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episode63〜選択〜

たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。

ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。

暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。


ナナは、元の世界において、自身の重い過去について話し始めた。


「私は、元の世界で… とても惨めな生活を送っていました。その集団の生活に馴染めず… 生きることさえも苦しい時がありました。

自分だけではどうにも出来なかった… いや、立ち向かおうと、しなかっただけかもしれないです。

その時、自分の心を保つ為に、たくさんの曲を聴きました。私のいた国にはたくさんの種類の曲があり、いろんな声の歌い手がいました。

その空間に耳を預けた時だけは、とても自由でいられた。その聴いた曲の中に、あの譜面に記された曲があった気がするのです。

先程のセダさんの演奏を、少し弾いただけでもわかりました。私もあの曲が好きだったから。

この世界とあちらの世界を繋ぐ曲が、もし本当に ’あの曲’ だとしたら… その曲を最後まで弾いてしまったらと思うと… 」


ナナはそう言いながら、涙を堪えるように、唇をキュッと噛んだ。


「途中で止める… のか?」


「…… 」


「わかりません… 私はどうしたらいいのか… このままにしておいて良いのか… 全てを弾くことによって、その道が閉ざされてしまうことになっても良いものかとも… 完奏することによって… 何かを守ったりする事が出来るのか… 考えたい。でも考える時間がないようにも感じています」


(守る… ?)


「確かに… こうやって考えている間にも、あのピアノはまた何処かへと姿を移動させるかもしれない。次に会えるのはいつかもわからない」


リリックは、その事実を淡々と述べた。


「私は… 一体どうしたら… 」


すると、リリックは2人の想いに再度耳を傾けた。

本音が出てくるかはわからない。

しかし、2人の意志を尊重したい気持ちを優先させた。


「ナナ… もう一度聞く。元の世界に… 家族もとへと戻りたいか?」


そう言いながら、その優しい手はナナの手を温かく包み込んだ。


「その方法が見つかった今、家族に会いたいと、そう思うのはごく自然な事だ。まさか異なる世界から来ていたとは… それもたった1人で… とても心細かっただろう?」


ナナはその言葉を、ずっと待っていた気がした。


ゆっくりと大きな雫が頬を伝う。


「… っく… わかりません。確かに… 私はこの世界に来てから、ずっとずっと元の世界に戻りたいって思ってました。そう願わなかった日がないくらい、ずっと… 」


「そうか… それなら… 」


「でも… いつの間にか… ここにいる周りの人達が好きになって… この世界が好きになって… 大切なモノがどんどん増えていくのが、とても怖く感じてきてしまいました。帰りたくないと思ってしまったから… 」


ナナの拳が、強く握り返されるのを感じるリリック。


「どうしたら… 」


そう言いながら、唇を噛み締める。


「お前の… お前達の好きにするといい。その気持ちに正直になれば良いだけだ」


「そんなっ… 」


「リリィ… 」


(リリック様… )


その表情は、いつも以上に真剣だった。


ナナとセダリアは、顔を見合わせた。

いつも通りと比べ、変わり映えのない表情ではなかったからだ。


暫し沈黙が流れる。


そしていつもは見せない笑みが、目の前を横切る。


「ふっ、また… 会えるだろ?」


「リリック… 様… 」


ナナはその言葉に、ついに大粒の涙を流し始めた。


とめどなく流れる涙を止める事は出来なかった。


何故こんな状況に… こんな感情になっているのかが、自分でもわからなかった。


その姿に温かい腕が、身体中を包み込むのがわかった。


「… ぅぐっ… なん… で… リリック様は… っぐ… 寂しくないのですか!? この世界に次いつ来れるかも… もしかしたら二度と… 」


「ふっ… 寂しいに決まっている。ナナもセダも俺の目の前から居なくなると思うと… 寂しくて仕方がない。でも… もう二度と会えないとは到底思えない」


リリックは、その力を更に強めた。


「だが俺は、何よりもお前達の気持ちを尊重したい」


「… っく… リリック様の気持ちは、どうなるんです… 」


「ふふ、俺は常に尊重されているからな」


(そういう意味じゃない… のに)


「あの… 1つ気になっていることがあるのですが… 」


「ん? なんだ?」


「私達を誘拐した男も、同じ目的だったのでしょうか?」


「例の誘拐犯か… わからないが、セダリアと同等の理由の可能性はあるな」


ふとナナは、何か違和感を感じた。


(あの男も確か… 私が楽譜とは違う曲を完璧に弾いても何も起きなかったから、肩を落としていたな。そういえば… 私が完奏した時に、耳をピアノにつけて、何かを確かめていたけど… まるで… 呼吸を…… ? それにあの時… 何故、私を… ? 拘束しなかったのかしら? しかも行動を観察するように、他の部屋からその様子を見ていたわよね? … 変態?)


「違う… 何かを試している… ?」





最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


(基本歌は歌っていません)

あくまでも、作者が聞きながら想像し、執筆した楽曲を参考までに載せております。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。


文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。

また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。


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