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もうひとつの夏休み

 亜子は祖母が亡くなることで、ずっと抑えていた。

だけども雅矢の顔を見た途端に泣くのを我慢していたが雅矢の胸で泣いてしまう。

 太陽はなにもなかったかのようにのぼり、またわたしを今日も照らす。今日は日中真夏日まで上がる予報だ。わたしの体温が、はるかにそれより高い。なぜ雅矢の胸で泣いてしまったのだろう。いまだに自分でもわからない。

 でも雅矢は、ただ黙ってわたしが泣き止むまで受け止めてくれた。いつもそばにいてほしい時に雅矢が現れる。まるで、わたしの心情を知ってるかのようにそばにいてくれる。

 わたしは久しぶりに大号泣した。ほんとにおばあちゃんが死んでしまうことだけが理由なのかと、だからそれ以上考えたくない。

 それにしても今日もまぶしい日差しだ。わたしにもこんなギラギラした貪欲さがほしい。

 せっかく雅矢に返した桜柄の手ぬぐいが、また戻ってきた。わたしの涙をいっぱい吸い込んだ手ぬぐいだ。でも今は太陽の日差しに気持ちよさそうに干されてる。

「亜子着いた。頑張ってやってきたよ」

 ほんとに波留が長野にやってきた。しかも電車とバスを使って自力だ。波留の、みなぎる行動力がうらやましい。

「亜子! 久しぶりじゃん」

「うん。よくここまで、これたね」

「ちょっとバス停で迷いそうになったけど」

「一時間に一本しか走ってないからね」

「それってすごくない。東京では考えられないよ。なんだか久しぶりなのに、亜子元気がないね」

 ぱっちりした波留の瞳が、わたしをじっと見つめ、どのように映っているのだろうか。

「そんなことないよ。部屋に上がって」

 久しぶりの波留との再会だ。波留が前に進み生き生きしてるように見えた。それに比べてわたしは現状のままだ。でもそれをさとられてはダメだ。

「どうだった大阪の専門?」

「うん。至る所で、関西弁が飛び交ってた。しかも説明する人まで関西弁だった。恐るべし関西って感じかなぁ」

 波留は将来トリマーの資格を取るため、その道に進む。

 しかも東京ではなく大阪だ。慣れない都市で生きようする力は、パワーエネルギーの持ち主だ。

「亜子、進路先決まった?」

「••••••まだ考え中••••••」

「まぁ、まだ夏休みだし、焦らないことね。うーーん、これが田舎ってやつね」

 波留が背伸びをしてから畳の上で大の字に寝転んだ。

「宏樹とどうなってるの?」

「どうって?」

「ディズニー行かないの?」

「考え中」

「考え中って、夏休み終わっちゃうよ」

 波留に痛いところをつかれた。

「宏樹わたしをいじってるだけだもん」

「そうかなぁーー、結構宏樹マジかもよ。それか亜子誰か他に好きな人でもいるの?」

「••••••そんなわけないじゃん」

「なら思い切って宏樹とディズニー行ってみたら。なにか変わるかもよ」

 なぜか波留の言葉に、しっくりこない。いつもならズドンと突き刺さるのに、なにかおかしい。

「今日亜子店番するの?」

 波留が起き上がって窓から外を眺めた。

「波留がいる間はママがしてくれる予定」

「そう。よく毎日駄菓子屋の店番してるね。退屈じゃない。遊ぶ場所もないし。見渡す限り山ばかりじゃん」

「こんにちは、波留ちゃん久しぶりね」

「こんにちは」

「せっかくだから浴衣着ない?」

 ママが突然、言い出した。

「浴衣ですか?」

「おばあちゃんが二人分祭り用に、準備してくれてたみたいなの」

「えーーぇ、そうなんですか。ならせっかくなので着てみたいです」

「亜子も着てみる?」

「着てどこ行くの?」

「隣りの市で夏祭りやってるから、それに行ってみたら。花火もあるし」

「亜子行こうよ。わたしここの盆祭りと花火みれないもん」

「うーーん」

「花火が終わったら車で迎えてに行くわよ」

「お願いしまーーす」

 波留が即答した。しかも可愛いらしく頭を下げた。なんとも抜け目がない波留だ。その決断力がうらやましい。

「浴衣って、結構暑いね」

 波留が帯を多少緩めた。確かに風通しも悪く帯が窮屈だ。

「すぐに慣れるわよ」

 ママがわたしの帯を閉めた時、笑った。

「じゃあ亜子行こうよ」

「巾着袋と扇子、下駄も出してるわよ。車で駅まで送るわね」

「げんきや閉めるの?」

「一時間だけよ」

「そんなに心配して亜子、店の責任者みたい」

 波留が茶化した。

「でも一時間だけ閉めるって、ローカルぽいね」

「よくあるあるだよ」

「どんなお客が来るの?」

 わたしは様々なお客の話しをしたが、なぜか雅矢の話しは波留にもしなかった。

「ああ、ビーリアルが通知だ」

 波留が写真を撮った。

「亜子の昨日撮った後方の夕暮れ、めっちゃきれいだったね」

「ビーリアルね」

「薄暗さにぼんやりと映る山並み。長野って感じがしたよ」

「突然だったから」

「そう亜子の横に誰かいた?」

「誰も? どうして」

「人影っぽいのが映ってたから」

 波留の発言にドキっとした。もしかしてバレてるのかなぁ。でもわたしは頭に浮かぶいい訳をしゃべってる。うそといい、今しゃべるいい訳といい、どこで覚えたんだろう。

 日中は夏祭りを波留と楽しみ、二人ではしゃいだ。その後、日が沈みわたしと波留は花火の会場に向かった。    昨日はこの沈む夕日に生きる生命を擦り削られるくらい涙が出た。それを雅矢が受け止めてくれた。

「えっ! 雅矢」

 そんな時、人混みに雅矢がいた。

 今回も閲覧していただきありがとうございます。

誰にでも親友にも言えないことがある。亜子も雅矢との関係を波留に言えなかった。

今後亜子と雅矢の関係。そして波留や宏樹も巻き込まれていきます。

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