五章 ダフネ
「バルトの母上にか?なるべく早く伝えるようにするが……」
キースが不思議そうにバルトに聞き返した。
「大丈夫だ、母さんのことだから全部話さなくても分かってくれるはずだ」
「ならいいが、本当に母上にエルフ式の召喚魔法のやり方を聞けばいいんだな?」
「そうだ、なるべく早めに頼む」
一応ハーフエルフの自分なら天界からの召喚が出来るかもしれない。
だとすればシトリーを魔界からではなく、天界から召喚出来るかもしれないとバルトは考えたのだ。
そうすれば、シトリーは魔力を温存しながら現世界に滞在出来るようになる。
ベルゼの事を考えると、戦力は少しでも多いほうがいい……
キースとの通信を切り、バルトはベッドから飛び起き、部屋の外に出た。
「予想が当たるといいけどな……それより今は……調査だ!」
部屋から出てなり、バルトは窓から城の外を覗く。様々な色の明るい看板が城の端に集まっているのが見えバルトのテンションも自然と上がってきた。
「これは期待出来そうですなぁ……っとその前に対策をしなくては……全知無能!」
バルトはいきなり、自分の魔力を全て使うバルトにとって切り札とも言える魔法を使った。
「これでフランの魔法検知にはひっかからない……しかも前の様なデメリットも今や皆無……」
全知無能は、全属性の魔法を一度に使おうとすると起きる魔法で、バルトの体は5分程度、魔法、物理、全てを無効化および透過させる技だった。
しかしデメリットが酷く、全属性の魔法が使えなくなりランダムで一日につき、一つの魔法属性を使えるようにもどる仕様で、使い所が難しいのが欠点だったのだか……
シトリーと使い魔契約したことにより、シトリーの魔力の影響で使用時間は15分程度に伸び、使用後は普通に魔法を使えるようになっていたのだ。
「では、ノクターナルのお手並み拝見と行きますか……」
バルトは幸せを噛み締めるように、一歩を踏み出した。
「どの店もやってねぇじゃん……」
バルトは、繁華街の真ん中で立ち尽くしていた。
予想はしていたが、まさか全ての店が休業しているとは思わなかったのだ。
普通に考えたら、女王に殺害予告が出ていて戦争になるかもしれない時に繁華街が賑わっているわけはないのだが……自分の目で見るまでは納得出来なかった。
「あら、バルトはんやないの!こんなとこでどないしたん?」
肩を落としながら、帰ろうとすると後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「ダフネじゃないか!元気そうだな!」
バルトが振り返ると、少し驚いた顔をしてダフネがこっちを見ている。
「お陰様で何とかなってますわ、バルトはんの証言のおかげやね」
事件の一件で、国王と勇者は追放されたが勇者のパーティーメンバーは策略を知らなかったため、バルト達の証言で罪にとわれなかった。
「国に帰ったって聞いたけど、ダフネはノクターナル出身なの……って使い魔だから違うか」
「その通り、だから何処でも好きに行って良いって言われたんやわ。だからノクターナルにでも行ってみよかと思って来てみたら……バルトはんに会えてラッキーやわ」
そう言ってダフネはバルトに近づき腕に組みついてきた。
バルトは腕に当たる柔らかい感触に、ダフネを助けて本当に良かったと実感する。
『人助けは良いことだけどさ……いや、なんでもない』
シトリーの呆れた声が頭に響いたが、聞こえないふりをした。
『バルトはん達は何しにきたん?この状況のノクターナルに来るんは……訳ありなん?』
「まぁ……色々とな。話せない内容が多いから察してくれると助かる」
「色々と情報は入ってきとるから、大体検討はつきますわ。けど、あんまり有益な情報はないから役に立ちそうにはありませわ。ごめんなぁ」
ダフネは苦笑いしながらバルトに謝った。
「悪くもないのに謝るな。それよりダフネはノクターナルに何か用事か?」
バルトがダフネの頭をぽんっと叩くと、ダフネは驚いた顔で立ち止まってしまった。
「主様……」
ダフネはバルトをしばらく見つめていたが、はっと我に返りいつものダフネに戻った。
「びっくりさせてしもたね!気にせんといてな!」
「俺は全然だが……むしろ大丈夫か?」
「ほ、ほんま気にせんといて!」
ダフネは少し動揺している様子であまり話したくなさそうだった。
今までのダフネの経緯を知っていたため、バルトは深くは突っ込まなず話を変える。
「それで何か用事があったのか?」
「大した用やないよ。昔の知り合いに会いにきただけです」
「そっか、もう会えたのか?」
「今から会いに行くとこやわ。この国でもかなり優秀な召喚士なんやけど、色々歩き回ってるから会えへんのよ」
「優秀な召喚士か……ダフネ、俺もついて行っていいか?」
バルトはキャスの展延が進むヒントが貰えるかもしれないと思い、ダフネに提案した。
「それは構わへんけど……めちゃくちゃ変人やから覚悟はしといてな?」
ダフネは少し笑いながら、バルトの肩を叩いた。




