五章 グリモア
ダフネとさらに城の外れに行くと、丸太で出来た小さな小屋があった。
「この時間なら……って聞いたんやけど、どないやろね……」
ダフネはドアをノックすると、中から野太い男の声が聞こえた。
「誰もいねぇよ、帰れ!」
「また分けの分からん事いうて……ダフネです」
「なんだ、ダフネ嬢か!元気にしてたか?」
バタバタと部屋の中から足音が聞こえ、扉が開くとひげ面のムキムキのおっさんが笑顔で出てくる。
タンクトップに半ズボンというラフな格好で全体的にだらしなさそうに見えるが、人柄の良さが滲み出ている顔をしていた。
「グリモアも元気そうやね、久しぶりに顔でもみようかと思って寄らしてもらったわ」
「当たり前だ!とりあえず中に入って、茶でも飲んでけ……って横の兄ちゃんは何者だ?」
グリモアが視線をバルトに移すと、笑顔から鋭い眼つきに変わりバルトを睨みつけた。
あまりの気迫にバルトの背筋に悪寒がはしる。
「いきなり殺気出さんといて!バルトはんは、わっちの命の恩人です!」
「なんだ、ダフネの知り合いか!ビビらせて悪かったな!バルトも茶飲んでけ!」
グリモアはまた笑顔に戻ると豪快に笑い、ダフネとバルトを部屋に入るよう促した。
「あとバルト、お前これ持っとけ。そんな高位の使い魔連れて、召喚士証つけてなかったら今みたいに絡まれるぞ」
そう言って、金色のノクターナルの紋章が入ったネックレスを2つバルトに投げ渡してきた。
バルトは意味が分からず、受け取るとグリモアが下手くそなウィンクをしている。
グリモアの雰囲気と人の良さを感じ、バルトは思わず笑ってしまった。
「とりあえず……ありがとうございます。でもなんで2つなんですか?」
「そりゃ、バルトの仲間にもう一人召喚士がいるからだろ。その感じからして……もう一人もつけてないんじゃないか?」
「その通りです、何でわかったんですか?」
バルトが驚き尋ねると、グリモアは自分の鼻を指す。
「匂いだよ。バルト、今そいつの使い魔と延展の契約してるだろ?その使い魔の匂いがお前からするんだよ」
まさかここまで情報なしで、見抜かれると思わなかったバルトは呆気にとられていた。
「いいから、二人ともさっさと中に入れ!どうせ立ち話で終わるような話じゃねぇんだ!」
バルトとダフネは小屋の中に入るとソファに案内され、腰をかけるとダフネがバルトに話しかけてきた。
「ノクターナルの召喚士ギルドのギルド長なんよ。召喚士としての才能は過去最高と言われとるんやけど、召喚の研究にしか興味ないから名ばかりやけどね」
「おいおい!それなりにちゃんと働いてる人に対して失礼だろ」
グリモアは作ったお茶を運びながらダフネに抗議
した。
「そいで、ダフネ嬢何か話があるんだろ?」
グリモアはダフネにお茶を出しながら、ダフネに尋ねる。
「せやね……そろそろ天界にでも戻ろうかと思ってはります。それでグリモアはんには強制契約解除をお願いに来ました」
「本気か?」
「……主様がおらんくなってからだいぶ経つしなぁ。本来直ぐに戻らなあかん約束やったし……」
バルトも以前ダフネの召喚士は何らかの形で召喚士をなくした事は知っていた。
話の流れからすると、天界に帰らなくてはいけないにも関わらず現世界に長い間いたのだろう。
「そうは言われてもなぁ……俺はあいつとダフネ嬢の安全を約束してる身だ。天界に返す事は約束を破る事になりかねない……それに今更何で天界に帰ろうなんて思ったんだ?」
グリモアは難しい顔でダフネに尋ねた。
「そんな大層な話やないで?……いくらわっちが強くても、流石にそろそろ限界みたいなんやわ」
そう言ってダフネは着物の袖をまくると、腕の一部が透け始めていた。
「相変わらず天界の奴らは汚ねぇやり方するな。今まで放っておいて、戦力が欲しくなるとこれかよ」
グリモアはダフネの腕をとり、観察すると溜息をつく。
そのタイミングでチラッとバルトを横目で見たのに、バルトは気づいた。
「バルト、いきなりの頼みで悪りぃがダフネと使い魔契約してやってくれ」
グリモアは床に頭をつけ、バルトに土下座をした。
久しぶりの更新にも関わらず、読んで頂きありがとうございます。絶対に完結させますので、末永くお付き合いいただけたら……
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