タイトル未定2026/03/26 09:58
「ちょっとお兄様!? 可愛い妹に何て事を!? ケモック二世も、首を縦に振ってんじゃないわよ!」
「可愛い妹なのは間違いねえが、他の人間にとっちゃ輩でしかねえだろう! つうか神殿の連中が、お前を聖女認定なんぞしたのか!? しかも国王にも知られたってことか!? 最悪、カリエルじゃなくて、根性ひん曲がった第一王子の方の妃か、もっと最悪なのは、第一王子の側妃にしろって言い出されかねねえ状況になってるぞ!」
ぶっちゃけ今の政局は、かなり不安定だ。国王の体調が不安定なのを良しとしてんのか、第一王子の横暴さが目立つようになってる。
その上、第一王子の婚約者であるピンクの髪の……何て名前だったか忘れちまったな。家門と名前が似てて、ダジャレみたいな名前だったんだよ。とりあえずナンチャラ令嬢でいっか。
あのナンチャラ令嬢が、城で幅を利かせてるって噂は、城で働く人間達を介して学園にまで流れてきてる。
ただ妹が今した話をコンパクトにまとめりゃ、カリエルと国王が呪いに侵されてたってことだよな?
二人に共通してんのは体調不良だ。もしかして呪いのせいだったりすんのか?
いや、どっちにしても政局的には、カリエルよりも第一王子の王位継承が有利。第一王子の婚約者も、宰相を務める公爵家の令嬢だ。後ろ盾も強い。
そうだな。妹が神殿から聖女認定されたら、カリエルの婚約者って立場はなかったことにされて、やっぱ第一王子の側妃に……。
「でもって私、魔国の王妃になるわ」
???? おいおいおいおい!? 俺の妹の発言が、ぶっ飛びすぎだなあ!?
「いやもう、話が読めねえ!」
思わず叫ぶ。
てか、なんでケモック二世が妹をぎょっとした顔で見て、固まったんだ?
「魔国でやる事があるの。詳しい話は国王と直接話して。あと、ムカつくピンク女と第一王子のバカップル。まとめて殴ってあるから」
「マジで何やらかしてんだよ……」
こりゃもう、謀反だな。今すぐ妹を連れて領に戻って、臨戦態勢にしねえと……。
いや、むしろ妹はこのまま魔国へ亡命する方が安全か? でも魔国の奴らに殺されちまう可能性があったな。却下だ。
ん? でも魔国の王妃になるって言ったな? もしかして既に魔国の王を陥落した?
この妹のことだ。どうせ押しかけ輩的陥落に違いねえ。でも妹の戦闘力は低いから……もしかするとポーション使ってなんかしたんじゃねえ?
ぶっ飛びすぎた妹の言動に、頭の中で考えがグルグルと堂々巡りする。
それでも妹の性格を知っているからこそ、本来なら起こり得ないことを起こした気がしてならない。
「後はよろしくね、お兄様。魔国の住人達にポーション飲ませ終わったら、独立宣言するから。そうしたら、魔王を連れて結界から出て来るわ。一応、娘さんを下さいって言ってもらわないと。ねえ、ケモック二世?」
「ヒゥッ……」
妹がケモック二世にバチンとウインクすると、ケモック二世が怯えた悲鳴を上げる。
ウインクで魔国の人間を恐怖に陥れるとか、俺の妹すげえな。
「お父様にも、そのつもりでいろって言っといて。お母様には……まあ、ぽやっとした人だから、武者修行中とでも言っておけば問題ないでしょう」
「いや、母上の問題はそれで解決するが、他の問題は大アリだ。でも……フィデリカ、これだけはちゃんと答えろ」
「何よ? 私の意志を無視して、カリエルなんかの言いなりになったお兄様?」
「うお、すげえ嫌味。いや、悪かった。カリエルの性格を考えたら、お前を大切にしてくれるって思ったんだよ。でな、お前は魔国に行っても無事でいられる確証があって言ってんのか? いっそ俺がお前の護衛としてついてくぞ?」
妹の気持ちを無視した不甲斐ない兄貴だったのは、間違いねえ。カリエルが暴走するまでは、妹を尊重してくれる夫になるって信じてたんだよ。
「付き添いなんていらないわ。お兄様は、いえ、お父様も、魔国と隣接した領地だからこそ、どうして魔国ができたのか、どうして世間一般的には魔族と呼ばれてしまうような人達が出来たのか、ちゃんと知るべきよ。もっともそれも含めて、国王と神殿に話を聞いた方がいいわ。今なら私の身内には、もれなく真相を話してくれるはずよ」
「……そうか」
きっぱり断る妹の言葉に、ゆっくりと頷く。
だけど俺は思っている。
だからフィデリカお前、国と神殿のトップに何やらかした!? 話の内容が入ってこねえ!
そんな俺の心境など知る由もない妹は、言い終わるが早いかカリエルを睨みつけた。
いつもご覧いただきありがとうございます。
お気づきかと思いますが、この時点でフィデリカはプロローグをこなし終わり、国王達と裏取引しております(・∀・)




