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10 111匹のスライムさんたちと村へ行こう

試験続きと仕事続きでようやく再開。

死ねるかと思った。

無事に名前も付け終わったよ……。

まさかの111匹の名前付けには、僕も疲れたとしか言いようがない。


しかし、スライムってすごいんだな、というのが正直な感想だ。

個性どころか得意不得意も分かれていて、挙句の果てには魔術師とか騎士もいた。

あと忍者と侍も。「ござる」口調をスライムから聞いたときには……これ実は中の人いない? とか思った。


いませんでしたが。例えいたとしても、ここはいないと言い切る!


「ほら、オサム! さっさとレイン村に帰るわよ!」

地べたに胡坐かいてた僕を見下ろす村娘。

さっきまで幼子いや幼いスライムでお手玉とかしてたクリスに言われても、ねぇ。

今も頭にスライム乗せてるし。「くりすーあそんでー」とか足元でも言われてるぞー!

「……な、何よその目は。だっていい子たちじゃない! それにもうそろそろ日が暮れるのよ? この子たちをほおっておくのもよくないでしょ?」

それについては否定はしない。否定はしないが。

さっきまで村襲うって言ってた人、いやもといスライムですが。

そこの教われる予定だった村の人、いいんですか? そんなあっさり順応して?


いや、それともこれが、この世界の常識と言う奴か? ……いや、そもそも常識とは何だ!?


「ふう、常識って何だろうね」

「大変ね、アンタも。絶望したって顔で頭かきむしったり、やけにすっきりした顔で空見上げたり」

「いや、すっきりはしてないけど。うーん、常識って」

すっきりというよりは、諦めだよ? もう遠い空を見るしか仕方ないか、って感じで。


「神様! 今、常識とおっしゃいましたか! ま、まさかその言葉が出るとは」

「うおっ! いつの間に肩に? って知っているのかスラ伝!」

僕の右肩に、やけに漢字の漢と書いて『おとこ』! と読ませるような彫りの深い顔のスライムがうなっていた。

名前はスラ伝(でん)。物知りな漢……いやスライムだ。

「うむ。常識とは、の前に神様。リーダーからの伝言ですぞ。今日はどちらへ参りましょうか、と」

「レイン村へ行って、勉強かな」

「……なん、ですと」

驚愕の声。あ、やっぱり襲撃予定の村へ行くのはよくないですか? やっぱりですか?

「かみさま! スラ伝から聞きました! 勉強するって!」

「いつの間に! って聞いた? ってのも不思議だけど! 気配とか音とか色々なものがなかったよね!?」

足元にいつの間にか現れたスライムリーダーこと、名前はスラリーダー。シンプルイズベストネーミング。

そもそも僕の常識では、スライムとは、遅い、弱い、言語はない、のはずでは?

それを覆せるのは転生した奴くらいしかないと思うんですけど! ゆくゆく魔王だったり賢者だったりする奴。まさか、こいつらも……いやいやそんなまさかな!


後からスラ伝に常識について教えてもらうとしよう。本気で。


「これも全てかみさまの祝福あればこそ! ってかみさまってまだ勉強するの?」

「そりゃあ必要だよ……。いつも勉強さ。常識もないし。……ほら、クリスを見てみなよ」

こっそりと後ろにいるクリスを見る。

「そこで私はこう言ったのよ! 疲れてる女の子を歩かせるなんて人として失格よ! ってね!」

「わーい! わーい! クリスもっと投げてー!」

お手玉を再開したクリスが熱弁をふるっているが、スライムたちはお手玉をされるほうが好みのようだ。

だが、クリスの熱弁は止まってない。……僕のことを今のところ散々言ってるが、もうどうでもいいや。ほっとこう、そうしよう。

「あれにドヤ顔される僕の常識のなさ……。もう勉強したい、色々とがむしゃらに」

「うわあ……叩いてきましょうか?」

それはやめて、と頼んでおく。君らの攻撃力をクリスが受け止められるわけがない。

そして、スラリーダーとスラ伝に、レイン村に日暮れ前に到着するように出発することを伝えたのだった。


その後、2匹から伝えられた驚愕の事実。

え? スライムの足だと普通だと1時間かかる?

だが、今はどれだけ遅くても30分はかからない……。


あれ? ステータス的にも何かがおかしいような気がする。


気にしたら負けか? 負けだな! じゃ、のんびり行きましょう!

