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生命魔法使いに転生したので、聖者の皮を被って気ままに生きようと思います  作者: aramakid
冒険者編

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第41話 告白

 翌朝は狼狩りの為に、いつもより早起きした。


「おおー、身体が軽い。さすがふかふかのベッドは違うな」


「ほんと、もう藁には戻れないわ」


「……すごい」


 三人ともまともな宿のお陰で、体調は万全に整ったようだ。


 僕らは素早く身支度を整えるとギルドへ向った。


 狼の討伐——尻尾一本につき、銅貨三〇枚。


「しっかし、ホーンラビットより強いのに、安いんだよな。狼」


 ライルがぼやく。


「狼は魔石も肉も取れませんからね。でも群れでいる分、数は稼げますよ」


「その分、手ごわいんだけどね」


 エレナが苦笑する。


 依頼を受けると、開門したばかりの門を通って街道を進む。

 朝の街道は町を出る商人の馬車や荷車で賑わっていた。


 町が見えなくなってしばらくすると、右手に広がる黒い森が見えてきた。

 一歩森に踏み入ると街道の喧騒は遮断され、湿った土と松脂の匂いが立ち込めた。


 僕は森の奥に魔力を細く伸ばしていく。


 ——いた。


 魔物ではないからか、狼は僕の魔力に触れても、こちらに襲いかかっては来ない。


「こっちです」

 

 僕の後ろから、三人が黙ってついてくる。

 やがて僕らの匂いに気づいた狼が、包囲を整えるのを魔力で捉える。


「そろそろ来ます。囲んでくるので慌てないように」


 僕の警告で、こちらも陣形を整える。

 ライルとカイと僕で三角形を作り、中心にエレナが立つ。


「エレナは倒さなくていいので、牽制に重点を置いてください」


「わかったわ」


 僕の指示が終わると同時に、周囲の茂みがざわめき出す。


 カイに飛びかかった二頭の狼は、大盾の一振りでまとめて弾き飛ばされる。

 ライルは左手の盾で狼の横っ面を打ち据え、右手の剣を深々と突き立てた。


 僕は飛びかってきた一頭の顎を、下から掬い上げるように砕く。

 その勢いのまま杖を旋回させ、杖の反対側でもう一頭に叩き伏せる。

 動きを止めずに、更に別の一頭に突きをお見舞いした。


 エレナは距離を保ちつつ、再び跳びかかろうとする狼へ氷の礫を放ち、動きを封じている。


 やがて数を減らした狼たちは、僕らの連携の前に押し切られた。

 残る敵をライルとカイが仕留める間、僕とエレナは隙を埋め、確実に戦線を支える。


「はあ、はあ……。やった、ぞ」


 ライルが息も絶え絶えで、その場に座り込む。

 カイもまた肩で息をしていた。


 僕は倒した狼から討伐証明の尻尾を集める。


「私も少し魔力を使いすぎたかも」


 エレナはそう言いながら額の汗を拭い、息を整えていた。


 僕が尻尾を集め終わっても、三人はまだ立ち上がれないようだった。


 ——いちいち休憩を入れてたら効率が悪いな。


「……あの、今から魔法を使いますが、できれば内緒にしてくれませんか?」


「ああ、秘密にするのは構わないが……。魔法?」


 ライルが首を傾げる。


 カイと、エレナを見ると二人とも怪訝そうな顔でうなずいた。


 僕は三人に『ヒール』をかける。

 損傷した筋繊維を修復し、細胞を活性化させる。蓄積した乳酸を分解し、代謝を一気に促進していく。


「なんだこれ……」

「……っ」

「え、身体が軽い……」


 三人とも、驚きに言葉を失っていた。


「ノアって、もしかして癒やし手……なの?」


 エレナは自分の腕を握って確かめるようにしながら、恐る恐るこちらを見上げた。


「はい。黙っていてごめんなさい」


 僕は頭を下げる。


「いやいや、黙ってて当然よ。山の向こうじゃ、ばれたら教会に連れてかれるんでしょ?」


 エレナは一度周囲を見回し、声をひそめる。


「こっちだって似たようなもんだ」


 ライルは立ち上がり、軽く足踏みして調子を確かめる。


「癒やし手なんて上級冒険者のパーティーにしかいねえって聞くぜ。——よく打ち明けたな」


「仲間……ですから」


 僕はそれらしく見えるように、わずかに目を伏せた。


 ライルは一度言葉を飲み込み、それから小さく息を吐いた。


「……そうか」


 次の瞬間、にやりと口元を歪める。


「重てえ秘密預けてきやがって。上等だ」


 ぐっと拳を握り、こちらに軽く突き出した。


「裏切らねえよ。俺たちも、お前の仲間だからな」


「……当たり前だ」


 カイは大きくうなずく。


「私も、絶対に裏切らないわ」


 エレナは一度深く息を吸い、胸の前で手をぎゅっと握りしめた。


「よし、それじゃあ、俺たちも強くなってノアを守れるように、どんどん狩ろうぜ。——この調子ならいくらでも戦えるぜ」


 ライルは軽い足どりで森の奥へと進んでいった。

 カイは肩をすくめて笑い、エレナも小さく息を吐きながらライルの後に続いた。


 日が傾く頃、麻袋一杯の狼の尻尾を抱えて、僕らはギルドに帰ってきた。


「今日は狼か。ずいぶんと張り切ったじゃねえか」


 納品係の職員は、尻尾を数えると査定票にサインして差し出す。


 窓口で報酬を受け取り、僕らは黄金の馬蹄亭へと向った。


 受付で宿泊費を支払う。ついでに、夕食も頼んでおく。


 部屋の扉を閉めると、ライルが口を開いた。


「それにしても、ノアの魔法すごかったな。疲れが取れるだけじゃなく、自分の体じゃないみたいに動けたぜ」


「……俺が噛まれた傷も、あっという間に治った」


 カイが自分の腕をさすりながら続ける。


「そんな、大げさです……でも、役に立てたならよかった」


 僕は肩をすくめ、少し照れくさそうに笑った。


「ノア、私にも魔法のアドバイスもらえない?」


 エレナが僕に、期待のこもった目を向ける。


「いいですよ。魔法の使い方の他に、宿でもできる魔力操作の練習があるので、後で一緒にやりましょう」


 僕はにっこり笑って、頷いた。


「その代わり、僕にも魔力感知のコツ教えてください」


 その時ちょうど、部屋の扉がノックされた。

 

 扉を開けると、頼んでおいた夕食が運び込まれる。


 机の上に並べられた陶器の深皿には、ぶつ切りの鶏肉が玉ねぎとセロリと一緒に煮込まれ、スープの表面には澄んだ黄金色の脂が浮いている。


 きめ細かい薄茶色のパンの表面はカリッと焼かれ、まだ温かい。


 茹でたカブとキャベツにはラードと塩がしっかりと振られていた。


 給仕が出ていくと、ライルが声を上げた。


「すっげぇ。うまそう」


 四人は席につくと、さっそく料理に手を伸ばした。


「肉でかっ!」


 ライルはスープから大きな鶏肉をすくい上げて、目を丸くした。


「パンも柔らかいわ」


 エレナもパンをちぎって口に運ぶ。


 カイは黙ったまま、パンとスープを夢中で食べ続けた。


「今日の調子で稼げば、これが毎日食えるんだな」


 ライルの言葉に、他の二人も食事の手を止めて、料理を見つめた。


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