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チカとカナ‥‥‥中編

 「チカの部屋で、何してんだよ!」


 え‥‥そんなことを言われても、俺は何してんだろ? 慌てる百鬼。

 それもその筈、ゲイの彼が少年の部屋で手に持ってるのは、なぜかボクサーパンツ。

 いや、これは別に‥‥‥それは、そういう意味じゃあ。

 許さん! 烈と海が、百鬼を押さえ付けにかかった! だから、違うんだってば。

 そう言っても、今までの所業を見れば一目瞭然である。

 嘘付け! 嘘じゃないってば! そんな押し問答をしていると、外から別の声が聞こえてきた。


 「カイ 、カイ! ストーカーを捕まえたよ。早く来て」

 

 外から聞こえた声。それは、海の彼女の《小山日菜子》だった。

 自分で、ストーカーを取っ捕まえたって言って、違和感がないのだろうか?

 アイツだって、俺らからすれば完全にストーカーである。なのに、海のヤツとくれば‥‥‥


 「日菜子さん、でかした! 今からそっち行くから、ふん縛っといて」


 わかった。と、どこから取り出したか知らんが、締め縄を用意してやがった。

 しかも、「観念しろ、このホモ野郎」という罵声付きで。


 え? もしかして、何気に俺に喧嘩売ってる?

 俺、ホモですけど何か?


 怒りを抑える百鬼。そんな養父を咎めるのをやめて階段を下りる息子たちに続き、彼らに付いてストーカーの顔とやらを拝みに行く。だが‥‥‥

 あれ? なんだかオカシイなぁ、何となくっていうか思いっきり見知った顔なんですが?

 それは、百鬼と一緒に働いていた『SIREN』の従業員でホストでもある、セナである。


 「あっ、お前はセナ! なんだってこんな場所にいるんだ? まさか、お前が千夏司を付け狙っていた輩なのか!」


 絶対にそうだよ! と言い張る日菜子に対し、双子の様子がオカシイ。どうしたんだ、お前たち?


 「いや、なんつっかストーカーにしてみれば、ショボイっつか‥‥‥確か、お前は中学校の同級生の室井雪之丞だよな?」と海が言えば。


 「そうだよ、俺と同じクラスの《ムロ》だよ。醤油醸造の跡取り息子の‥‥なんか垢抜けたけどさ」と、これは烈。


 それは、以前住んでた土地での話だろう。当時は海の近くに住んでいたので、魚が旨い場所ではあったが‥‥‥今は、俺が独身の頃にいた場所に舞い戻っているのだが。

 それにしても、スゲー名前だな。


 一体これはどういうことか、説明してくれよ? こんなんじゃ全然わからないだろ。 まず、なんで俺の家の前をウロついてたのか教えてくれないか?


 「‥‥‥俺は、ここがユウヤさんの家だとは知らなかったんだ。ただ、烈の家だと思ったから」


 ちなみに《ユウヤ》とは、在籍してたホストクラブ『SIREN』での百鬼の源氏名である。

 それよりアンタこそ、烈とどういう関係なんだよ? 海とも親しそうだしさ。

 いきなりのセナの質問に戸惑った。ここは、どう説明すればいいのか‥‥‥お母さん? いやいや、ここでは母親的役割であるし、圭吾の妻みたいな感じではあるが‥‥‥


 「俺たちのオヤジだよ」


 いやいや、ちょっと待て!! 俺は、そんなムサいイメージでは決してないんだ! せめて〝お父さま〟くらいにしてくれ!


 でも、ユウヤさんって28じゃあ‥‥‥え? 44ってサバ読みすぎでしょ?


 違う! 俺は遅生まれだから43なの! 


 「そんなことは、ドーでもいい! それよりも、室井がなんでこんな所にいるんだよ。見合いするって噂きいたけど?」


 そう海が言えば、締め縄で室井を縛り付けていた日菜子の眉間に、微かな青筋が立った。


 「はっ! まさか、アンタが狙ってたのは、チカちゃんじゃなくて‥‥カイ?」


 違うよ! 弱腰で訴える室井の首に、日菜子の指が掛かろうとしていた。

 じゃあ、どういうことなのよ! 日菜子の問いに室井の視線は、烈に釘付けだった。


 「俺がどんなに想ってても、男だからってだけでフラレて、中学卒業したらコツ然と居なくなってさ‥‥‥つい最近では、俺に政略結婚の話しが持ち上がって」


 俺は、玉砕覚悟で上京してきたんだ! これを頼りに‥‥‥と、取り出したるは『現役探偵監修〝彼氏追跡〟アプリ』‥‥‥思いっきし身に覚えがある日菜子は、目をパチクリさせた。


