緋色の眼を持つ少年第二十八話
永井代々の中でも飛び抜けて冷酷…
僕は、この永井の家に引き取られ、一月の間…
透さんが、シニカルに笑う姿か?頼もしく優しい姿しか見てない。
その透さんが、《冷酷》だなんて…
信じられない。
納得がいかない僕の表情を汲み取ったのか?
初さんが
『透にも普段は見せない心の奥底に潜む闇があると言うことだ。』
『心の闇…』
『そうだ、心の闇だ、だが…
その心の闇が和美…
お前に向く事はない。
そもそも…お前は、透と同じ境遇を共有しておる。
護りこそすれ…
お前を憎んだり挫滅させようとは思わん。』
僕は…透さんの心の闇が、少しわかる様な気がする。
折角生まれて来たのに、呪われし子供と嫌われ…
兄弟たちから、虐待を受け…
家族の中で唯一頼るべき母親からも見捨てられ…
苦痛を一人で抱え…
そして、施設に入れられ、呪い屋の永井家に引き取られ…
呪詛を生業としなければならない。
どんなに過酷な運命を背負って生きているんだ。…
その時…透さんが、何時もの青いツナギに着替え居間に入ってきた。
『和美…今から畑に行くが付いて来るか?』
ここに来て初めて透さんが畑仕事に誘ってくれた。
今までの不安など一気に吹き飛び…
『うん!!』と、元気よく返事をした。
畑には白菜が植えてある。葉が開ききらない内に
ビニールの紐で縛る。
こうしないと
スーパーで売ってる白菜の様に、綺麗な白菜にならないらしい。
一畝程の白菜畑の白菜に紐を巻き付け終わると…
透さんが…
『お前も清水靖子さんの背後から吹き出る光を見たか?』と
聞いてきた。
『うん…見えた。初さんに聞いたら、あれは怨念の光だって…
そして、修羅道に堕ちているから生き霊になるって…』
『そうか…
初さんに聞いたか?
しかし、あの光が見えたなら、清水さんと、福島さんの行く末を知っておく必要があるぞ…』
『僕も気になる…
でも…初さんの話じゃ
透さんは、呪詛はしないだろうって…
呪詛などしなくても二人には破滅の道しか残ってないって』
暫くの沈黙の後…
透さんは、左のポケットからマイルドセブンを取り出し、一本をくわえライターで火を付けて、大きく吸い込んだ。
『和美…お前と俺は血が繋がっている。
お前に永井の家を継がせて永井の直系を絶えさせるつもりだ。
そして…
お前には呪い屋の家業など継がせず今までの不遇を打ち払う様な人生を歩んで欲しかった。
その為にジックリとお前に色んな事を教えてやりたかった。』
そこで…透さんは少し…
ほんの少しだけ眉をひそめ悲しそうな顔をした。
それは…
ほんの一瞬浮かべた透さんの表情だった。
『和美…だかな…そうも行かなくなりそうだ…
時間が無いみたいなんだ。
俺が居なくても…
シッカリと生きて行けるか?』
急に尋ねられた透さんの真意が僕には汲み取れなかった。




