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勇者よ、それがお前が望んだことなのか?  作者: 安藤昌益


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考えておくよ、4度目があれば。

 魔王ツヨノマは、パーティーのメンバー全員が血を流して倒れているのを確認して、最後の力を振り絞って上半身を起こした。片腕、両足が半ばからなく、残った体は切り刻まれているといってもいいほど大きな傷で覆われいた。もう魔力も、体力もほぼ尽きていた。それでも、回復又は治癒魔法、応急手当をされれば何とか持ち堪え、何とか生き延びることもできたかもしれないが、それを期待することは100%できなかった。

「もう完全に死ぬな。」

と思った。喉の奥から絞り出すように、

「勇者よ。お前に2度敗れた・・・いや、お前から見れば4回我を倒したわけだな。」

と語りかけた。

「ああ、そうなるかな?俺がこの世界、3回目の人生でやったことを非難したいか?」

と彼は逆に質問してきた。その姿は、30年以上たつのに、かつて自分を倒した時の勇者の姿そのままだった。

「別に・・・。亜人達を虐待した・・・お前の気持ちは理解できるさ。わしも、わしらしくもないことをしたものだと思っておる。つい、復活して一人で、力がない、心細かった時に、あやつらに出会って情がわいたせいもあるな。最後にこいつらに、役立たずの魔王と罵られたがな・・・、まあ、それも恨みはせん。最後に一つだけ問う、勇者よ。」

「なんだ?」

「お前は本当にこれで良かったと思っておるのか?まだ他に方法があった、とは思っておらぬのか?」

 その問いに、しばらく勇者は答えなかった。

「もうだめか。」

 意識が遠のき始めた時、

「ああ、そうだな。4回目があれば考えてみよう。」

と彼は答えた。

「そうか・・・。それが見られずに残念だ。」

 その魔王の言葉は声にはならなかった。


「どうしたの?勇者様?2人っきりで話がしたいだなんて?愛の告白かしら~?」

 ハイエルフのスン・インは、思いっきり媚びたような、愛らしい笑顔を、勇者センシュウ・イチジツに向けた。エルフの女性としては長身で、胸も大きく、尻もほどほどに大きい、肉惑系の魅力と色気を漂わせながらも、清楚な印象も与える、見事な銀髪の魔導士兼弓手である。

 整った顔立ちで誠実そうだが、やや地味な感じであり、やや長身で黒髪の人間で、勇者である、筋肉は鍛えられているという感じではあるがマッチョでも、ガタイがでかいということはなく、勇者といわれなければ、ごく普通の若者にみえてしまう、というのが勇者センシュウ・イチジツだった。その彼は、彼女の笑顔にちょっとびくっとした。

「相変わらずきれいだし、可愛いな。」

と思った。その顔が歪み、

「卑しい人間を好きになったと思っていたの?嫌で嫌で仕方がなかったのよ。」

と嫌悪感丸出しに、死にゆく彼の前で罵ったことは鮮明に覚えていた。

「それでも最初は、その寸前までこいつに想いをよせていたからな。どういうわけか、こういう時は何度でもそうなるんだよな。」

と心の中でため息交じりにしみじみと思った。が、それはほんの一瞬だった。単に、彼女の言葉にドキッとして言葉が一瞬詰まった、というようにしか見えなかった。彼女には、そうだった。

「実はそうなんだ。スン、前から好きだった。」

と彼が熱い想いを吐き出すように言った、と思われるように彼はその言葉を口にした。半ば、それは自然体でもあったが。

「へ?」

 彼女はいかにも困った、という顔をした、ほんの一瞬だったが。それを目ざとく見つけ、彼は彼女が困っていることを楽しんでいた。

「わ・・・わ、私も・・・お。同じよ。でも・・・、今は魔王を倒すことが・・・どうなるかわからないし、それに今は集中する時で・・・。」

 彼女はしどろもどろになりながらも、今は魔王討伐の大事な時だから、という理由でこの状況を乗り切ろうとした。

「大丈夫だよ。魔王は確実に倒す、倒せる。もう、一度奴を倒しているからね、私は。」

「へ?」

 彼の言葉に、彼女は戸惑った。彼の顔を見つめた。そこにははったりを言っているのではなく、確固とした自信がみなぎっているのが感じ取られた。

「何を言っているのよ?」

と心の中で彼女は叫んでいた。

「本当は一度ではなく4度だけどね。」

と彼は心の中で舌をぺろりとだした。

「私は魔王を確実に倒す。そして・・・。」

とわざと言葉を切った。

「倒した後?」

 それは彼女も知っている、それは現実に見たことではなく、彼女が、彼女達が考えている未来である、予定であるが。彼は、厳しい表情になった、わざとである、こうした方がいいと考えたからだ。ゆっくりと口を開いた。

「魔王を倒した後、私と君はパーティーの仲間に殺される。30年後に私は転生して、人間とエルフが、亜人達から虐待そけている世界を見たんだ。私は、その世界をぶっ壊して、人間とエルフを解放した。でも、その未来には君はいない。私は・・・君とともにいたかった・・・その想いが私を死に戻りの転生を、前世の記憶をもったまま、させたんだ・・・と思う。二人で、未来を変えよう。」

と彼は彼女の両手を自分の両手で握って、顔を近づけて囁いた。

「そ、そんな・・・馬鹿な。」

 つい彼女は本音を漏らした。

 彼女は、勇者パーティ―の他のメンバー達、亜人達、と共謀して、魔王討伐後に勇者を殺し、卑しい人間達を支配することを約束しているのである。自分が殺される話は当然、そこにはなかった。


「ほ、本当なの?」

 戸惑った彼女は彼の手を握り返して、正面から彼を見つめて、舌を伸ばせば彼の唇を嘗められる距離で、彼の息を感じながら質問した。

 彼は、心の中で、まずはうまくいった、と舌なめずりをした。

「本当は、そこで殺されるのは俺一人だけどな。お前は、死にかける俺をあざ笑ったんだよ。」

と心の中で冷たく言い放った。

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