9 かみさまのつくり……いや待て、違うんだ
大阪の震度6弱の地震にて被害を負われた方に、少しでも早く復旧できるようお祈り申し上げます。
システムに色々思うことはあるが、それを言ってしまえばきりがない。
言い換えるならば「定時に閉まる銀行のATMの機械に、定時外でも開けろとでも言うのか」。
と、攻略サイトより引用。
どうやら攻略サイトには銀行マンがいるようで。お仕事お疲れ様です。
「勝っちゃったよ、オサム」
クリスが自分の頬をつねっているが、夢じゃないぞ。現実だ。
いや『ふりーわ』の世界だとしたら、ゲームか。いや、現実でお願いします。
微妙に苦労したんだから。これで実はゲームでしたとかだったら、泣くよ僕。
「あ、私のレベルが上がった」
「え? マジで?」
僕に絶望、再び。
なん、だと!? おかしくないそれ! 確かにグループと言うかチームと言うかそんな感じだったけどさ。
僕のレベル上がらないんだけど! 何これ何のバグ?
「オサムも上がったんでしょ?」
「うんともすんとも」
「……にんともかんとも? マジで?」
にんともかんともって、最近聞いたことないなーって。そうじゃない。
55倍のレベル差でも上がらないの? とかクリスから聞かれるが、悪いのは僕じゃない。
聞いても答えが分かるわけがない。
多分、不思議石版の『モノリス』さんあたりなら教えてくれそうだが。そうなると村か町かとにかくそういうところへ行かないとないだろうな。
「負けちゃったよ。もう完敗。というわけで仲間になるよー! あと村の襲撃もやめるよ! だから」
そういえば、絶望していた僕にも希望はあった。スライム、君だ!
仲間になってくれるだけじゃなくて、村の襲撃もやめてくれるとはいいスライムじゃないか!
「悪いモンスターじゃなくていいモンスターになるよ! オサムかみさま!」
そっか! いいモンスター……、っておい、最後のセリフが何かおかしくないか?
僕が聞き間違いかもしれないし、ほら、「オサムか、みさ、ま」とかよく分からないけど、実はスライム世界で敬称はそういう発音かもしれないし。そうだそうに違いない。
「仲間全員にテレパシーで襲撃中止と、かみさまがいらっしゃったことを伝えました!」
なんだかとんとん拍子に進んでいくけど、いや、かみさまってまさか。
クリスに確認しようと見ると、なんか泣いてる。村に何もなくてよかった! とのこと。
そうだよね。そっちは重要! たしかに重要だ!
「「「「リーダー! 全員集合しました! かみさまはどちらに!?」」」」」
スライムが……えーと、10くらいはカウントしたけど、いやもうやめよう。多いな。
「よく聞け! 我らが仲間よ! リーダーであるぼくは伝えた通り村の襲撃をとりやめ、今後いいモンスターとして、恐れ多くもかみさまの仲間を拝命した! よって我ら仲間もかみさまの眷属となり、いいモンスターとして、この混迷する世界をよりよきものにするために! 文句異存はあるか!?」
「「「「ありません、リーダー!」」」」
え? スライムのリーダーってそこまで凄い?
言葉遣いもさっきと妙に違うし、カリスマ? 軍隊形式? よく分からないけど、すごいや。
「よし! ならばかみさまがぼくに与えた言葉を伝えよう! 心して聞け! 『仲間に認めて欲しいのは確かに強さだ。だけど、それは武器のじゃない。ステータスでもない。そんなんじゃ計れない、心の強さだ!』」
……このセリフは黒歴史だな。恥ずかしい。人前で言えるセリフじゃない。
隣にいるクリスにいたっては、何かへんな目で見てくるし。
惚れたとかじゃない、と思うけど。ジト目ではないので、よしとしよう! 基本的に誰に対しても好感度は下げたくないので!
「「「「おおっ!」」」」
一瞬の沈黙の後、スライムたちがざわついた。何? だから僕の知らないところで何があるの?
「そうだ! 既にこの世界の伝説としてたどたどしく口伝されてきた、心……いや! 魂の強さをかみさまはその行動を賭してぼくに教え伝え下さった! 紹介しよう、オサムかみさまである!」
「「「「かみさま! ゴッド様! 我らの生きる伝説! オオオオオオオッ!」」」」
やっぱかみさまって神かー! ゴッドってスライム世界にも英語があるのかよ!
などと頭を両手でかきむしり苦悶してると。
「スライム神、オサム……、初心者さんレベル1なのに。なんか笑える……ぷっ」
「クリス、人事だと思ってるでしょ? あのねぇ」
何がツボにクリティカルヒットしたか分からないが、笑い出す隣の村娘。
笑ったり泣いたりと、感情豊か過ぎてついていけないが、未だにスライムたちの喧騒から気を逸らすにはいいかもしれないな。
「なお、隣にいる村娘は、神様には口だけしか勝てないのに張り合ってくるから、仕方なく神様がその慈愛で保護している村娘だ! 容姿も服装も神様には何もかも低すぎて釣り合わないのに何かと張り合う残念娘だ! だからみんな、残念な子だから優しく扱うように!」
「「「「はい!」」」」
「ぬあんですってえええええええ!」
村娘がご乱心だー! とクリスの叫びにスライムがざわつき始める。
しかし逃げ出しはしない。どうやってなだめる? お菓子か? いや、とりあえず様子見とか? と隣同士で相談しあっているが、それくらいしか動かない。
なるほど、これが本来のレベルというか実力差という奴か。
クリスも暴れたところで勝てる見込みはないので、声だけというやつだ。
質も量も負けているのでどうしようもあるまい。
「えーと、スラ……リーダーさん?」
「かみさま! ぼくに敬称など不要です! お気軽におよびください!」
スライムに背筋などはないが、なんだろうか。
ビシッと敬礼しているような、そんな感じがしている。
「じゃ、じゃあみんなにあだ名と言うか呼び名と言うか……つけてもいいかな?」
「……ぼくたちに、祝福をくださるというのですか!? 全員職業能力別に小隊編成! かみさまからの祝福に備えよ! はじめっ!」
リーダーの声に規律正しく、そしてすばやく移動するスライムたち。
マスゲームよりも美しく、そして乱れなど一切なく。
まさかどこぞの軍か? 軍なのか?
「これはオサムのせいでしょ」
「だってさあ、仲間とか友達なのにスライムAとかBとかじゃ呼びにくいだろうし」
「オサムかみさまなのに? どーんとしてればいいのに」
「クリスの言うような性格じゃないんだよ僕は」
人間2人は、とりあえず、その綺麗なマスゲームを見てるだけしか出来ないのだった。
ご意見ご感想、お待ちしております。
もうそろそろこちらの作品のストックがなくなってきました。
理由は明白。
①試験勉強 ②時間 ③体調不良(風邪が治らない) ④ネット環境がぶっ壊れたため
問題が多すぎるので解決に時間がかかってたのか……?
はははそんなばかな