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道化者‥‥‥④

 栗栖要が《木下涼介》として、招待された古賀麗華の誕生日パーティに百鬼は給仕係に扮して潜入していた。

 このパーティの主役は麗華本人なので、彼女好みのホスト絡みの男や給仕役が集められているから、1人くらい他が混じっても何ら違和感はない。

 彼女の隣にいたのが《恭介》という男で、かつての《本田留美子》の恋人だって話しらしいが‥‥‥それにしても女のカンは鋭いとは、よく言ったものだ。

 すっげぇ、ドストライク。俺の好みにドンピシャリだ! おっと、やべぇ。ヨダレが‥‥‥


 なのに、神様はなんて不公平なんだ。どんなにタイプな男が近寄って来ても、俺なんか見向きもしてくれない。

 それよりも。さっきから、チラホラとモーションかけてくる女がいるし‥‥‥と、百鬼はその時、見覚えのある顔を見つけた。

 スラリとした体躯に、名のあるブランド物のスーツに身を包んだ‥‥‥確か名前は。

 その時、遠くの方で《ライ》と、呼ぶ声が聴こえてきた。


 そうだ! ホストクラブ『SIREN』のNo.1の《ライ》だ。そういえば、いつもNo.2の《タクミ》が敵対視してたな。

 でも、なんでアイツが?

 百鬼は、こっそりと後をつける事にした。

 なぜだかイヤな予感がしたからだ。

 本来の目的から離れてしまうが、今は栗栖よりもライが何故〝ここにいるのか〟調べるのが先だ。

 

 そっと、足音を立てないように人混みを掻き分けながら、ライの後ろを尾行する。

 彼は、ホストクラブ『SIREN』でも特別な存在であった。

 なんていうか、他のホストとは格が違うと言えばいいのか、ガツガツしてないというか、とにかく身のこなし一つにしても優雅なのだ。

 No.2のタクミなんかは、足元も及ばないだろう。店長の藤浪でさえ、彼とは一線引いているのだが。

 まぁ、あの店長だしな‥‥‥



 「へっくしゅ!!」

 「店長。風邪ですか?」

 ホストクラブ『SIREN』では、ミーティングの為に副店長や主任などが集まっていた。

 「きっと、美人のネーチャンが俺の噂をしてるんだろうよ」

 そう言ってヘラヘラと笑う藤浪だが、彼の性格を知る周りの人間からは「また、やらかしたの」と、失笑する。

 なんでダメなんだろ? あんな〝等身大〟パネルなんて、画期的でイーじゃん?

 客寄せパンダでも、イーじゃんよ。どうせ、パネルだしさ。お前らも《ユウヤ》が戻ってくる方法を考えろよ!

 ‥‥‥ところで、店長。ホール主任が少し言いづらそうに喋る。

 「アレ、店の経費で落ちません」

 ‥‥‥え!? 嘘!!

 嘘じゃないです。アンタ、この前ライにも同じ事やって、パネルをへし折られたじゃないですか? 前回から学習してませんよね。

 ‥‥‥‥ゴメンナサイ。

 あ〜、じゃあ唯一のパネルを回収しに行かなくちゃあ。どうしよ?



 その頃。百鬼は、ライの後を尾行するも途中で撒かれてしまう。 

 一体、どういうことなんだ? さっきまでいたのに、白壁の角を曲がったところで見失ってしまったみたいだ。

 ヤバい! 早く見つけ出さないと。

 百鬼は、急いで追い掛けようと周りを見渡すと、不審な気配が渦巻いてるのに気付いた。 


 「どんな美女が、俺を尾けてんのかと思ったよ。アンタだったとはね、通名は《百鬼》だっけ?」


 パキラやベンジャミンなどの観葉植物が植られた後ろから姿を現したライは、幾人もの男たちを引き連れていた。 

 もうコイツは、俺の正体に気付いている?


 「本名は森本鉄郎、43才。アンティークショップの店主で、5人の養子持ち。確か、男が恋人なんだろ? 間違ってないかな」

 

 ‥‥‥合ってるよ。合ってるけど、どこで調べたんだ?

 すると、彼はニヤリと笑い答えてくれた。


 「アンタを嫌いな、お偉いさん方。大体、組織をなめ過ぎてんだよ。ボスから命令を下されなきゃ、なんで俺がこんな面倒臭い話しをしなければならないんだ?」


 どういうことだ? ボスって、もしかして‥‥


 「藤浪さん?」

 「違う!!」


 間髪入れずに、言い返すライに納得する。きっと今頃、あの人はクシャミをしているところだろう。



 「へっぶし」

 またクシャミして夏風邪だろ? 病院行けよ。

 ‥‥‥誰にも心配してくれない、藤浪の心は壊れそうだったという。

 ああ、こんな時には可愛い女の子に慰めてもらいたいな〜。

 藤波はカードケースから、キャバクラのネーチャンの名刺を探り始めた。

 


 「なぁ。この前、店に刑事が来て捕物があっただろ? 逃げられたみたいだけど」


 それは前、ホストクラブ『SIREN』で起きた事柄である。百鬼が偶然見つけた麻薬を、それをダシに刑事である《久保田》をおびき出すことにした。

 ところが、ここで誤算が生じた。

 犬居が現れたのだ。ヤツは、久保田の先輩刑事であり相棒だが、前から久保田のことを怪しんでいたみたいだ。

 ところがヤツときたら、久保田を捕まえるどころか攻撃されて気失いやがってた。


 「せっかく、通報して捕まえさせようと思ったのに、とんだ茶番劇だったな」


 ‥‥‥どうりで、タイミングよく犬居が現れたわたけだ。でなければ、一直線にロッカールームに向かう筈がない。


 「でもね、百鬼。元はと言えば、お前が一番悪いんだよ? 〝魔女の鉤爪〟の存在を隠し通せる訳がないのに」


 運び屋の女が死んだのは可哀想だが、アンタがアレを独り占めにしようとしたのが悪いのさ!


 いきなり訳の分からないことを言われて、完全に百鬼の思考は停止した。


 「何を言ってるんだ? そこまで知ってるんだったら、アレが存在してはいけない代物だって!」


 そんなの当たり前だろ? 考え方についてはアンタと同意見。だけど、こっちもボスの命令なんだ。それとアンタも連れてくるようにね‥‥‥


 

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