先頭は諜報部門筆頭スラニンジャー。そこから諜報部隊が部隊の周囲を把握する。

なお、彼の語尾はござるではない。ござるは別人。いや別スライム。

冷静、かつ必要最低限の言動。ただ、それは「自分、不器用なので」とのこと。

いや、それでもかっこいい、と褒めてます。


その情報を元に、進行スピードなどを決定する部隊の頭脳であり最強の司令塔スラリーダー。

さらにリーダーの前面に攻撃特化のスラウォーリアーや防御系のスラナイト。

そのすぐ後方。支援のスラマギ。回復部門スラメディ。


ここまで言えば分かるだろう。

もう彼らのパーティで世界平和に出来るんじゃない? というくらいレベルと言うか色々が高度。

彼らに教えてもらえれば、いっぱしの冒険者が出来そうな気がする。

「我が神よ。我らはまだまだ満足できませぬよ。ご教示頂いた魂の強さ、それを昇華しご覧頂くためにも!」

肩に乗るスラ伝が熱い。さすがは漢。熱いというか暑苦しい。ここだけ、世紀末とか男たちの戦いとかそんな感じになっている。異世界は異世界なんだけどそっち方面か……。

嫌いじゃないけど、この異世界でそれはちょっと……。変なフラグが成立して本当にそっち方面になったら生きていける自信がない。


時は世紀末! 荒れ果てた荒野の大地を、君は生き残れるか! とかそんな感じ。


まさか『ふりーわ』でもそんなことは……ないとは言い切れない。

何たって職業に「暗殺者」があって素手でも暗殺できるのが『ふりーわ』だから!


攻略サイトで実際に報告があった話だ。信じてもいいだろう。コブシ・しろうさんの投稿。

ただ、あの人の投稿は最後にアタタタタタタタタタタタっ! とか入れてくるからそこが困る。

お前はもう、攻略している……! とかも困る。

いい人なんだよ? 情報は全て正しいから。……本当にいい人なんだよ。


そんなことを考えながら高速移動。

スライム高速輸送部隊隊長スラカーゴ。でかい! 早い! 物静か。という三拍子揃ったスライムに乗って、僕とクリスは遠くを見ていた。


クリスは前のほうを見ているからきっと村のある方角なんだろうけど。


僕は……肩に乗ったスラ伝から、恐ろしいというかやられたというかやってしまったというか。

とにもかくにもそんな気分にさせられる話を聞いていたのだ。


全スライムに付与された2つのスキル。

『神の眷属』と『魂の絆』。


スラ伝に説明してもらったところ、とんでもない話になったので割愛する。

どんだけとんでもないかというと。

「まさか、あの伝説のスキルを見ることはできるとは……! わしも過去に聞いただけになるが『神の眷属』とは、その名の通りこの世界の神々に認められたものだけに与えられる、いわば神の祝福。その神の持つステータスの約1……割かパーセントかは忘れたが、現在の能力に上乗せされ効果は永久不滅。一説では、世間知らずのスプーンやフォーク、ナイフしか持ったことのない姫君がその祝福を受けた途端に、城の壁を蹴破り逃走。最終的には超有名な武道大会で優勝したとかなんとか。そんな御伽噺まであるのがこのスキル……! ちなみに今、わしはすこぶる体調がよく、頭まで冴え渡る! このスライム生に神が舞い降りた! というくらいに好調じゃ」


という話を延々と聞かされたいか? 僕は否定する。

なので、割愛して自分なりに要約して理解することにした。


『神の眷属』『魂の絆』についての詳細は僕は見なかった。僕は知らない。そう目を閉じ耳をふさごうそうしよう……。この部分の記憶については、捨てておこう。自己暗示自己暗示。


よし、これでどうにかなる! そう、僕の欲しいのは僕だけの靴。

その後は勉強。そして……死なずにログアウトできる場所を探す、というか日本に帰るんだ!


あ、神。あんたは殴る。



おまけ。オサムが見てしまったもの。

『神の眷属』:大いなる神の祝福を受けたものに与えられる称号でもある。

       全ステータスの上昇補正大。祝福を与えた神の最も能力の高いステータスの1%を

       さらにステータスに底上げする。

『魂の絆』:種族の異なるものと言葉ではなく魂で通じ合ったものの証。

      種族そのものに上昇補正。魂の位階の上昇を可能にする。

      通じ合ったものとチャット(テレパシー)での会話を可能にする。

ブクマ・評価ありがとうございます。

うーん。もっと文章構成というか、読みやすいように考えていかないと。




今回の豪雨での被害に遭われた方にいち早い何気ない日常が戻ってくることを切に願います。

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