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それからは、俺の軽い質問タイムだ。
思惑がばれたのが気恥ずかしかったのか、小学生は素直な物だった。
「何かしら情報が欲しいなーとか思って声をかけて来たね?」
「……そんなことは、なくもないけど。なにか直接戦ったならライラさんの話が聞けるんじゃないかなーと思って」
「あわよくば彼女の敵を取ってやろうと?」
「そ、そこまでは!……ちょっとは思ってましたすいません」
「正直でよろしい」
深々と頷いく。これでだいたいの事情は察した。
大会に出てきていると言う時点で、彼女も上位ランカーの一人だ。小学生とはいえネット初心者というわけでもあるまい。
危険を冒してまで接触してきたからには何かあるかと思ったが……やはりそう言う事か。
好奇心は、冒険をさせてしまうものである。
ただ、この小学生に敵意を持たれて二人きりと言う状況は、ものすごくよろしくない様に思われた。
そこで一つ俺は考えた。
ここは見ず知らずの小学生から敵視される理由を消しておくために、捨て身の戦法をとってみようじゃないかと。
俺は携帯を取り出すと、さっそくメールを打った。相手はもちろん新しく登録したばかりのアドレスへだ。
まぁ俺だって早々に呼び出されたし、似たような事をしても罰は当たるまい。
ピロリンと初期設定のメール音が響き、送信完了。
まぁダメもとである事には変わりないけれど、こんなことをしてみたよというアピールが大切だ。
「……何をやってるんですか?」
突然目の前でメールを打ちだした俺に若干怪訝な表情だった小学生だったが、俺の台詞を聞いて豹変した。
「いや、そのアイドルを呼んでみようかなーと思って」
「ホントに!!!!うそでしょ!!!!」
頬をリンゴのように真っ赤にするほど興奮して、小学生は飛び出してきた。
人目を引いているからやめてください。ただでさえ色々変な目で見られそうなのに。
「……ここは喫茶店だ。もう少し声を落とそう」
「……ご、ごめんなさい」
どれだけ人気なんだあのアイドルさん。俺は少しばかり甘く見ていたみたいだ。
「で、でもそんなに期待しないでよ? たぶん来ないと思うし」
「そ、そうですよね! アイドルがそんなに簡単に来てくれるわけないし!」
メールの文面は『例のゲームのことで相談したいことがあるので、会える時間が取れませんか?』的な物だった。正直このメールは意味がないだろうと俺はそう思っていたんだけど……。
「うおっと」
ピロリン♪
さっそく携帯が鳴る。
何事かと思ってもう一度確認すると、普通にメールの返事が届いていて俺が驚いてしまった。
「……」
「ど、どうでしたか?」
そわそわ落ち着きなく、サバンナで夜中にうろつく肉食獣の様な目で俺を見る小学生に俺はメールの内容を伝える。その際、文面を彼女の前に突き出しながらである。
「……今すぐ行くから待ってなさいって」
「――――! ふにゃぁ……」
「うおっと! マジか! しっかりしろ!」
そう伝えると、小学生は興奮のあまり気絶していた。
犯罪者っぽい視線を喫茶店のマスターにむけられている気がする。
被害妄想かもしれないが、切り抜けなければまずい! 今すぐ何か手打たなければ!
「……すいません! おしぼり一つ、いや二つもらえませんか!」
俺は慌ててソファーに小学生を楽になる様に寝かせると、改めて無実を訴える注文をする。
一つは小学生の熱を冷ます用。もう一つは……俺の脂汗を拭く用だ。




