50.実は全属性持ち~ガルヴァウside
ガルヴァウ視点に戻ってます。
「お、あった。確かにここのタンポポは年中生えるタイプみてえだな」
俺の知るタンポポは、春頃に一度だけ咲く。魔国との結界付近に咲くタンポポも同じくだ。
だが魔国の中、そしてこの場に咲くタンポポは、春から秋頃まで咲き続けるらしい。
ザケルバードは呪いに酷く侵された人間の体から、呪いの残滓のような何かが漏れ出ると言っていた。
タンポポはそんな残滓を吸収して花弁を黒くしたり、開花のサイクルを狂わせたりしているんだろう。
もちろんこの考察は、全部ザケルバードの受け売りだ。
「ちょっとした黒い絨毯みてえになってんな」
そう感想を漏らすくらいには、俺の目の前には黒タンポポがところ狭しと咲いてる。俺が三人くらい並んで寝そべったくらいの面積だ。
ここは森の最奥地で、結界に囲まれた魔国だけじゃなく、隣国との境に当たる崖の上だ。崖を降りて、川を挟んだ向こうが隣国って認識してる。
カミュリッチ家が管理する森とはいえ、隣国と魔国両方の境界地の為、領民ですら安全の為に足を踏み入れるのを禁止してある。
こんな所に黒タンポポがあるなんて知ってんのは、大人の言いつけをきかねえ妹くらいだろう。
カリエルに一報を入れた後、俺はすぐにここを目指して移動した……徒歩で。
「俺の馬、タミョルが乗って行っちまったんだよなあ……」
思い出し、ぼやく。タミョルが乗ってきていたコロロンは、魔国の中にいる妹が引き取った。
その結果、一足先にカミュリッチ邸へ戻ったタミョルが極々自然に、かつ当然のように俺が乗っていた馬に跨がって帰っっちまった。
自然すぎて自分の馬がタミョルに持ってかれたと気づいたのは、ザケルバード達と離れる時だった。
元々、俺は身体能力が高い方だ。この山も昔から出入りしてるし、魔法で身体強化もできる。
とはいえ竜馬のコロロンほどでないにしても、俺の馬だって険しい道を普通に走行できるくらいには運動能力が高い。あの馬なしで魔国の結界付近から邸に戻るだけでも、それなりに骨が折れる。
最奥地から邸まで戻るとなると、さすがに日をまたぐ事になるだろう。
「タミョルの奴、絶対嫌がらせの延長で俺の馬に乗ってったんじゃねえ? まあフィデリカしか知らなかった黒タンポポの群生地に俺が向かうとまでは予想してなかったとは思うけど」
魔国に入れなかった俺は妹のフィデリカから、ここに黒タンポポの群生地があるとザケルバードを介して伝言を受け取った。
更に追加情報としてザケルバードから、ウォルフは元魔国の住人で、この黒タンポポの群生地近くに潜んでる可能性が高いって教えられてる。
結界付近のまばらに生えた黒タンポポと違い、妹が群生地と伝言してきたくらいには、黒タンポポがぎっしり生えてるこの状態を見るに……。
「てこた呪いに侵されて末期状態だったらしい誰か……まあ多分ウォルフって奴なんだろうけど、少なくともソイツが黒タンポポ周辺にいる?」
つい首を捻る。黒タンポポも含め、見る限りこの付近には草だけ。隠れられるような物陰もねえし、人影も見あたらねえ。
「うーん、だとしたら……やっぱ下か?」
黒タンポポと呪いの関係を考えれば、魔法で黒タンポポの下に隠れてる可能性が高い。
「ま、これもザケルバードの受け売りだけどな」
ザケルバードはウォルフは自ら自分の体を結界付近のどこか……恐らく妹の伝言にある黒タンポポの群生地付近に封じてあると告げた。
「あれ? そういや、ここって魔国の住人からしたら結界の外だよな?」
ふと思った事を口にして……。
「ザケルバードは何でウォルフって奴が、ここに自分の体を封じたって知ってたんだ? つうか何でウォルフって奴も結界の外に出られてんだ? うーん……」
言いながら僅かな時間、考える。だけど……。
「ま、いいか。また機会があれば聞けんだろ」
考えるのが苦手な俺は、すぐに考える事そのものを放棄した。
そうして黒タンポポの絨毯の中に足を踏み入れ、花をかき分けて中の地面に手を触れる。
いつもは魔獣を討伐する際、自分の周囲に張り巡らせるようにして使う索敵魔法を、地面の中に向かって使ってみた。
「なるほど……確かにこの下に何かいるな」
索敵魔法でわかるのは、主に魔力を保有する魔獣、もしくは保有しない動物。そして人間かどうかだ。
「魔力操作のスペシャリストなら魔力で個を特定できる人間もいるが、俺はできねえんだよな。でも……」
放つ魔力の属性をゆっくりと変化させる。
魔力は火、土、水、風に加えて光と闇の属性がある。
余談だけど黒魔法を使える人間は、闇属性の魔力と思われがちだ。
でも違う。あくまで資質の問題だ。属性関係なく使える人間は使えるし、使えねえ人間は使えねえ。
でもって大抵の人間は、魔力属性は複数持ってても二つか三つ。四つ以上あるのは稀有だと言われてる。
「なのに俺は全属性持ちなんだよなあ……」
言いながら感覚的にはまりそうな属性で索敵魔法を放っていった。




