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異世界姫滞在記  作者: いぬがさき
第6章 魔王崇拝教

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これから

「ウェストン、殿」


「魔界の門が開いたという凶報に対して、すぐに駆け付けようとされる意思は素晴らしいものですし、セラフィリアス王国に仕える身としては大変心強くもあります。

しかし、御無礼を承知で言わせていただくと、今の貴女様が行かれても足手まといにしかなりせんし、最悪、味方の危険に繋がります」



真剣な表情のウェストンは、優しさと厳しさが混じった言葉をアリスに掛ける。



「っ・・・」



彼女は兜中で悔しげに奥歯を噛み締めるが、今回は反発しなかった。


足手まといになる事は自分でも分かっているのだ。


その事を、開いた門から侵攻してくる魔物達との戦闘を指揮する側となるウェストンに指摘されれば、ただ黙るしかなかった。



そんなアリスの様子を見て察したウェストンは表情を崩し、苦笑しながらフォローを入れる。



「そんなに落ち込まないで下さい。私が申し上げたのは『今のアリスティア王女は』です。万全な状態の貴女様なら私どもも心強いです。だから今は休息していただきたいのです」


「じゃが、魔界の、門は・・・魔王軍はどう、するのじゃ?」


「そちらも御心配なく。開いたといっても4分の1程です。ゴブリン等の斥候よりは強力な魔物が出現するでしょうが、伝承通りであるなら魔王軍の本隊はまだのはずです」


「そう、か」



アリスはウェストンの言葉に納得したように頷く。


本当はまだまだ心配であったが、これ以上はウェストン達に対して失礼となる。


彼らは精鋭なのだ。


自分達よりもずっと。


潜り抜けてきた死線の数が違う。



アリスはウェストン達を信じて休息をとることに決めた。



「ウェストン殿。申し訳ないが、そなたの言う通り、わらわは、限界じゃ。不甲斐ない王女で、すまぬが、よろしく、頼む」


「こちらこそ駆け付けるのが遅くなり、申し訳ございません。はい、お任せ下さい、アリスティア王女」



彼の言葉に安心したアリスは、ウェストンを見送った後、レーゼ戦闘状態アクティブモードを解くと、傍にいた優太へと倒れるようにもたれ掛かった。



「お、おい!アリス、大丈夫か!?」


ー スヤ・・・ ー



(優太様、大丈夫です。寝られたのでしょう。体力と魔力を限界まで消耗されましたから)



突然の事に動揺する優太であったが、リリの言葉を聞き確認すると、確かにアリスは寝息を立てていた。



ただ、少し辛そうであえる。



「本当に大丈夫なのか?苦しそうに見えるけど」


(鎧の身体強化機能のフィードバックでしょう。今回の敵は手強かったですから。まあ、アリス様なら慣れておられますし、最後に自己治癒強化の魔法をかけられたので、しばらくすると良くなるはずです)


「そうか・・・頑張ったもんな。アリス、お疲れ様」



優太は労いの言葉を掛けると共に、手甲ガントレットの上から、妹にするように彼女の頭を優しく撫でた。



「ん、みゅ・・・」



手甲のひんやりとした感触と優太の絶技にアリスは気持ち良さそうに喉をならし、その寝顔も多少穏やかになった。



(いいなー!パパ!私も!)



その様子を羨ましそうに見ていたミーシャが優太に近付き、頭部を撫でやすいように下げる。



「ああ。ミーシャ、助けてくれてありがとう」


(うふふ~。私はパパの使い魔だからね~)



感謝を込めて撫でると、ミーシャも気持ち良さそうに目を細めた。



(さあ、そろそろ灯音さんとも合流致しましょう)



しばらく微笑ましそうに眺めていたリリは、タイミングを見計らって促す。



「そうだな。先輩を家まで送り届けないと。ただ、その前に・・・」



優太はアリスをリリへ預けると、そのまま彼女の頭部も優しく撫でる。



「リリもお疲れ様」


(わふぅ・・・)




その後、灯音と合流した優太達は無事を喜び合い、彼女を家まで送り届けた。


別れ際、灯音の表情が優れなかったのが気になったが、誘拐や魔物襲撃による肉体的・精神的疲労によるものだと結論付け、彼女に疲れを癒せるちょっとした魔法をリリが施術して灯音宅を後にする。


脅威は去ったものの、念の為、ウェストンの部下が引き続き灯音宅の護衛につく事となった。



「完敗だったな・・・」



自宅に戻り、自室で優太は独り呟く。


彼独りでの実力なら瞬殺、ミーシャの力を借りた奇襲でようやく戦えるレベルであった。



「でも、生きている。」



確かに完敗した。


命の危機もあった。


でも、生きている。


生きていれば、次がある。



「今度は敗けない」



ユーリにも、オルガにも、魔物にも。



「その前に、まずは痛みにだな。・・・ふう、よしっ!」



優太はゴクリと唾を飲み込み、覚悟を決めて呟く。



「シンシア、戦闘状態を解除してくれ。」



彼の言葉に反応し、シンシアが光の粒子となって鎧から御守りへと戻った。



ー ピキ!バキボキ! ー


「ぐぅ・・・!あ・・・」



戦闘状態アクティブモードを解除した直後、強制的に身体強化された分のツケが回り、全身の骨と筋肉が悲鳴を上げる。


そのまま優太は意識を強制的に手放され、誘われるままに、とある夢へと旅立っていった。

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