第7話「自殺者N・その7」
私はマイクを付ける。
「もしかしたら見つかってほしかったのかもしれない。抵抗するより認めたほうが特だと、そして目的と達成度をうかがえ。わかってると思うが、否定はするな」
ニュースではすでに猟奇的殺人だと報じられている。
「もうこの事件は全国に広まっている、君がその事件の関係者であるだけで影響があるだろう。いったい何が目的なんだ?」
「弟のいじめは、もうみんな知っているんですか?」
「ああ、もうニュースで全国に報じられている」
そう、海斗君はいじめを受けていたこと、それを学校は認識しながらも無視していたこと、家族はそれを知っていたことは全国に広まっている。
教育委員会も動き始めている。
「弟の名前と学校の落ち度は、全国に広まっているんですか?」
「ああ、ああ。全国で、学校の対応の反応は出ている。だから教えてほしい。君が何をしたのか」
「分かりました。すべて話します」
やっぱりそうだ。
天音さんは意図的にこの騒動を起こしたんだ。
「私は以前から弟にいじめがあったことを知っていました」
「ええ、そうでしたね」
「その日は突然来たんです」
「その日?」
「はい、ある日、夜に弟の部屋に行くと、首を吊っていたんです」
「なるほど、死因自体は自殺だと」
「そうです。だけど私は、この自殺を、自殺のまま終わらせたくなかったんです」
「はい」
「私は包丁で何度か刺して、制服を着させ、樹海の中で自殺に見せかけました」
「やはりそうですか、しかしなぜ」
「この自殺を、みんなに知ってほしかったんです。いじめがあって、学校もそれに動かないで。そのまま弟の自殺が、みんなに知られないのは嫌だったんです」
この自白は裁判でも決定的な証拠として扱われ、家宅捜査の結果、自殺で使用した縄と損壊のための包丁が見つかった。
死体損壊・死体遺棄の罪で禁固半年の刑となった。
法に完成はない。
いつの時も未完成で穴はあるし、最良に機能するものではない。
ニュースはこの一連の騒動を報道し、この姉弟の決死の訴えを全国に広めた。
石和南高校はこの事態を重く受け止め、再発防止といじめの発生を抑制するよう発表した。
車を走らせる。
信さんが歩いているのを見つけたので、車を止める。
「おはよう、信さん」
「ああ、一瀬さん。おはようございます」
信さんはベージュ色の帽子を取り、頭を下げる。
「この前の事件、ニュースで取り上げられてましたね。海斗君と天音ちゃんのやつ」
「ええ、悲しい事件でした。ですが、もっと正当なやり方はあります。もし見つけなかったらどうなっていたか」
「いや、一瀬さんなら見つけられるよ」
「そんなことないですよ。この広大で見通しの悪い森で」
「いや、見つけられるよ。そうゆう仕事でしょう」
「そうかもしれないですね。それでは。車にお気をつけて」
車を再び走らせる。
蒼い森の中で一筋の道がまっすぐ伸びている。
樹海探索課。
それは死者を見つけ、死の意味を見出す仕事。