 へ〜、世の中には便利な物があるんだな。百鬼が関心してるこの様子では、自分もコレで探し出された事に気付いてない様子。


 うるさいよ! その時、蒼と紅を片方づつの腕に乗せた戸塚が、家の中から現れた。

 2人の赤ん坊の手には、ゲイバー『アマリリス』のチーママ・リンダお手製のテディベア‥‥今ではスッカリお気に入りとなった、クマちゃんのぬいぐるみを抱きしめている。


 一体なにがあったの? あれ、ヒナちゃん何してんの、殺人検証?


 気の抜けた話し声に、日菜子の戦意は喪失。もう殺る気は失せたみたいです。


 「あっ、室井くん。久しぶりだね、なんか垢抜けて格好良くなっちゃったんだね」


 え? 俺が知らないのに、なんで圭吾が知ってるんだ? と百鬼が尋ねると、戸塚に何言ってんだよ。と叱咤される。


 「何言ってんの。前の土地に居た時に、よく室井くんに、醤油貰ってたじゃないか。ほら、いつも常備してただろ? 桃醤油」


 あ〜、あのフルーティーで煮込みでも、焼肉のタレにも使える美味しいヤツね。なぜか、いつもウチにあったんだよな〜、でもなんで圭吾が知ってんの? 俺は、初耳よ。


 だって、ウチの中を覗き見してたんだもん。一瞬、泥棒だと思って声を掛けたら、急に桃醤油の一升瓶を渡して「烈くんのクラスメイトの室井です」って、友達だったら中に入ればいいのにね〜。


 ‥‥‥‥その言葉に、戸塚以外の全員が絶句。今の今まで、犬居ら警察に捕まらないようにするのに懸命で、まさかこんな近くに小さい危機があったとは‥‥‥

 でも、あの《室井醤油》の桃醤油は絶品だった。


 「ところでさ、何の騒ぎだったのよ」


 そうだ! 圭吾聞いてくれよ。千夏司が大切な物を隠すのは、どこだと思う?


 「そうだな〜」




 ‥‥一方その頃、栗栖は千夏司を連れて《相楽》の別荘へと向かっていた。

 黄色の外国産。前乗ってた外車は右ハンドルだったので、心配したが左ハンドルでも乗り心地は悪くないみたいだ。

 

 


 「ところで、千夏司。これから行く相楽さんって、どんな人なんだ


 栗栖の問いに、ペロペロキャンディを舐めてた千夏司が、舐めるのやめた。


 「ん とね、血の繋がらない僕たちを本当の孫みたいに、可愛がってくれるんだ。今は、仕事が忙しくって行けなかったんだけど。夏は皆で花火やったり、スイカ割りやったり、バーベキューやったり」


 さっきから聞けば聞くほど、食べる話ばかりである‥‥‥千夏司だけをその家に置いとくのは、それなりの理由がある筈なのだが‥‥‥

 でも、一緒に働いたがコイツだけは、裏の仕事をさせてないみたいだし、それよりも、コイツをなぜ隠す必要があるのか?


 「そういえば、なんで千夏司はアイツらと一緒にいるんだ。親はどこ行った?」


 すると今度は、急に黙り込んだ。やはり、何か訳ありなのだろう。


 僕ん家はね、父ちゃんと2人暮らしでね。と千夏司はポツリポツリと喋り始めた。


 「父ちゃんがね、言うんだ。〝父ちゃんは、しばらく遠くへ行かなくちゃならないんだ。だから千夏司はその間、父ちゃんの友達の森本のおじちゃんの所へ行くんだよ〟って」


 でもね。いつまで待っても、父ちゃん迎えに来てくれないんだ‥‥‥


 それを聞いた栗栖は、黙った。

 百鬼のオッサンが、すでにカタギの仕事じゃなく、そんな奴に預ける自体すでにマトモな職に就いてないという事だ。

 もしかしたら、もう死んでるかもしれない。

 ならば、他人の家に行くということは、これから千夏司に何かが起きるからということだ。

 そして、それに首を突っ込んで栗栖自分も。


 その時、ドンッと大きな音とともに黄色い車に、他の大きい車体がブツけてきた!!


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