episode45〜条件付き〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
会場中は言わずもがな、喝采と感動の空気に包まれた。
しかしそれは、称賛ではない視線も混じっていた。
ナナは一礼をすると、すぐ様リリックのもとへと小走りで身体を向けた。
その姿に、リリックは嬉しそうな表情を隠せないでいた。
一目散に自身の所へ来てくれたというその行動が、何よりも嬉しくてたまらなかったのだ。
「素晴らしかった」
「へへ、緊張… しました」
「そうか?」
「え?」
「いや… 」
「… ? っはぁ… 安心したら、お腹が空きました! リリック様! あちらの方に興味が湧く物がたんまりと見えます!」
「ふっ、そうだな」
そう言いながら、ナナはその後たらふくご馳走を堪能した。
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サズリナ国の滞在期間は、1週間程だ。
現在5日目となるその日から、ナナは思う存分観光することを心に決めていた。
それはそれは、晴々とした気分であった。
演奏会という他国での大舞台を終えたことによって、タガが外れ始めていた。
ナナは今、都に降りていた。
しかし、横にはリリックの姿はなかった。
彼は外交も含めた公務があった為、ナナへの同行ができなかったのだ。
よって、本日のリリックは若干不機嫌であった。
感情が表に出ないはずの彼だったが、最近のそれは少し違かった。
護衛はもちろん付けていた。
お小遣いもたんまりともらっていた。
ナナの中の金銭感覚の常識が、覆されるほどの金額だ。
(パルティシオン国とはまた少し違ったデザインだけど、素敵なコイン。レートってどのくらい違うものなのかしら? でも… これ、いくら何でももらいすぎな気が… )
そう思いながらも、都の至る所にある出店のご馳走を頬張っていた。
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そうして、堪能したナナはその夜、同室のリリックにお礼と土産物、そして、都の様子を話していた。
少しずつ壁の屈託のない話し方になっていくナナを見て、思わず口元が緩むリリック。
「… ふふ、それで小躍りしている道化師が近づいてきて、私にもそれをやれって、誘ってきたんですよ?」
「そうか? それをやったのか?」
「まさかっ! そんな恥ずかしいことできませんよ!」
「そうか。見てみたかったな」
「リリック様が? … あっすいません! リリック様がお仕事なさっている中、私だけ楽しむような真似… 」
「いや、いいんだ。明日の夕刻には時間が空く。そしたら、都へ… 」
「えっ!? 本当ですか!? なら! 私、行ってみたい所があるんですけど、その… 一緒に行きませんか?」
「え? あ、あぁもちろんだ。行ってみたい所というのは何処だ?」
「酒場です!」
「却下だ」
「えぇ!? 何でですか?」
「酒飲みがいるような所、危なくてとても行かせられない」
「だからじゃないですか! だから、リリック様もご一緒に! それなら安心して行けます!」
(頼られてる!)
リリックをその気にさせるのには、十分な誘い文句だった。
(狙って言ったのか? それとも天然なのか?)
そう思いながら側近ネイルは、横目でじっと2人の会話を見守っていた。
「ゔぅん… それで? 何故そんなにもその酒場なんかに行きたいんだ? わざわざよその国のでなくとも良いんじゃないか?」
「リリック様の仰る通り酒場と言っても、その数は多くありますよね? でもですね、私が行きたいその場所は、単なる酒飲みの溜まり場なんかじゃないんです… ふふふ… ふふふふふふ」
「特殊な場所なのか? そんな酒場、この国にあったか?」
「そうなのです! 今日都に行った時に耳にしたんです。音楽が集まるバーがあると。ふふ、そこでは何と、集まった者達の手によって、即興で演奏をするようなのです! その名も音酒場!」
「音… 酒場?」
でも残念な事に、私はお酒が飲めません。
(一応未成年なんで)
「酒が飲めない? 確かにナナが酒を口にしている姿は見たことがないな」
「はい。そこでです! リリック様が同伴して下されば、気兼ねなく都の人達と音楽を通して交流を出来るのではと考えました」
「ん? あ… なるほど… そういうことか」
リリックはその意図に気が付き、少し残念そうな表情を浮かべた。
(高貴な人達じゃなく、普通の民とも演奏したいのよ!)
「わかった。良いだろう」
「えっ!? 本当ですか!? やっ… 」
「ただし、条件がある」
「え? あ、はい? 何でしょう? 何なりと」
「酒は絶対に口にしない事。見知らぬ者についていかない事、無駄話しない事。目の届かない所へはいかない事」
(ん? お父さん… ?)
「それと… 」
(いや、多くないか?)
「夜はもう少し、近くで寝ること」
「え?」
「流石に傷つく」
「き、傷付く? リリック様がですか? 何をそんなに… 」
「… とにかくだ。この条件を飲むのであれば、承諾してやってもいい」
「… 善処します」
その言葉に、無言の圧をかけるリリック。
「あ、いえ… わ… っかりました! わかりました!」
「それでは、今夜からだ… 楽しみにしているぞ?」
そう言いながら、ニコリと笑みを放つリリック。
「はい… 」
(楽しみにしている? 明日の酒場の方… よね?)
こうして、ナナはそれをその日から実行に移した。
(この国にいる間だけよね? そうよね?)
そう思いながら、寝息が感じる程近くにいるリリックをチラリと見た。
彼の何とも言えない幸せそうな横顔を見てしまったせいか、ナナは何だか罪悪感を感じてしまっていた。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
(基本歌は歌っていません)
もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。




