episode65〜林檎〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
訳が分からずにその場へと案内するナナ。
この辺りは、昼間でも人気が少ない所だ。
すっかり暗闇に化したその場所は、静まり返っていた。
街灯の設置もされていないような場所だ。
リリックは従者達を従えて、辺りをランプで照らすように指示する。
「この辺… だったかな? … あ、いや、あの辺?」
何と言っても、初めて来た日のことだ。
ましてや土地の感覚もない。
場所など、とっくに忘れている。
(絶対にもう無いと思うけど… )
そう思いながら、ナナは熱量のない探し方をしていた。
ナナは、その大きく叫ばれた声の元へと走った。
二度と出会うことのないと思われていたその林檎と再会した時には、ナナは自身の目を疑った。
その時は、林檎と同じような赤みだった血が、今は少し赤黒くなっている。
しかし、確かにあの時の林檎なのだ。
ナナは背筋が凍る感覚がよぎった。
「… な… んで?」
その林檎は腐るどころか、ナナが何ヶ月も前にこの世界へと来た時と全く同じ状態だったのだ。
その林檎を持ち上げ、まじまじと確認するネイル。
「ナナ、この林檎に間違いございませんか?」
ネイルのその言葉にナナは、ゆっくりと頷くことしかできなかった。
「この、少し色が違う部分は一体なんでしょうか?」
「それは… おそらく私の血かと」
「血? そうか、ここに来る直前に事故にあったと言っていたな? その時の怪我は、大丈夫だったのか?」
「はい… でも何で… あの時のまま… 」
ナナは自身の身体の震えを抑えるように、両手を交差させて肩を掴んだ。
その様子に、リリックがナナを包むように身体を覆う。
「大丈夫か?」
「いいえ… この林檎は… やはりピアノの心臓?」
触れているリリックの手には、何の違和感も感じていないようだった。
「特に、動いているようには感じませんね。ナナ様の仰る通り、腐っているようにも見えませんし… 」
その言葉に、セダリアが考えを出す。
「この林檎が、本当にあのピアノの心臓だとしたら… 本体と同じように、異世界を繋ぐトリガーになっているんだと思う。しかし、これによって来たのは、僕の知る限り、ナナで二組目だ」
「え? 二組目? 他に誰が?」
「君の… 家族だよ」
「家族? それって… お母さんと… おばあちゃん!?」
「そうだね… 」
「でも二人は… ピアノの存在なんて知らな… 」
「それは… おそらく、知らせなかったからじゃないかな? 実際には、僕の両親に聞いていたのかと… 」
「… っ国王様と王妃様に!? そうか! 私のいたあの世界で!? え? てことは、知り合いだったという事ですか!?」
「うん… おそらくね。僕は君のお母様とお祖母様を知っている。幼かったから、これも薄い記憶に過ぎないけどね。でも… 彼らは、あちらの世界に行く前から知り合いだったんだと思うよ?」
「つまり… セダさんの家族と私の家族は… 逆転移だった… という事になりますね? 元々はこの国の人間? そんな… 」
「そうだね… でも僕とナナは向こうの世界の生まれ… お互いに複雑な運命を背負ってしまった… 」
その衝撃的な事実を受け入れるのに、ナナは一瞬思考を停止した。
そして、ナナはふとあの誘拐犯の行動が気になり思考の隅から現れた。
視点を一点に集中させて、考えを巡らせた。
(あの誘拐犯の男が、あのピアノを完全なモノにする行為にメリットは何? 適当な曲を途中で止めることなんて、誰にでもできる… それをし続ける限り、両方の世界を行き来だってできる… むしろ、道を閉ざす真似はしないだろう? 道を閉ざしたかった? 何か理由があるのか?)
そんな中、ナナの耳にセダリアのふとした言葉が耳に入った。
「完奏した者がいない以上、本当にその道が閉ざされるのかな? 何が起こるのか、誰にもわからないはずなのに… 」
(そうか… もしくは完奏した場合、完全にその道が閉ざされるのではなく、完全に道が ’開かれる’ と思っている可能性は? いや、そもそも本当に道が閉ざされる保証はない。何が本当かは… やってみないとわからない…
しかし、もし道が閉ざされてしまう可能性があるとあの男がそれを知ったら? 私の命を狙いに来る可能性がある… か。その為にも… あちらの世界に行く? … もしそれが追って来たら? やっぱり殺される可能性は否めない。
そしたら、やはり完奏させて、道を閉ざす可能性に先手を掛けるしかない… )
そして、次にナナが顔を上げた時には、リリック達は自身の耳を疑った。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
(基本歌は歌っていません)
あくまでも、作者が聞きながら想像し、執筆した楽曲を参考までに載せております。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
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