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緋色の眼を持つ少年  作者: カモメ
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緋色の眼を持つ少年第三十八話

『そこで…野村銀之丞は、呪詛を思い付いた。


呪詛は密教に由来する。

山岳信仰や、真言密教なども呪詛や除霊を行うが…


高僧の通力をもってすれば呪詛はなる。

そこで…野村銀之丞は、片っ端から名だたる高僧に呪詛を頼んだ。


だがのう…高僧たちは口々に


お辞めなさるが良かろう…必ずや因果が貴方に降りかかり我が身を滅ぼす事になるでしょう。


呪詛をするのも、三日三晩不眠不休で護魔を炊き…

法力によって…

相手を呪詛する事は出来ます。


出来ますが…

呪詛なぞは、外法です。

およそ人の成す法には御座りません。


野村さま…

ここはどうか、お引き取り下さい。』

と口を揃える様に断られた。

しかし…野村銀之丞の背中にはヒタヒタと、迫り来る近藤但馬の足音が聞こえるようじゃった。


役職を追い落とされる…

平和な時代に、これ程の恐怖は無かろう…


野村銀之丞は、形振り構わず…心辺りの者を探し回った。


そこで…

白羽の矢が…わが父…

忠太郎に立った。


わが父忠太郎は生業を、失せ物や、種まきの時期…

吉凶の方角を占う…

陰陽使いであった。

元来陰陽道とは…中国の道教の流れを汲み…


仏教伝来と共に、山岳信仰等に取り込まれ進化した。

役の小角が代表と言えよう。


平安の頃に隆盛を極め…

阿倍清明が…陰陽博士に任じられた。


表があれば裏も有るのが陰陽道…

陰と陽が織り成すのが始まりじゃからのう。


道満等は呪詛を得意としておったが…

道満程の者でも因果の理には逆らえず…

その身を滅ぼした。


それを踏まえて…

わが父…忠太郎は、野村銀之丞にこう申し上げた。




野村さま…

陰陽道に呪詛の法が無いわけでは御座いませんが…


全て外法でございます。


必ずや、私も野村さまも、破滅を迎える事は必定…


何卒…呪詛だけは、ご勘弁を…



時代は江戸時代…

武士に…侍にとって百姓など虫けら同然



ならぬ!!近藤但馬を呪詛して追い落とし…

なお、我が身に因果の及ばぬ様に出来れば


忠太郎…お主を名主に取り立てよう。



名主に取り立てられても因果が末代まで降りかかってはたまりません。



うむむ…

ならば名字帯刀を許して遣わそう。



これに…忠太郎の心は大きく揺れた。


百姓で名字帯刀を許された者はなまなかには居ない。余程の豪農か、戦国の頃に武士から、百姓に鞍替えした者位だ


戦の無い…

江戸の時代…名字帯刀を賜ると言うことは身分は低くとも…

録や扶持を貰わずとも

侍になれる。


忠太郎は悩んだ。


忠太郎の知る中でも外法が無いわけではない。


確実に近藤但馬を失脚どころか…破滅に迄追い込む外法はある…


外法とは人の道から外れた呪法…

およそ…忠太郎は、二度と人には戻れなくなる。


それを差し引いても名字帯刀を賜り、名主…庄屋の地位を息子…太一継がせたい。



遂に忠太郎は野村銀之丞へ

その儀…給わりました。

と返事をした。』



それが…どのような呪法なのか?

僕には皆目見当がつかなかった。

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