始まりは突然に!
波留が長野にやってきた。そんな時、波留と一緒に行った花火大会で、雅矢を目撃してから亜子は雅矢を今まで以上に意識した。
何度も意識しないようにするけど、根底にある種が次から次に発芽して同じ気持ちを繰り返させる。このモヤモヤ感はなんだろう?
「亜子、どっか調子悪いの?」
不意に波留が聞いてきた。
「別に今までとおりだけど」
「こっちでなにかあった?」
相変わらず波留の感は鋭い。
「別に? どうして?」
「昨日の花火が上がってる最中も周囲をキョロキョロしてたし」
波留の言葉ではっとした。それは無意識にやっていたからだ。
「せっかく花火が上がっていたのに覚えてないでしょ形や色」
わたしは返す言葉がない。
「実はおばあちゃん死んじゃうの」
また思ってもない言葉だけが先走った。
「えっ! おばあちゃん亡くなるの?」
波留が聞き返してきた。
「胃がんらしい。まだはっきりママから聞いてない」
「それで亜子、いつもとなんだか違うんだーー」
波留に、こんな形でうそをついてもいいのかと自分を責めた。確かにおばあちゃんが死んじゃうのは悲しい。でも今は、まだ実感がない。
「それで明日から帰ってくるんだ」
「うん」
「じゃあ、わたしと入れ違いだ。この三日間、あっというまだね」
「波留がきてくれて楽しかった」
「まぁ、亜子店番がんばれ」
「うん」
「今日は新幹線が走る長野駅まで送るわね」
車内でもママが呆れるほど波留とわたしは、しゃべり続けた。波留といると安心する。けどその波瑠にも雅矢のことは言えなかった。
「じゃあねまた」
わたしが手を振って別れようとした。波留が近づいてわたしの耳元でささやいた。
「亜子、今好きな人がいるでしょ。なんだか以前より明るくなったよ。ビーリアルに映っていたでしょ」
「えっ!」
波留はお見通しだった。
「まぁいいって。じゃあ東京でね。おばさん。色々なお世話になりました。楽しかったです」
波留はママに頭を下げてから駅の改札口から小さくなった。帰りは行きと違って静かな空気だけが流れた。
「明日おばあちゃん帰ってくるんだよね」
「ええ、そうよ」
「おばあちゃんって死んじゃうの」
わたしは直球でママに聞いた。
信号が黄色に変わりママが急ブレーキをかけた。鈍い急ブレーキ音だけが響いて歩道まで停止した。
「亜子知ってたんだーー」
「うん。げんさんが言ってた」
「黙っててごめん、お母さんが自分で帰ってから言うって言うから内緒にしてたの」
「余命どのくらい?」
「長くで2ヵ月、早くて今月かな」
「••••••そんなに早く?」
ママは黙っていた。一番辛いのはママだからだ。だから一ヵ月も介護休暇を取って長野にきたんだろう。 最後の親孝行するために。
わたしは充電切れで止まったままだ。今日の閉店前にも、げんきやに現れなかった。待つこと4日も雅矢は現れなかった。
やっぱりあの時、声をかければよかったのだろうか。今さらそんなことを思っても遅い。波留が言ってたように、わたしは雅矢が好きなのか?
それともこの状況を楽しんでいるだけなのか。
でも一つだけ言えるのは、明るく積極的になることだ。明日おばあちゃんが帰ってくる。泣いたらだめだ。今日を忘れるためにピアノを弾いた。わたしの中でも革命を起こせねばならない。
「以前に話してくれた革命、聞かせてもらってもいいかなぁ」
突如雅矢が現れ店内に立っていた。
「うっうん」
それ以上適切な言葉がなかった。わたしは大きく深い深呼吸をしてから革命を弾いた。
雅矢と会うと今までの不安が媚薬のように一気にスーとはればるする。
わたしは雅矢が好きなんだろか?
いや、好きなんだ!
「雅矢のこと好きみたい? いや好きです。今度の盆祭りと花火大会行こう」
「うん。いいよ」
今回も閲覧していただきありがとうございます。
やっと亜子は自分の気持ちと向き合い雅矢に告白しました。雅矢は亜子の気持ちを素直に受け入れてくれました。今後の展開に波留や宏樹も巻き込まれていくのだろう。




