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生命魔法使いに転生したので、聖者の皮を被って気ままに生きようと思います  作者: aramakid
冒険者編

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第36話 仲間

 ギルド酒場は思っていたよりも静かだった。

 依頼に出た者が多いのか広い室内にはまばらに人影があるだけ。


 朝の喧騒を終えた後の、ひと息ついた空気が漂っていた。

 

 その隅、壁際に固まって座る三人はどこか場に馴染みきれていなかった。

 静かな酒場の中で逆に浮いて見える。


「あの、僕、さっき登録したばかりで……よかったら少し話を聞かせてください」


 僕が声をかけると、三人の視線が同時に向いた。


「ああ、いいぞ。そこに座れよ」


 応じたのは、栗色の短髪にそばかすが目立つ少年だった。

 日に焼けた頬と屈託のない笑み。

 空いた椅子を指さす。


 気さくな口調――けれどその目ははっきりとこちらを測っていた。


「はじめまして、僕はノアです」


 名乗るとほんの一瞬、沈黙が落ちる。


「俺はライルだ。よろしくな」


 笑顔は明るい。

 けれどその奥にわずかな焦りの影があった。


 実力に自信がある者の余裕ではない。

 むしろ――伸び悩んでいる者の、それでも前に進もうとする無理な明るさ。


「私はエレナよ」


 向かいに座る少女が静かに言った。

 黒髪を後ろで束ね、背筋を伸ばした姿勢。声は落ち着いていて、どこか芯の強さが滲んでいる。


 その視線は静かで、遠慮がない。僕の装備、姿勢、手の動き――一つ一つを順番に見ている。


「カイ」


 短く、それだけ。

 隣に座るぼさぼさの金髪の少年がぼそりと呟いた。

 視線は上げないがこちらに意識は向いている。


 僕は自己紹介をしながら、三人を『鑑定』した。


【名 前】ライル

【位 階】Ⅰ

【魔 力】E

【スキル】剣術


【名 前】エレナ

【位 階】Ⅰ

【魔 力】D

【スキル】氷魔法 魔力感知

【魔 法】アイスボール


【名 前】カイ

【位 階】Ⅰ

【魔 力】E

【スキル】防御強化


 ――なかなかバランスの良いパーティーだ。


「あ、話聞く前になにか食べ物買ってきます」


 僕はそう言って席を立った。


 カウンターへ向かいながら、ちらりと三人の卓を見る。


 置かれているのは冷めかけたスープが一皿と、固そうな黒パンがいくつか。

 量も、質も、十分とは言い難い。


 ――きっと切り詰めざるを得ない生活なのだろう。


 僕は少し考えてから、大皿に盛られたソーセージを注文した。


 焼きたてのそれは、脂の匂いを立ちのぼらせている。


 席へ戻り三人の前にどん、と置く。


 その瞬間。


 三人の視線がぴたりと皿に吸い寄せられた。


 隠そうともしていない反応に思わず苦笑しそうになる。


「さあ、食べてください」


「おう。悪いな」


 ライルはそう言うやいなや、ためらいなく一本掴みそのままかぶりついた。


 肉汁があふれ表情が一気に緩む。

 さっきまでの張りつめた空気はもうどこにもない。


 ただ、腹を空かせた少年の顔だった。

 

 夢中で頬張る姿はあまりにも純粋で――少し心配になるほどだった。


「それで、何が聞きたいの?」


 エレナがフォークでソーセージを持ち上げながら聞いた。

 さっきよりも声の硬さが少しだけ抜けている。


「初めての依頼に、何を選んだらいいかアドバイス貰おうと」


 僕がそう言うとエレナの手が止まった。


 そして――少し困ったように眉を寄せる。


 ライルも口を動かすのをやめてこちらを見る。

 カイも視線だけを上げた。


 三人の間に、短い沈黙が落ちる。


「ホーンラビット……と言いたいところだけど、私たちも登録して三日、一匹も捕まえられてないのよね」


 エレナは言いにくそうにしながら、肩を少しすくめる。


「今日依頼達成できなければ、明日はいよいよドブさらいをするしかないってところだったのよ」

 

「ドブさらいじゃ宿代にしかならないだろ」


 ライルが口を挟む。

 言い方は軽いが、その表情には焦りが滲んでいた。


「でも明日依頼達成できなかったら、奴隷落ちよ。分かってるの?」


 エレナの声が少しだけ強くなる。

 空気がぴん、と張りつめた。


「だからもう一人誘おうって、酒場で待ってたんじゃないか」


 ライルが言い返す。

 

「じゃあ、今日は僕も一緒に行っていいですか?」


 口に出すと三人の視線が一斉に集まった。


 一瞬の間。


 それからライルが少しだけ笑う。


「ああ。みんなもいいだろ?」


「ええ。ノアは悪い感じはしないわ」


 エレナがそう言えば、カイも無言で頷く。


「よし、じゃあさっそく行こうぜ」


 ライルはそう言って依頼票をはがしに行った。


「まったく。ちょっと待ちなさいよ」


 エレナが呆れたように声を上げ、慌てて後を追う。


 カイは最後の一本になったソーセージをしっかり口に押し込み、もぐもぐと咀嚼しながら立ち上がった。


 僕も席を立ち三人の後に続く。



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