ツンデレって、なんでこんなにも萌えるのだろうと、考えたことある?
#002 ツンデレって、なんでこんなにも萌えるのだろうと、考えたことある?
ヴァイン星人。
彼女(どう見ても少女なのだが)は、僕をそう呼んだ。
自分が宇宙人ということは知っていた。
まあ知っていたと言っても、2年前、つまり僕が中学生になった頃に知ったんだが。
ヴァイン星に住んでるからヴァイン星人。
僕たちが地球に住んでいる宇宙人――人間を地球人と呼ぶように。
僕たちは呼ばれている――のだろう。
たぶんね。
「ヴァイン星人……それが、僕?」
「えっ? あなた、自分がどこの星出身なのか知らないの!?」
彼女――虚無音は、露骨に驚いている。
驚いて、その驚愕の表情のまま、すり足で僕から遠のいていく。
かかわりたくない、と行動で示している。
僕はどうやら、相当な非常識人――非常識宇宙人らしい。
「自分の出身星を知らないなんて……あなたの頭の中には味噌が詰まっているの?」
「僕の頭の中にはちゃんと脳つきの味噌が詰まってる!」
僕の頭の中は大豆製品かよ……。
「僕、小6まで、自分が宇宙人だってこと、知らなかったんだよ。両親も死んじゃってたし。だから、自分が何星人で、どこに住んでたなんてのは、分からなかった。知らなかった」
「そうなんだ……」
「そうなんだよ」
なんか、空気を重くしてしまったな。
よし。
ここは男の僕が明るい話題を――
「そういえば、前から気になってたんだけどさ、お前、ブラはつけ――」
「うるさいっ!」
顔面に一撃。
虚無音のこぶしがめり込んだ。
床にぽたぽたと、真っ赤な血液が滴り落ちる。
「鼻血が出たじゃないか!」
「エロいことを妄想してるからよ」
「はっ。お前をオカズにヌけるわけがな――」
また顔面に。
今度は下半身からの攻撃だった。
棒のように細い虚無音の右足が、美しい軌道を描いて僕を襲う。
だが。
僕の表情は満面の笑みだった。
それは僕がMと言うわけではなく、単に喜ばしかったのだ。
これだけ彼女の幼女体系を馬鹿にしたあとで、素直に喜びを感じているのはどうかと思うのだが。
蹴り。
虚無音のキックは、僕の顔面を捉えた。
仮に僕と同じ背丈だとしても、足を思い切り上げないと顔面には届かない。
ましてや虚無音は僕よりも背が低いのだ。
足を精一杯上げても、僕の胸辺りだ。
だから、ジャンプする。
実際、虚無音は足を精一杯上げ、なおかつジャンプしていた。
もう分かるだろう?
精一杯足を――片足を上げ、さらにジャンプする。
パンツ丸見えに決まってるじゃないか。
片足を上げるだけでも、十分と言っていいほど見えるのだが、それにジャンプと言う動作が加わったことにより、落下時にスカートが完全にめくりあがる。自分のパンツを、どうぞ細部にわたって見てください、と言っているようなものだと思わないか?
おっと、肝心のパンツについて描写していなかった。
虚無音のパンツは縞パン。
まあ、予想通りと言うかなんというか。
青――いや、水色かな? と白のしましま。真ん中部分には小さなリボンが飾り付けられていた。
やわらかそうな素材で、吸水性もよさそう。
だからあの部分には黄色いしみが――
「しみなんてないわよっ!」
「心を読むな!」
そう言ったあと、虚無音は顔を真っ赤にして、スカートのすそを押さえた。
まるでエッチな風さんが襲ってきたときのように。
「のぞくな! 変態っ!」
「のぞいてねえよ! お前が僕に見せたんだろ!」
「見せるって言うのは、自らめくりあげることを言うの!」
「じゃあめくりあげてみろ! 僕がしっかり見といてやるから!」
また、殴られた。
蹴りを期待してたんだが、さすがに、もうしてくれないよね……。
でも、これで実際めくりあげられても、対処に困るんだけどね。
「もういいっ! ほら、さっさと行くよ!」
「イクのか?」
「1人でイってろ!」
くるっ、と僕に背を向け、歩き出す。
「どこに行くんだよ」
こんな質問をしているが、行き先は想像がついていた。
僕は虚無音のあとについて部屋から出、開けっぱなしだったドアを後ろ手に閉める。
少し間をおいたところで、虚無音は答えた。
「地球防衛軍の本部よ」
やっぱりね。
…………あれ?
僕、いつ地球防衛軍に入るって言った?
流れに任せるまま会話は進めてたけど……。
地球防衛軍についての話はあまりしていないような気がする。と言うか、現にあまりしていない。
小学生の冗談だと思ってたからなあ……。
でもちょっと待て。
はじめに虚無音はなんて言ってた?
虚無音の第一声。
『ねえ、地球防衛軍に入ってよ』
くそう。
あの時きっぱり断っておくべきだった。
…………。
なんて後悔してるのに、なんで僕、素直にこいつについてってるんだ?
そんな僕に、虚無音は振り返り、恥ずかしそうに、こう言った。
「えっと……なんて言うかその……入ってくれて、ありがと」
僕は――地球防衛軍に入ることにした。




