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計画

 ‥‥百鬼が、やっとのことで『マーロン』に辿り着くと、店内では地獄が繰り広げられていた。


 「ちょっと! 樹里亜って誰よ?」


 森本家の次男の海には、激甘チャンの彼女の《小山日菜子》が、今日に限って何故か恋人を追い詰めている。海の左頬には爪で引っ掻かれた痕があり、目には殴られて出来た青アザまである。

 ‥‥その近くには、トバッチリを受けたであろう《セナ》こと室井雪之丞の残骸(死んでない)が。

 そして、そのまた近くでは何故か長男の烈と、3男である千夏司の親衛隊が揉めている。


 さっきまでは、自分の命を守るのに精一杯だった今の俺には、ハッキリ言って息子の尻拭いまでは出来る筈ないだろ?

 ‥‥‥なんだって店のドアを開けたら、ボコボコに殴られて倒れてるセナがいるんだ?


 百鬼はガタガタと震えて、カウンターに隠れている戸塚の元へと歩み寄った。


 それが‥‥戸塚は最初に起こった出来事から話し始めた。

 彼によると、あれから日菜子は室井から根掘り葉掘りと、カイの学生時代の女性関係を聞きだした後に何かを思い出したかのように、店を飛び出したというのだ。

 その直後に殴り込んで来たのが、千夏司ファンの女子高生達だったらしい。

 3男の千夏司は、父親の遺した物品のせいで命を狙われるようになり、知り合いの屋敷に隠した。

 だが、当然のことながら女子高生たちは、その主旨を知る筈もなく‥‥‥‥前から気に入らなかった《烈》に火の粉が飛んだという訳だ。


 それにしても、あの《海》は一体なんで日菜子を怒らしたのだろう? 百鬼は、恋人の戸塚の傍に寄り、聞き出した。

 こういう手合いには、全く慣れてない戸塚は泣きそうになりながらも喋り始めた。


 「なんか、またヒナちゃんが乗り込んできて、カイが浮気したって騒ぎ立てるんだ」


 戸塚によると、どうやら海は学生時代に付き合っていた彼女数人と、まだ付き合っていたらしく、一緒に寝てた時に他の女の名前を言ったらしい。


 アイツ、馬鹿だろ? なんで嫉妬深い日菜子の前で、寝言だからって他の女の名前言うなんて。それにしても、ジュリアにシヲリにカリンにモエ。なんで寝てんのに、そんなベラベラと喋るんだ?


 「それでカイのスマホで探り当てたら、無料通信のヤツで、出るわ出るわ! エッチっぽい画像にラブラブメールだろ。あと『何日が空いてるから夜に会おう』とか、ヒナちゃんが仕事で出張してる時に誘ってたみたい」


 ‥‥‥そら、日菜子に殴られるわ。

 それよりも君たち、ケンカならヨソで殺ってくれないか? チカは爺さん家に行っていないだんよ。


 だが、女子高生たちの怒りは収まらず、ウルサイと暴言を吐き、更に烈を威圧をかける。


 暴徒と化した、女どもが怒り暴れるその姿は‥‥まさに地獄絵図! 

 だが、こちらも百戦錬磨(?)の男。ちょっとやそっとじゃ引き下がらない!


 なんだって、ウルサイ? 店を壊す気かよ。こっちだってボランティアで店開けてんじゃねぇぞ! 出て行けー!!!


 大声で啖呵を切った百鬼は、力任せで日菜子と女子高生たちを外に追い出し、彼女たちは彼女たちで必死に扉にしがみつく。

 開けてほしい、せめてチカちゃんの声だけでも聞かせて。とか、チカちゃんの元気な姿が見たい。とか‥‥‥

 日向子に至っては、カイの首根っこに首輪を着けてやる! とか、犯罪的な言葉を投げ掛ける。


 百鬼は、それを無視するかのように双子を起こして、それから戸塚に伝えた。


 「そろそろ此処もヤバい、引っ越しだ!」




 一方、その頃。古賀沙織の母親の誕生日パーティに潜り込んでいた栗栖は、思い掛けない状況に出くわした。


 「何をするんだ、気持ち悪い!ホモかよ」


 《本田涼介》に扮した栗栖要は、いきなり自分の顔を触りまくる男の手を払い除けた。

 突然のことに、周りが驚きを隠せない。

 どうしたの? 沙織は心配そうに声を掛けてくる。古賀浩一郎は、さっき来たばかりのような顔で、栗栖らを見やった。


 「ううん。お爺ちゃん、なんでもないの。あっち行こうよ」


 栗栖は、沙織に支えられるようにして椅子に座らされた。

 大丈夫? という声に栗栖は、ただ頷くしかなかった。


 ‥‥‥ヤバいヤバい、アイツはヤバい‥‥‥


 あの時、確実にアイツは俺の整形跡を探っていた。沙織の話しでは、ヤツの名前は《多田智》衆議院議員《古賀浩一郎》の御用達の形成外科医らしい。とりあえずアイツには近付かない方がよさそうだ。

 栗栖が少し落ち着いたところで、沙織がある提案をしてきた。

 

 「ねぇ、涼介くん。ママがね、旅行に行こうかって話しをしてんの。それでね、彼氏も誘いなさいって」


 どうかな? と聞き返す沙織に、栗栖は閃いた。

 そうか、その手があった‥‥‥

 沙織は、嬉しそうに自分が行きたい候補地を次々と挙げる。ワイキキやプーケットにグアム島など。恋する彼女は、彼との恋の成就を信じて疑わない。


 ‥‥‥だが、それがいい。彼女が栗栖に恋焦がれる程、行動がしやすくなるからだ。

 ただし、裏切っていることがバレたら大変なこととなるが。


 「そうだな、グアムなんか良いんじゃないか?」


 それを聞いた沙織は、満面な笑顔で栗栖に抱きついた。可愛い水着を持ってくからね。と‥‥‥


 仕掛けるんだとしたら、その時だな。栗栖は、旅行当日を決行日にすることにした。

 アンティークショップ『マーロン』へようこそ。は、暫くお休みさせて頂き、次回からは《栗栖要》の過去編を書いていきます。これからも、よろしくお願い致します。



               飛来颯

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