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私の友



 冬は、星が美しく見える。空気は寒いが、私の血に比べれば、暖かである。

 自らの心の冷たさに、どうして自分はこんなに冷たいのだろうかと悩む。私は、もっと優しい者で在りたいのである。






 「血を下さい。暖かい血を」



 バッサバッサと音をたてて、人と変わらぬ程に巨大なコウモリが飛来した。

 そして、そいつが喋ったのが、先ほどのセリフである。



 「ふむ。コウモリが喋るはずもなし。私は、病んであり得ぬものを見、また聞いたのであろうか……」



 そも斯様な巨体、コウモリには有り得ぬ。大方、これは幻の類いであろう。



 「我輩は、吸血鬼族のザバラキィーン。確かに汝に声をかけたぞ」


 「ほう、貴殿はザバラキィーン殿であらせられるか。私は、ガイラルアッヴァーン。冷血人間族の者ですな」


 「冷血人間?……ふむう、我輩は暖かい血を必要としているのだが。まさか……血が冷たいのかね?」


 「左様。私の血は、凍る程」


 「フハハハハ!血は凍らぬよ!よろしければ、一滴頂けぬか?」



 私の血は、凍る程に冷たい。これは事実である。

 そして、私の心は、更に冷たい。



 「死ぬかもしれませんぞ?」


 「フハハハハ!面白い。千年を生きた我輩が、一滴の血で死ぬはずもない!是非とも頂きたい」



 千年を生きた程の吸血鬼ならば、私の血にも耐えうるやもしれぬ。



 「忠告はしましたぞ。……ただ、もしも私の血が貴殿の役に立つのなら、幸いですな」


 「おお、血を頂けるか!有難い」



 私は、マントに仕込んだ刃で指先を傷つけ、一滴の血をザバラキィーン殿の掌に落とした。



 「っぬが!?手が、手が凍るだと!?」



 ビキビキという音とともに、ザバラキィーン殿の手が凍ってゆく。



 「ぬがあああ!」



 ザバラキィーン殿の成した動きは、血を受けた手の手首から先を切り落とすことであった。

 黒いモヤが、手首の先を覆い、それが晴れると、新たな手が現れた。



 「……ザバラキィーン殿、申し訳ない」


 「なに、気にする必要はない。まさか冷血人間の血が、これ程とは。いや、良い経験をした」



 気にする必要はない……とはいかぬ。他者を傷つけて、気にならぬ筈はない。



 「ガイラルアッヴァーンよ、再度言う。気にする必要はない。これしきの事、我輩にとっては大した打撃にはならぬ」


 「しかし、ザバラキィーン殿……」


 「我輩は、強き者よ。心配されるなど、屈辱でしかないのだ」



 私の発言、それは誇り高き吸血鬼族に対して無礼なものであったのである。



 「失礼いたした」


 「なに、そちらの厚意から来るものと知れてはいる。それと、我輩は貴殿を気に入った。友になってもらえぬか?」



 私は、冷血人間。存在するだけで、他者を傷付ける者である。そんな私に、友になろうと言ってくれる存在がいようとは……。



 「有り難し。私でよろしければ、是非」


 「フハハハハ!愉快愉快!今後ともよろしく」



 こうして、私は終生の友を得たのであった。

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