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異世界姫滞在記  作者: いぬがさき
第7章 開戦

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大地の爪

攻撃を指揮するオークリーダーの号令のもと、オーク達は再び投擲物を構え始める


(ギリギリ間に合いそうにない・・・!)


砂霧を抜けた優太とアリスはトップスピードで駆けていくが、このままだとオーク群到達までのタイミングが危うい



(少しでも遅らせれば・・・そうだ!)


危機的状況を前に火事場の馬鹿力か、あるいは相手を切り崩す鍛錬を愚直に続けている成果か


土壇場で優太は閃く



オーク群まで残り数百メートル


お互い肉眼で捉えられる距離


オーク達は投擲の構えを完了させる寸前


タイミングは今!



「ミーシャ!翔んでくれ!」


(っ!分かった!)



ー ドンッ! ー


優太が云えるや否や、ミーシャは折り畳んでいた翼を広げ、大きく羽ばたくのと同時に大地を蹴り、跳躍の如く大空へと翔び立つ


更に大気を蹴り昇り、瞬く間に地上から百メートルほどの上空まで達した



一方、追撃の準備が完了しつつあり、いざ攻撃の号令が出んとする矢先、突撃してくる敵部隊の、その内の一騎が突然の行動をとるのを、オーク群は目にした


いや、してしまった



通常でいえば、一騎など取るに足らない存在であり、そのまま正面から突撃してくる敵のみを注視すれば良い


だが、オークはもちろん、オークより知能が多少優れ、攻撃を指揮する能力があるオークリーダーでも魔物に相違なく、その本質は他者の生命を脅かし奪う存在である


その為、部隊という群れから外れた一騎の獲物を、狩猟本能的に目で追ってしまったのは仕方ない事かもしれない



突撃してくる敵からオークリーダーが目を離した時間は僅か数秒である


しかし、その数秒の隙が致命的であった



オークリーダーは我に返り、突撃してくる敵へと視線を慌てて戻す


しかし、先頭を疾走る雪華狼に騎乗する騎士は既に百メートルを切っており、他の敵達も余裕のない距離まで迫ってきていた


迎撃の指示を出そうにも、他のオーク達は未だ上空の敵を目で追っていたり、上に向けて投擲物を構え直したりと、隊列や構えが乱れており、集団戦の統率は取れそうにない



「グオォオオオン!」


オークリーダーは集団での迎撃を諦め、各々で迎撃するよう号令を出し、自らも迎撃体勢を取る


そして、両軍激突ーー



「ゴガァアアア!」


ー ブォオオオン! ー


ー ザシュッ! ー


「グゴォッ」



真っ先にオーク群に到達したリリとアリスは、迎撃してきたオークのフルスイングを掻い潜り、突撃の勢いのまま、返しに愛剣で片足を斬り飛ばす


バランスを崩したオークが地面に沈むのを横目で確認したリリとアリスは鋭く旋回し、次いで、続いて突撃してくる近衛騎士達を迎撃しようとする別のオークの背後から強襲した


オーク群が混乱する中、重火器による軍用車両の後方支援を受けながら、近衛騎士達が雪崩込む



ー ドガガガガガガ! ー


並の物体なら原型がなくなる程の銃弾の嵐も、オークには致命傷とならない


しかし、その場に縫い付ける事は可能であり、銃弾の雨が止んだタイミングでアリス、近衛騎士達がオークへ斬り込んでいく



ー ズパァンッ! ー


「グッ・・・」


絶命するまではいかないものの、突撃の勢いを上乗せした斬撃はオーク達の手足を斬り飛ばし、無力化した



『オーク達はほぼ無力化した!皆のもの、時間がない、押し通るぞ!』


オーク群がほぼ壊滅状態となっているのを視認したアリスは、これ以上の追い打ちをかけず、目的地へと進むよう伝達する



魔界の門まで残り僅かであるが、数百メートル先には馬と牛のような頭部をした魔物が門番のように立ち塞がっており、更に門近くまでいけば、もっと強力な魔物がいるだろう


ここで時間を取る訳にはいかない


先の戦いで脱落した軍用車両1台、8名を欠いて22名となった有志隊は、作戦を遂行する為に再度駆け始めた

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