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異世界姫滞在記  作者: いぬがさき
第6章 魔王崇拝教

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希望の流星

満天の星空の下、その星々の輝きに劣らない輝きを放つ翼を持つ天の白馬は、呼吸をするのも忘れるほど美しかった。


ミーシャを召喚した優太自身でさえ、この瞬間ときだけは危険な状況におかれている事を忘れて、ただただほうけていた。


(それじゃ、やっつけちゃおうか!パパ!)


幼く天真爛漫な声音でありながら攻撃的な念話に優太は我に返る。


「あ、ああ。でも、俺にはオークを倒す力がーー」


(私と力を合わせれば大丈夫だよ!)


ー ヒュォオオオ! ー


ミーシャの言葉に反応するように、優太のシアライズに風が唸りを上げて纏いつき、剣を中心に風の渦が形成された。


「これは・・・!」


「ヴォオオオオオ!」


危険を察知したオークは大剣を振り上げながら再び優太へと突撃する。


(あの大剣と打ち合わせて!)


「っ!ああ、分かった!」


通常、オークの大剣とであれば聖約武器でもない限り、殆どの剣は打ち合わせた途端に叩き折られてしまう。


もちろん、防御強化されているとはいえ優太の剣も例外ではない。


しかし、優太はミーシャの言葉を信じ、迷う事なく全力で下から切り上げる。


「はぁああああ!」


ー ギィイイイイイン! ー


すると、切り上げる最中、剣に纏いつく風が荒れ狂って暴風の壁となり、刀身を折られる事なくオークの大剣と打ち合う事ができた。


打ち合わせた衝撃で地面が割れ、優太の足が地面にめり込むが、押し潰されないよう全力で踏ん張り、そして、オークの重い打ち降ろしを止める事に成功する。


「こんのぉおおおおおお!」


更に、優太の剣は追い風を受けて徐々に大剣を押し返し、ついにはオークの腕ごと跳ね上げた。


「ヴァア!?」


強制的に両腕を大きく跳ね上げたれたオークは仰け反りよろめく。


(今だよ!)


ミーシャの合図と同時に、優太は力負けして驚愕するオークに肉薄し、アリスがしたように、その口内に剣を突っ込んだ。


「ヴォエ、ゲッ・・・」


風を纏った剣が喉まで入り込み、オークは我慢できず苦し気にえずく。


そしてーー


ぜろ!」


優太の言葉が引き金となり、剣に纏いついた風が一気に解放され、オークの喉奥で激しく吹き荒れた。


ー パァアアアン! ー


ー ブシャアアア! ー


その結果、オークは頭から上半身にかけて不自然に膨れ上がり、やがて急激な体内の膨張に耐えられなくなった身体は破裂し、辺り一面に肉片を撒き散らした。


「うっ・・・」


オークの無惨な最期に猛烈な吐き気が込み上げてくるが、優太は必死で耐えて、気持ちを無理矢理切り替える。


まだ戦いは終わっていない。


今もアリスとリリがそれぞれ強敵と死闘を繰り広げているのだ。


それに、ミーシャと一緒なら自分でも加勢もしくは状況を打破できる可能性がある。


ミーシャによると、この周辺における敵の気配は既にユーリとヴェガの2つのみらしいので、アリスの指示通り安全圏まで灯音を導いた後、念の為ミーシャに風の加護を施してもらい、その場に隠れてもらう事にした。



(パパ、乗って!)


優太はミーシャに促されるまま、彼女の大きな背中に騎乗する。


ー 騎乗モードに設定しました。 ー


シンシアが反応し、優太の下半身が固定される。


(それじゃ、いっくよー!)


ミーシャが輝く翼を広げ羽ばたいたかと思うと、一瞬で上空へと舞い上がった。


「おお!」


優太はつい感嘆の声を洩らしてしまう。


地上よりも星々が手が届きそうなほど近く、眼下に見える街の明かりもまるで地上の星のように煌めき、とても幻想的であった。


そんな中でも、一際ひときわ煌めく光がほぼ直下の公園から発せられていた。


アリス達がいる戦場である。


そこから轟音と共にいくつもの爆発の光が生じ夜空を染め上げている。


継戦時間からみてアリス達の限界も近いと考え、優太はすぐに行動した。


「ミーシャ、行こう!」


(了解!しっかり掴まっててね!)


