39 サプライズパーティー
「お誕生日おめでとーッ!!!!!! 我が愛しのマイハニー!!!」
お父さんが帰ってきた。でっかい花束を持って。
「……お父さん、また愛が溢れてるよ……」
妹のツッコミに、お父さんが満面の笑みで答えた。
「愛さ! でも、俺の愛はもっともっと止まらないぞダイア! ダイアの誕生日にはもっと大きい花束を──」
父さんのことは一旦置いといて、お母さんへのプレゼントが皆から贈られる。
まずは俺。
「はいこれ、似合うと思って……どう?」
ピンク色のスターチスをあしらっているブロンズのブローチ。バイトのお給料全てはたいて(もちろん300万の返済分を残して全額だが)、チェリスカで買ってきたやつだ。お母さんは笑顔で受け取って「ありがとう」とにこやかに笑った。
「エル兄みたいに高価じゃないけど」
「……私たち二人で作ったの……」
弟妹が渡したのはアロマキャンドル。凄い、手造りなのが(少し粗はあるが)本当に凄い。俺もそういう系の方が良かったのかな? 涙をこらえながら2人に感謝したお母さん。とっても嬉しそうだ。だって今食べているのもレビュラとダイア(後兄様)が作ったものだから。
そして、まだ姉は帰ってこられそうに無いのらしいので、兄がプレゼントを最後に渡す。
「はい、母さん」
紙切れ、数枚。そこに書かれていた文字は……
「俺特製の『肩たたき券』だよー!」
兄さんが一番幼稚なんだけどどうして……? 兄上はこういう時だけは凄く真面目で本気なのに……まあ、肩たたき券も十分嬉しいとは思うけど。
「実はまだあるんだ!」
やっぱりか! 流石エンターテイナー、バルトロメウ兄さん! 渡したものはたくさんある、が最後に渡したものは何かが入った瓶だった。
「これさ、アルスフェイル最西端の島でしか採れない貴重な花なんだ。海に咲く花『フォームクイーン』って言ってね……母さんがここまで応援してくれなかったら、俺は海洋生物とか海流学とか学べていなかったから。母さんのおかげで、俺はここまで来られたんだ。お誕生日おめでとう。そしていつもありがとう、お母さん!」
お母さんは泣いた。笑顔で、とても嬉しそうに。それを見て、家族全員が涙を浮かべる。
お姉ちゃんも来られたらな……と思いながら食事の席に座ると、俺達と同じように泣いていたデルシャがか細い声で聞いてきた。
「私、ここに居ても良いのかな……空気壊しているって思ウ」
だって、とデルシャは言葉をつづける。
「だって私は家族でも何でも無い。家族って何だかも知らないのに、こうやって泣いて。でも、私知りたイ。思うの、ここに居れば分かるかもって……だから」
見たことも無い美しい笑顔。そう形容するのが一番ふさわしいだろう。目の前の愛を知らない怪盗はそんな顔をした。
「また、ここに来てもいイ?」
その笑顔に魅せられ、俺の鼓動が速くなる。可愛いや好き、美しいなんて、そんな方向の動悸では無い。彼女は、何か違った。愛を欲する心は、これほどまでに人間を輝かせるのかと感心して言葉が止まる。言おうとしていた言葉は、今から言う言葉に全て書き換えられてしまう。
「いつでも来て良いよ、デルシャ。俺が、そしてみんながお前を歓迎するさ」
そう言って俺はデルシャの頭を撫でた。
「あらあら! やっぱり私の見立て通り!」
「思い出すなぁ、ハニーとの出会いを」
俺の言葉に家がザワついた。父と母は微笑みながら俺達を見守り、兄は見世物を見ているかの如く、食事の場だというとも忘れてケラケラと笑った。
「……バルト兄とは大違い……」
その光景を見ながら兄の笑い声を聞き、無愛想な妹も歯を見せた。
そして最後に、爆弾を投下する天然弟。
「エル兄それってプロポーズ?」
「いやいやいや! えっ? 今のってプロポーズなの!? えっ、デデっ、デルシャ違うよ!? プロポーズじゃないよ!!」
「わわっ、分かってル! だだだだってあの弱味噌エルヒスタが私に釣り合うわけ無いじゃン!!!」
鼓動がはやくなって、体の中の血流が最大のスピードで駆け抜けていく。
そんな俺達を見て、俺達の家族はまたどっと笑った。
『エル君、“俺達”になってるよ~』
……、良いんだよ! 別に深い意味なんて無いっ!




