最後の日常
ー ジリリリリリリリリ! ー
「んん・・・」
部屋に目覚まし時計のアラームが鳴り響き、音につられて優太が目を覚ます。
「はあ・・・」
頭が覚醒するより先に彼は溜め息をついた。
せっかく白騎士の本名を知るチャンスだったのに起こされてしまい、聞き取る事が叶わなかったのだ。
白騎士の夢を見るなど予想できるものでないから仕方ない事なのだが、それでも目覚まし機能を設定した事を後悔する。
「・・・ん?・・・ああっ!」
時計を恨めしく眺めていた優太であったが、頭が覚醒するにつれ、何故目覚ましを設定したのか思い出し、慌てて時刻を確認した。
時計の針は、今から準備すればなんとか学校に間に合う時刻を指している。
「ふう。白騎士の名前を聞き逃した上に、連休明け初日から遅刻したら目も当てられないな。」
優太は急いで制服に着替えると1階へ降りる。
「ユータ様、おはようございます。」
「あ!パパ!おはよう!」
リビングには雪城家に居候中である優太と同い年の銀髪の少女と、小学生高学年くらいの銀髪の少女が朝食の準備をしていた。
「ちょうど出来上がったところですので、お座り下さい。」
「私も手伝ったんだよ!えらい?」
「おはよう、リリ。ありがとう。おう、偉いぞ・・・え?」
ベストなタイミングで朝食を用意してくれた大きい方の銀髪少女にお礼を言い、小さい方の銀髪少女を褒める。
が、そこで違和感に気付く。
この小さい子は誰だと。
「君は・・・?いや、パパ・・・?あっ!」
しかし、すぐに答えは導き出た。
優太をパパと呼ぶ者は1人しかいない。
「もしかしてミーシャ、か?」
「そうだよ、パパ!」
彼の問いかけに、小さい方の銀髪少女は元気よく笑顔で返事する。
「彼女は幼くとも天馬ですので。」
リリが微笑み、ミーシャの頭を撫でながら説明する。
聖獣には階級があり、階級が高いほど強大である。
雪華狼も上位の階級に位置するが、天馬はより上位に位置しており、たとえ子どもであっても、膨大な魔力、並外れた戦闘力を持っているのだという。
「それ故、上位階級の中には傲り高ぶる輩もおりますが、ミーシャちゃんはまだ幼く、しかもユータ様の使い魔ですので、しっかりと教育して頂ければ立派なペガサスとなりましょう。」
ミーシャちゃんの将来の為にも正しく在って下さいね。
暗にプレッシャーを掛けられた優太は、苦笑しながらも、もちろんだと頷く。
「それにしても、リリはミーシャと既に仲良しなんだな。」
「はい、ユータ様が起きられるまでに、たくさんお話しましたし、それに同じ使い魔仲間なので。」
そう言って微笑み合う2人は、同じ銀髪なのも相成って、まるで本物の姉妹のようであった。
同じ。
その単語を思い浮かべた優太は、ミーシャに聞くべき事があったのを思い出す。
「そうだ、ミーシャ。君は白ーー」
「ふぁああ。みんな早起きじゃなあ。」
優太が訊ねようとした時、あくびしながら最後の居候がリビングに現れた。
「・・・おはよう、アリス。早く着替えて朝食を食べないと遅刻するぞ。」
優太とリリの主人にて、セラフィリアス王国第3王女の身分を持つ金髪少女、アリスティアである。
質問を遮られた優太は、少しだけ不満気な表情をアリスへ向けたが、別に急がなくとも今後いつでも問えるだろうと、すぐに気持ちを切り替えて彼女に挨拶する。
なお、今のアリスはパジャマ姿な上に、寝ぼけ眼で髪の毛もボサボサといっただらしない状態であり、とても気品溢れる王女には見えなかった。
昨日の激戦での疲労がまだ残っている可能性があるので仕方ない事なのだが、それでも自分の主人、いや、1人の乙女として見ていられない。
謎の使命感に燃えた優太は、洗面所からドライヤーを持ってきて、リビングにあったブラシと共にアリスの髪の毛を優しくとかしていった。
「なななななんじゃあ!?ゆ、優太!?」
目が覚めたアリスは、現在進行形で行われている行為に混乱する。
「静かにしろ。頭動かすと危ないぞ。」
「あううう・・・」
しかし、それも一瞬で、言葉こそ乱暴だが優しさのこもった声と、慣れた丁寧な手付きにより、アリスも借りてきた猫のように大人しくなって、なすがままの状態となる。
「よしっ、こんなものか。」
優太が満足して手を離した時には、アリスの髪の毛はいつものように、少しウェーブのかかったサラサラヘアーに変身していた。
「さあ、着替えは後にして、冷めないうちに朝食を食べようか。学校はまだギリギリ間に合うしな。」
「・・・ユータ様、それがですね。」
直後、申し訳無さそうな顔をしたリリが衝撃の一言を発した。
「今日から学校はまたお休みみたいです。」
「え?」