ミーシャは嘶くと、翼をたたみ、蹄で空を蹴って急降下する。


ユウは身体を倒して彼女の首を抱き抱えながら、真っ直ぐ前を見据えていた。



一方、地上のアリスとリリは優太の予想通り、戦いの中で焦りがみえ始めていた。


幹部最硬と謳うだけあって、ユーリ達の防御力は尋常ではなく、幾多の攻撃を仕掛けているが戦況が動くようなダメージを与える事ができず、体力と魔力だけを消耗していく。


「ハァ・・・ハァ・・・」


アリスもまた致命的なダメージは受けていないが、真銘解放した状態でユーリの度重なる爆拳と爆蹴を避け続けてきた為、彼女の限界は近かった。


「はっ!」


「ゼェッ・・・くっ!」


ー ドォオン! ー


ユーリの攻撃は息を整える暇を与えず、アリスは力を振り絞って対応していくしかなかった。


(ええい、邪魔だ!鳥もどきめ!)


リリは攻撃範囲外へと飛ぶヴェガに向けて苛立ちをぶつけるように吠える。


主人アリスの加勢をしたくても、ヴェガがそれを許すはずがなく、空からの強襲や拳撃によって行く手を阻まれる。


また、2頭の実力は拮抗しており、今は両者ともダメージは少ないものの、少しでも均衡が崩れればそのまま勝敗を決してしまう可能もある為、迂闊に動く事もできずにいた。


(アリス様・・・)


主を案じ、歯がゆい思いをしながらヴェガの攻撃を避け、氷の攻撃を放つ。


しかし、それも一撃離脱したヴェガには当たらなかった。


(ユータ様、お願いです。アリス様に御助力を!)


リリは戦いの中、ここにはいない優太へ願う。


彼は今、灯音を逃がそうと逆に戦場から離れている為、そう簡単には戻ってはこれないだろう。


それでもリリは優太を信頼しているのだ。


主人の騎士として。


友として。


そして、リリの願いは届く。


「ギィイイイ?」


それまで無言でリリを相手していたヴェガが突如、警戒したように唸り、上空へと視線を上げた。


(あ!)


リリも気配を感じ、ヴェガと同じように空を見上げる。


初めての気配もあるが、その中に馴染んだ気配も混ざっている。


彼女が待ち望んでいた彼の。



見上げた空は満天の星空であり、数々の星が様々な色の光を放っていた。


その中に一際煌めく白い星があった。


その白星は流星のように輝きを増しながら地上へと落下してくる。


「ギィイヤァアアアア!」


危険を察知したヴェガはリリを無視して迎撃へと昇っていく。


(アリス様!)


その隙にリリはアリスへと駆け、幾重にも張った氷の壁でユーリの攻撃を妨げている隙に、彼女を口に咥えて遠く距離を取った。


直後ーー


ー ドゴォオオオオオオン! ー


白い流星とヴェガが衝突し、凄まじい轟音と衝撃波が周囲を駆け巡る。


高高度からの急降下で生じる運動エネルギーは尋常ではなく、当然の如くヴェガは押し負けた。


流星に蹴り落とされたヴェガは亜音速で地上へと落ち、その先にいたユーリを巻き込み大爆発を起こした。


ー ズゥウウウウウウウウウウン! ー


大地は抉れ、土煙が空高くまで舞い上がる。


広範囲に飛散した砂塵が霧のように立ち込め、爆心地を中心に辺りが闇に包まれた。


その範囲外まで退避したアリスとリリは、空を見上げ白い流星の正体を口にする。


「優太!」


(ユータ様!)


それは彼女達が望んだ人物。


天馬ペガサスに騎乗する白い騎士、優太であった。

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