代表だけは心底驚いた様子で、ロアとフルムに問いかけた。
「——お前ら、カグロスを討伐したのか?」
ロアは代表の言葉に反応するように、魔導書へ向かって何かを呟いた。
——・——・・。
やがて、ロアはシエラに魔導書を見せた。
シエラは一瞬、目を見開いたものの、すぐに代表へと告げた。
「……二人で、倒したって」
「……マジかよ」
「アイツは、俺でもキツい相手だぞ……」
「倒したってのが本当だとすれば……等級は——白金以上にせざるを得んな……」
「白金!? 白金……」
「私たちより——等級、二つも上……」
「……まだ頭痛い……」
シエラとミレイユは、代表の言葉に動揺を隠せなかった。
その一方で、リアはまだ頭を押さえていた。
「もう、それしまっていいぞ」
代表にそう言われ、ロアはカグロスの頭を袋へとしまった。
「つうか、その袋も魔道具なんだな」
代表がそう呟いた途端、シエラは、カグロスの頭に気を取られるあまり、魔道具の存在を見落としていたことを思い出した。
そして、ロアがカグロスの頭をしまった麻袋へと、身を乗り出した。
「ロアくんッ! ちょっと見せてッ!」
魔導書だけでなく、収納の魔道具にまで興味を惹かれたらしい。
「じゃあ、私たちは身元保証人の欄に署名しようか。リアッ! 起きてッ!」
「……うん……」
リアは気怠げに起き上がると、再び長椅子に腰を下ろし、ペンを握って署名した。
その後、二人の受付嬢も平静を取り戻して席に着き、それぞれの申請書の確認を始めた。
「では、まずフルム様から。確認のため、申請書にご記入いただいた内容を読み上げます」
「お願いします」
ミレイユがそう答えると、受付嬢はフルムの申請書に目を落とした。
「氏名、フルム様。年齢、八歳。種族、獣人族。出身地・現住所、不明。職業・得意分野、なし。使用可能な技能・魔法、火属性魔法・水属性魔法・火焔属性魔法・氷結属性魔法。戦闘経験、カグロス討伐実績あり。身元保証人、ミレイユ・ロッシュ様、シエラ・アルヴェール様、リア・フェンリス様。——こちらの内容でよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
ミレイユが答えると、もう一人の受付嬢がロアの冒険者登録申請書を手に取った。
「では次に、ロア様の申請書の内容を読み上げます」
受付嬢は続けた。
「氏名、ロア様。年齢、十一歳。種族、真人種。出身地・現住所、不明。職業・得意分野、なし。使用可能な技能・魔法、火属性魔法・水属性魔法・風属性魔法・土属性魔法・火焔属性魔法・氷結属性魔法・礫岩属性魔法。戦闘経験、カグロス討伐実績あり。身元保証人、ミレイユ・ロッシュ様、シエラ・アルヴェール様、リア・フェンリス様。——こちらの内容でお間違いないでしょうか?」
「はい、間違いないです」
「では、お二人の登録申請を承りました。冒険者証の発行には少々お時間をいただきますので、発行が完了するまでの間は、こちらの鉄製章板をお使いください。それに関連して、発行する章板の等級なのですが——代表。等級は白金、英雄級でよろしいでしょうか?」
代表は椅子に深く腰掛けたまま、答えた。
「書類上はそれでいい。ただ、工房に製作を依頼するのはちょっと待ってくれ。俺が二人を白金等級に相応しいかどうか、模擬戦で判断する」
「えっ!? 模擬戦するの!?」
「……やったッ! 魔法が見れる!」
「私も、どんな風にいつも戦ってるのか見てみたかった!」
シエラとミレイユは、それぞれ期待をにじませた声で答えた。
すると、代表は椅子から立ち上がった。
「今から模擬戦をする。集会所の裏へ行くぞ。お前ら全員、ついて来い」
そう言い残し、代表は執務室を出て行った。
その背中を追いかけるように、五人も部屋を後にした。
代表の後を追って二階の従業員専用区画を出て、集会所内へ戻ると、代表は二階の受付スペースの真上にあたる場所で立ち止まっていた。
そして、大きく息を吸い込むと、集会所内に響き渡るほどの大声で叫んだ。
「今からッ! 白金等級冒険者の昇格試験を行うッ! 我こそは白金等級に相応しいと思う者は、全員参加しろッ! 場所は訓練場だッ! 見物したい奴も全員来いッ! 以上ッ!」
その声が響き渡ると、集会所内の喧騒が一気に静まり返った。
やがて、あちこちからざわざわと話し声が聞こえ始め、冒険者たちは一階の訓練場へと続く扉に向かって動き出した。
代表の後を追って訓練場へ向かう途中、リアが口を開いた。
「どうする? うちらも受けてみる?」
その問いに、シエラが答えた。
「——受けても、等級は上がらないよ」
ミレイユも、シエラに同意するように口を開いた。
「そうだね。私たちでは、まだまだ力不足だね。大人しく見物していよう」
そうして、五人は代表の後を追い、集会所裏の訓練場へと向かった。
*
白金等級への昇格試験として、代表とロア、フルムの模擬戦が行われることとなった。
集会所の訓練場には、腕に覚えのある冒険者たちが続々と集まり、白金等級の実力を目にしようと、期待に胸を膨らませていた。
しかし、彼らはまだ知らない。
これから目の当たりにするのが、白金等級の実力を測る試験などではなく、自分たちの常識を根底から覆す、圧倒的な力の差であることを。
果たして、代表とロア、フルムの模擬戦は、どのような結末を迎えるのか。




