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ぶち切れ聖女は激マズポーションを置き土産に逃亡する  作者: 嵐華子@【傾国悪女】3/5発売予定
1章〜ブチギレるまで

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27.回帰しても滅亡~ガルヴァウside

「なるほどな……」


 端的かつ手短にだったが、カリエルから全て聞かされた俺は、苦虫を噛み潰した顔になる。


 妹とカリエル。二人して未来から過去に出戻っていた。


 カリエルからしか話は聞けてないが、恐らく妹もで戻っていたに違いねえ。


 妹の言葉に感じていた違和感の正体は、そういう事だったのかと納得しちまう。


「ごめん、ガルヴァウ。私は一度目の人生で、自分を守ってくれたカミュリッチ家も……フィーも……」


 絶望したかのように、項垂れるカリエル。


 俺は何て言っていいのかわからず、無言でカリエルを見つめた。


 普通なら、信じねえ。過去へ回帰してるなんて話。


 けどカリエルとの婚約話が持ち上がって以降、妹がこの話を心底嫌がって……いや、拒絶だな。拒絶する態度は気になってた。


 妹は俺の知る限り、他人を否定したり、ましてや拒否したりする事なんか一度もした事がない。貴族としての義務や責任も12歳のくせに大人顔負けに自覚してたんだ。


 なのに会った事もねえはずのカリエルだけは、相手が王族であっても最初から拒絶してた。貴族令嬢であるにもかかわらず。


 それに……。


『アンタだって、いっつもいっつもいーっつも! 今回だって、やっぱりなんっにも説明しなかったじゃない!』


 カリエルが説明を求めた時、フィデリカはそう言った。言って……泣いた。ケモック二世の腹に顔を埋めてたけど、ありゃ泣いてたな。


「テレヌ公爵令嬢……」


 呟いたのは、カリエルの実兄である第一王子の婚約者の名前だ。


 そうだ、ナンチャラ令嬢の名前は、テレス=テレヌだ! テレヌが家名だった!


 カリエルは一度目の人生で、テレヌ公爵令嬢に呪われた。更に意のままに操られ、妹を除くカミュリッチ家に関わる人間を処刑し、家門を滅ぼしたらしい。


 それでも未来では妻となった妹だけは、カリエルも何とか守ろうとした。妹を王都の外れにある別荘に閉じ込め、物理的に距離を置いて暮らす事で……。


 正直、納得いかねえ。しかも妹の最期が、妻として娶ったテレス=テレヌに殺され、独り逝かせただと?


 カリエルの話には腹が立つ。


 ただ実感が湧かねえのも事実なんだよな……そもそも俺は生きてるし、両親も生きてる。妹とカリエルのような、回帰前の記憶もない。


 一つ気になったのは、回帰前の母上だ。


 母上は、フィデリカを生んですぐ亡くなってたらしい。だけど実際、生きてる。


 カリエルが寝ぼけて変な夢を見たんじゃないかと疑いそうになるが……。


 カリエルがカミュリッチ邸を初めて訪問し、妹に気絶させられた後。目覚めた直後に妹が死んだと泣き叫んだ。


 カリエルの話ではこの時、一度目の人生を思い出したとか。


 あの時のカリエルの取り乱し方は、鬼気迫るものがあった。


 そしてフィデリカがケモック二世と呼んでいた、あの黒い魔獣。


 思った通り魔国の住人だったようだ。カリエルは、恐らくケモックが自分達を過去に回帰させたと言った。


 カリエル達と違い、ケモックに一度目の人生の記憶があるのか? だからケモックは妹に手を貸した?


 どちらにしても、もしケモック二世が人を過去に回帰させるなんていう、とんでもねえ力をもっているとすれば、その正体は魔国の王である可能性が高い。


 カリエルいわく回帰前のフィデリカは、ケモック二世を可愛がってたらしいが……ケモック二世、めちゃくちゃフィデリカに怯えたぞ? 本当に可愛がってたんだよな?


「回帰か……まあ、実感は微塵も感じねえな」

「そうだよね……でも……カミュリッチ家には、酷い裏切りと仕打ちをした。ガルヴァウとの約束も守れなかった……すまない。本当に……すまない」


 カリエルが体を起こして、俺に頭を垂れる。


 そんなカリエルの様子から、心底後悔してんのを感じた。


「顔上げろって! 今はまだ、なんも起こってねえよ! それに今度こそ、裏切らねえだろう!」


 きっとカリエルは同じ轍を踏まない。それに妹は魔国へ旅立ったし、呪いの芽もカリエル達の体から消えた。今ならどうとでも対象できるはず。


「ありがとう。もちろんだ。今度こそ、何があっても必ずフィーを……ううん、君達を守るよ」


 目を潤ませたカリエルが決意を口にする。


 ――第二王子殿下ー!

 ――ご無事ですかー!


 その時だった。遠くの方から、集団が駆けてくる音が聞こえてくる。


 そりゃそうだろう。学園の、それもこの国の王子がいるはずの生徒会室が襲撃されたんだ。


 もちろん俺もカリエルも、それを見越して手短に話してた。


「ガルヴァウ。とにかく私は一度、城へ戻るよ。フィーが城で何かしたのは、間違いないだろうから」

「俺も行く。フィデリカがやらかしたにしても、碌な事はしてねえだろう」

「でも……」

「心配すんな。フィデリカは、なんだかんだで家族を危険に曝す事はしねえ。そのフィデリカが、国王と裏取引したとか、国王と神殿に聞けとか言ったんだ。国王と会っても……まあ、フィデリカがそこの壁を大破させた修繕費を請求されるくらいで……まあ、カミュリッチ家の財政が圧迫されるくらいで……ははは」


 修繕費って幾らかかんだ? この壁の損壊具合……下手すりゃ一部建て替えになるんじゃ……これ、カリエルの回帰した二度目でも、カミュリッチ家は滅亡するんじゃねえ? 金欠で……。


「大丈夫だよ。私も修繕費を……もしかして城の壁も壊したなんてことは……かかるのかな……城の修繕費……」

「……」


 カリエルの言葉に、俺は言葉を失った。


 ほどなくして、俺はカリエルと共に馬車で城へと向かった。心の中では当然、城が崩れていませんようにと切に願っていた。


 そんな俺と同じく、馬車の中ではカリエルも終始無言だった。これまた俺と同じことを、切に願っていたに違いない。

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