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episode46〜芳醇な香り〜


たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。

ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。

暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。


そして翌日。


リリックは残りの公務をこなす為に、朝早く出かけていた。


彼はとにかく、早く終わらせたかった。


一方のナナはというと、宮廷内庭園へと足を運んでいた。

一応庭師である傍ら、その国のお庭事情を把握しておきたかったからだ。


いや、実際のところ、セダリアから仰せつかっていたお使いを実行する為だった。


現在6日目の朝。

彼女は、それをすっかり忘れていたのである。


(ヤバいヤバい。セダさんから、この国にしかない花の苗をもらってくるように頼まれてたんだった)


ナナは、セダリアから預かっていたその紹介状を庭師長という者に渡した。


年配の庭師長は優しい笑みを向け、用意していたかのようにすぐにその苗を持ってきてくれた。


「ありがとうございます」


ナナはそうお礼を言うと、一礼した。


「お嬢さん? もしよろしければ、少しこの庭を見て行ってはいかがかな?」


「え? あ、はい! 良いんですか!? ありがとうございます。ではお言葉に甘えて」


ナナは暫しの間、その庭を散策する事にした。

至る所に、庭師が配置され、淡々と仕事をこなしていた。


(随分と多いな… まぁこの広さなら妥当か… あ、あの人… ここにも女の人いるんだ! それにしても随分と背が高いなぁモデルみたい。あれなら軽々高い枝も… )


そう思いながら、サズリナ国の園庭を堪能するナナ。


この国は、パルティシオン国の管理する庭よりも、約2倍ほどの広さがあった。


その分、手入れの人数も必要なのであろう。


ナナは咲き誇る花達を目で見て、そして香りを堪能しながら練り歩いた。


その花道はパルティシオン国よりも、香りの多い花が多く見受けられる。


(この国の特徴なのかしら?)


そう思いながら心地良い気分でいると、少し奥ばった所に小さな噴水が見えた。


そこはちょっとした広場になっていた。

休憩できるようなベンチが2、3脚置いてある。


その1つに腰を下ろし、何かを読んでいる影が見えた。


(誰かいる… ? 邪魔したら悪いかな? ん? あれ?)


そう思いながら、その見覚えある横顔に近づいた。


ナナはゆっくりと覗き込むように、声を掛けた。


「あれ? レクア様?」


「ん? あぁナナか? こんな所でどうした?」


「少しお使いを頼まれまして… それで、折角なので、庭師長さんが庭を見て行ったらどうかと、許可を頂きました」


「そうか… ダランだな。この庭は国の自慢だ。とても美しく、いつも手の込んだ手入れをしてくれている。彼らには感謝しかないよ」


「えぇ、とても美しくて、細部にまで手が行き届いていますね。それに この芳醇な香りが… 」


そう言いながら、ナナは肺いっぱいに花の香りを取り入れた。

その様子を見て、セダリアはニコリと笑みを溢し、言葉を漏らした。


「… 幼い頃、一度だけ俺が花の香りに包まれながら、一生を全うしたいと言ったことがある」


「え? 一生を全う? ですか? 小さな子供が?」


「あぁ… おかしな子供だろ? しかし、それはある本の一節を、ただ真似たものに過ぎなかった。

それなのにダランは、それを本気の命令だと捉えたのか、実行に移っていた。それまで俺は、花に興味がなかったのに。

だからこれは、俺のあの言葉から始まったようなもんなんだろうな」


「なるほど」


「しかし、今となっては、そのおかげで俺は毎日幸せだ。本当にこの香りの中で人生を歩めるのだからな」


「…… ふふ」


「ん? 何だ?」


「あ、いえ… 思い出したんです。レクア様と最初にあった時の事を」


「あぁ、確か、パルティシオン国の庭園でだったな?」


「はい。あの時も、花の香りを嗅いでいましたよね?」


「この国にはない、柔らかい香りだった」


「本当にお好きなんですね」


ナナの屈託のないその笑顔を見て、少しばかり切ない表情を浮かべ始めるレクア。


「ナナ… 」


「ん? 何でしょう?」


「君は… 君は本当にリリックの婚約者なのか?」


「えっ!? なっ… え、えぇと… それは… 」


明らかに動揺するナナを見て、レクアはその腕を掴んだ。


「もし… その心がリリックに向いていないのならっ… 」


しかしその瞬間、低い声が2人へと降りかかった。


「ナナ様? こちらにおられましたか」


その声は、側近であるネイルのものであった。

「あ、ネ、ネイルさん!

「おや?何かトラブルでも?

ネイルは白々しく、ナナの腕を掴むレクアを見て言った。


その腕を思わず振り解いて、ネイルの方へと駆け寄るナナ。


「い、いえ! それより、リリック様は?」


「殿下はブランチを取りに、自室へと戻られている最中です。早くに公務を終わらせようと熱を入れておりましたゆえ…  ’ナナ様の為に’ 」


そう言いながら、その鋭い視線は、レクアの方に向けた。


「ん? えっ!? もう終わったのですか!? 随分早いですね? まだ昼前なのに… 」


ニコリとナナへと視線を戻したネイル。


「はい。ですので、ナナ様とご一緒したいと申しておりました。お腹が空いていなければ、とびっきりのデザートもご用意しておりますよ」


「え? デザートも? ブランチか… そうですね! お腹が空きました! 両方食べます! レクア様、私そろそろ… 」


そう言いながら振り向くと、そこには既にレクアの姿はなかった。


(あれ? いない… さっき… 何を言おうとしたんだろう?)


そう思いながら、ナナはネイルと共にリリックの待つ部屋へと戻った。






最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


(基本歌は歌っていません)


お好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。

あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)

文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。

また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。


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